鋭い目をした転校生!
学園にいる四天王!
父親を殺した相手への復讐!

懐かしい単語のオンパレード。『キルラキル』昭和テレビまんがをゴリオシなテンションで、最新技術を駆使し、制作されたアニメです。

敬礼!

ストーリーの本筋は、現時点では至ってシンプル。
舞台は本能字学園。生徒会長・鬼龍院皐月を中心とした、絶対的支配制のある学園です。
学生が着ている「極制服(ごくせいふく)」という制服には、一般生徒は無星。階級が上がると一つ星から三つ星まで数が増えて、様々な能力が使えます。
そこにやって来たのが、流浪の転校生の纏流子。
父親の仇を探して、単身この恐怖政治の学園に挑みます。

いいよね敵討ち。懐かしい感じ。
ブレザー全盛の21世紀に、詰め襟とセーラー服で学園支配という構図も実にいい。
ヤンキー転校生VS生徒会。わかりやすい。
気持ちいい。

TRIGGER制作のこのアニメ、思いつくすべての「面白いこと」「カッコイイこと」を超濃度に圧縮、視聴者にぶつけ続けて休もうとしません。
作る側も見る側もど根性な作品です。
昭和めいたノリの世界で、昭和めいたキャラが動きまくる。そこ動かさなくていいよってことまで無駄に動く。

アクリル絵の具を筆で擦ったような背景と、J・J・エイブラムス的な光の演出が、どうしようもないくらいの昭和臭を漂わせます。

今でこそ背景も画も全てPCで描く時代ですが、画面全体が70年代のセル画タッチなんです。
実際は3DCGを駆使した、最先端の技術でつくっているんです。それで、あえて全体的にセル画を常に意識して描いています。
全力で「昭和」を保つアニメなのです。

『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』の時も恐ろしい勢いとノリでした。
無茶苦茶なんですが、半話完結スタイル(10分前後)だったからというのが大きなクッションになっていました。
トムとジェリーみたいなものです。
しかしそれが30分続くとなると……これは見ている側のテンション無駄に上がり続けますよ。
同じスタッフが作っている、『グレンラガン』と『パンティ&ストッキング』を足して、二で割っていない。
エンドルフィン、ダダ漏らしすぎ。
こんなにテンション高くて凝りすぎたら、制作会社TRIGGER大変なことになっちゃうよ!?

大塚 脚本読んで「わあー、おもしれえ!」って思いながら、僕の顔は青ざめています(笑)。今石監督も「大変だよね」って言いながら、何も変える気はないですし。

───いまどのくらい進んでいるんですか?
大塚 絵コンテは半分以上進んでいます。中盤などはそうそうたる方々が描いているんですけど遠慮も何もないので、それを見たときには「会社を潰す気ですか!」って思いました(笑)。
ガイナックスを辞めた理由。新作「キルラキル」トリガー大塚雅彦代表に聞く1(エキサイトレビュー)

ですよねー。
一話見た人ならわかると思いますが、あのテンションで毎回やり続けていたら、TRIGGER潰れちゃうよ。
でもやっちゃう。
キャラデザ・総作画監督のすしおがニコニコ動画のコメンタリー配信で「遺作にしてもいいくらい」と言うほど。

根本からおかしいんですよ。
例えば、熱湯風呂でエビフライを揚げるシーンがあるのですが(?)、そのエビの色にこだわった監督から、何度も何度もリテイクが出たそうです。
……いや、そこどうでもいいじゃん! だがそこがいい。
星井美希似のラウンドガールが意味もなくボコボコにされるシーンもよかったですね。

映像は新感覚ではあるのですが、「どこかで見たようなアレ」を、わざと視聴者に喚起させる作りになっています。
まずしゃべって暴れる服といえば「ど根性ガエル」。学園と転校生といえば「炎の転校生」。制服で能力が身につくといえば「覚悟のススメ」。威圧力で大きく見えるでかい生徒といえば「魁男塾」の大豪院邪鬼。クラスメイトのマコがかけているプロレス技は「キン肉マン」。下町の子供の動きは「おそ松くん」風。
第一話はボクサー少年との殴り合いのシーンもあり、スタッフ曰く出崎演出。「あしたのジョー」です。いくらでも連想できます。

このアニメの最大の凄みは、作っているスタッフの経験と、「これを映像化してみたい」という要素を、超高濃縮で全部入れていることです。
引き算をしない。足して、足して、足しまくる。凝縮して詰め込んでいます。
その上で、いかに視聴者を笑わせられるか、というバラエティにしている。

纏流子が初めて本能字学園にやってきた時、学園とその下に広がる貧民階層の下町までの光景を一気に見せます。
その一瞬のシーンの中に、どうしようもないくらい色んな謎が隠されています。でも説明しません。一時停止必須。
最初の教室のシーンの机の中から、生徒会室の色んなアイテムやら、異常な情報濃度。
マンガで例えるなら、全部のコマにネタがあるような感覚です。

