南米・チリ。南北の距離が4,300kmもあり、砂漠から氷河までバラエティに富んだ自然が楽しめるのが大きな魅力。
4,000以上の島々があるのも特徴で、そのうちの1つは、日本人にもよく知られたイースター島。島にある巨大な石の像「モアイ像」はあまりにも有名だ。

そんな多彩な表情を持つチリの観光PRを担う、初代チリ観光親善大使2名が決定。先日、任命式がおこなわれた。

1人目は俳優の斎藤洋介さん。任命の理由はズバリ、芸能界、もしくは日本一モアイ像に似ている(!)から。
任命式で今の気持ちは? と聞かれると、「ここしばらく、どうして私がこのような大役を仰せつかるのかと考えておりましたが、本日やっとわかりました」
と、笑顔でコメント。いやー、それにしても似ている!

なんでも今から20数年前、テレビ番組『笑っていいとも!』に出演した際、タモリさんにいきなり、「モアイ像に似てるね」といわれたのだとか。
「それ以来、女子中学生や女子高生に、モアイ、モアイと言われておりましたが……。本日、タモリさんに感謝したいと思います(笑)」

もう1人は、モデルでタレントでもある加賀美セイラさん。チリワイン好きで旅行好き、そしてチリの陽気なイメージに合うことが任命の理由だそう。
「とっても嬉しいです。
チリワインがとっても好きなんで、任命されて光栄に思います!」
と心から嬉しそうに話してくれた。

ちなみに、モアイ像と日本のつながりは意外に多い。今年5月には、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県の南三陸町にイースター島からモアイ像が贈呈されている。イースター島に住む、その道50年以上のベテランというモアイ彫刻家らが島の石で作った正真正銘のモアイだ。

もともと南三陸町は1960年のチリ地震津波で被害を受けたことをきっかけに、チリとの交流が続いていた。1991年には友好のシンボルとして町の公園にモアイ像が設置され、数年前からは地元の志津川高校の生徒が中心となってモアイを使った町おこし「南三陸モアイ化計画」も進められていたほど。
町にはモアイグッズも多く、この夏には「南三陸モアイ飴」なる新商品も発売されている。

一方、イースター島でも日本人はよく知られている。というのも、チリ地震津波でイースター島のモアイ像も被害を受け、長らく横たわったままだったのだが、その修復に協力したのが日本のクレーン会社タダノなのだ。
テレビのイースター島特集で当時のイースター島知事が「倒れているモアイを直すにはクレーンが必要」とコメントしているのを見て、「当社にできることがあるのでは」と考えたのがきっかけだったという。

ところで、モアイというと目のない姿をイメージする人も多いだろう。今ではほとんどのモアイから失われているが、実はモアイでもっとも重要な部分。
目が入ることで、モアイに命がふき込まれ、マナ(宇宙)の力を得ると考えられているそうだ。

地球の裏側にある南米チリ――。そう聞くと、ずいぶん遠い国のように感じるかもしれないが、任命式で講義をおこなった広島大学の長沼毅准教授の言葉を借りれば、「チリと日本は太平洋をはさんだお向かいさん」でもある。

ワインや自然、世界遺産など数えきれないほどの楽しみにあふれたお向かいの国。ぜひこの機会に注目してみては。
(古屋江美子)