そして随所に登場するごんぶとのフォント。テロップじゃないんです。
キャラの頭の上にあったら、そのフォントごと動きます。オブジェクトなんですよ。
文字が画面を勢い良く覆ってしまって絵が見えないことなんてざらです。
大げさな演出が多いので、笑っていいのかシリアスに受け取ればいいのか一瞬惑うと思います。
そういう時は笑えばいい……んじゃないかな今は。

ジェットコースター乗りながら練乳飲み続けるような濃いアニメ。頭空っぽにしてして見るしかない。
このテンションで2クール続く……恐ろしいことです。


10月6日22:30からニコニコ動画でも配信されますので、ここで第一話の見所を簡単にご紹介。

1・最初の5分でノリがわかる
5分です。5分。
教室に風紀部委員長の蟇郡苛(がまごおりいら)がなぜか巨大化してやってきて、ドアを蹴破って滅茶苦茶にしながら、反逆者を処罰するシーンの威圧感。ぐるんぐるん動きます。
そこかーらーの、ヒロイン纏流子ババーン。この流れ気持ちいい。
今回限りだと思いますが、岩田光央演じるボクサー、袋田隆治の頭の血管が切れそうな演技にも注目。
実はこのアニメ、声優さんがあまりのハイテンションで演じているため、収録後に絵が負けないように描き直すことがあるそうです。
テンションとテンションがぶつかって、さらに高いテンションを生んでいるのです。

2・生徒会のトゲに注目
このアニメ、とにかくトゲが多いです。
トゲがあるのは生徒会側。生徒会のトゲっぷりはよく探してみてください。
生徒会室のピアノにトゲがあって、それは総作画監督のすしおが入れたのですが、アートディレクターのコヤマシゲト曰く「やりすぎだな」。
うん、蟇郡の靴の裏のトゲとかもやり過ぎな気がする。アレどうやって歩くんだ。
生徒会四天王は、蟇郡苛、猿投山渦(さなげやまうず)、犬牟田宝火(いぬむたほうか)、蛇崩乃音(じゃくずれののん)と、ちょっと覚えづらいというか書くこともままならない感じなのですが、よく見ると「ガマ」「サル」「イヌ」「ヘビ」なので、そっちで覚えると吉。
ナメクジとかキジはいないんですかね。

3・男のロマンはここにある!
男のロマンといえば地下です。
地下に男の浪漫は眠っているのです! ……と言われると、大体グレンラガン思い出しますね。
謎の地下室で、謎の物体に出会って、流子は一気に謎変化するのですが、そのあたりの解説は現時点でひとっつもありません。
今後明かされるであろう地下室。よーくチェックしてください。
ちょっと明らかになっているのは、流子が持っている片刃のはさみ。これは対極制服用の武器で、流子の父を殺した相手が持っていたもの。極制服を着た相手を倒すと……?
加えて、ハサミなので刃物としても鈍器としても使えるのがいいですね。

4・赤面ヤンキー流子
主人公の流子は非常に攻撃的でとがった性格ですが、人情味あふれるイケメンヒロインでもあります。随所にそのイケメンっぷりが見られ、オンナも濡れるいいオンナになっています。
そんな強くてかっちょいい彼女が、赤面し続けるハメになる。
そもそも流子は、『グレンラガン』のシモンみたいにボコボコにされるシーンもあるし、血まみれにもなるくらいです、なんでもやりますやられます。
カッコイイヒロインが赤面しながらカッコつけるのと、凛々しすぎる生徒会長鬼龍院皐月の対比が実にいい。
とにかく惚れ惚れするいいキャラなので、必見。

5・満艦飾マコという子
この作品の鍵をにぎるのか握らないのかわからない子ですが、この作品を体現するキャラですす。
とにかくいつもテンション高い。空気読もうとしない。だけどいい子。色々抜けている。「すごい」ばっかり言う。お色気担当でもあります。
マシンガンのように話し続け、すごい勢いで早弁をし、すごい勢いで寝ます。
この作品を説明する時「満艦飾マコみたいなアニメだよ!」って言うのが一番です。
流子と皐月が割りとキリキリしたキャラな分、マコの存在が「このアニメは笑っていいんだぜ」という方向付けになっています。かわいくて昭和なのでよく見ておきましょう。二話の満艦飾家はかなり楽しみです。
満員の路面電車に乗るシーンの演技がかわいいので必見。日本というより香港的な路面電車のデザインがまた変わっていて面白い。どういう世界なんでしょう。今後明かされるのでしょうか。


面白いことしかないアニメ、『キルラキル』。
ところで鮮血というセーラー服が「私を着てくれ!」と叫ぶんですが、着る……えっ、「キルラキル」って「KILL」なの?「切る」なの?「着る」なの?
……うん、考えるのをやめよう。勢いに身を任せましょう。
(たまごまご)

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