超、忙しいのにクリアしちゃったよ! おもしろかったから「rain」を遊んでみて。以上!

これで終わらないのがレビュー記事の哀しさよ。
というわけで、あまりゲームについて詳しくない人にも本作のキモがわかるように、ちょっと紹介してみます。

ゲームの舞台は雨がふり続く不思議な夜の町。怪物に追いかけられる少女を追って、町にさまよいこんだ主人公の少年は、自分の姿が透明になっていることに気づきます。雨に濡れて浮かび上がる少年と少女、そして怪物。ゲームの目的は怪物を避けながら少女と共に町中を進み、この世界から脱出する方法を探し出すことです。

本作の最大のポイントは、少年も少女も怪物も、雨に濡れれば姿が浮かび上がり、雨をしのげば姿が消えること。
町中で遭遇する怪物たちは、主人公が雨に濡れると姿を認識し、襲いかかってきます。怪物に接触したら問答無用でゲームオーバー。逆に屋根の下などに入って姿を消せば、怪物から姿を隠すことができます。もっとも、いつまでも同じ地点に留まっていては先に進めません。意を決して歩き出しましょう。

また、途中で怪物が待ち構えていることもしばしば。
こんな時には水たまりでジャンプして足音を響かせたり、蓄音機などの仕掛けを作動させて気を引き、その隙に進むなんてことも。中盤以降、少女と行動を共にするようになれば、一人では上れない場所や、動かせない仕掛けも力を合わせてクリアできます。こんな風に本作は怪物を避けながら、さまざまな仕掛けを乗り越えていく、パズル要素が中心のアドベンチャーゲームです。

本作のポイントは上品であること、シンプルであること、そして、ほんのり甘いロマンチシズムに包まれていることです。雨が降り続く無人の町は、どこかキリコの絵画に入り込んだかのよう。ドビュッシーのピアノソナタ「月の光」が印象的なシーンで流れ、叙情性を高めています。
雨に濡れたら姿が浮かび上がり、濡れなければ見えない「隠れんぼ」にも似たルールもシンプルで、すっきりまとまっています。

そしてボーイ・ミーツ・ガールという物語設定。二人の仕草も細かいところまで丁寧に作られており、動きだけで性別がわかるのも良いですね。これ、海外で同じようなゲームを作るとしたら、おそらく少女は出てこないでしょう。そしてゲームオーバー時には血しぶきが画面上に飛び散るなど、もっとグログロになるでしょうね。ちょっと「世界名作劇場」的な感じも受けたりして、このへん日本人のセンスだなあ、なんて感じました。


もう一つ、このゲームを忘れがたいものにしているのが、後半にあるステージ設計です。それまで一緒に行動していた二人が怪物に襲われて離ればなれに。一人で先を進みながら、チラチラと少女の影が見えつつ、なかなか再会できない。そんな中でも、時に協力しなければクリアできない仕掛けもあったりして。ぼやぼやしていたら、怪物に襲われてゲームオーバーなんてことも。ステージ設計と物語体験がうまく融合しており、この手のゲームが好きなら一回はプレイしておくといいでしょう。


本作はプレイステーション3専用のダウンロード配信ゲームです。ゲームを遊ぶにはゲーム機をインターネットに接続して、Playstation Storeにアクセスするか、スマホやPCでSENオンラインストアにアクセスして、購入する必要があります。価格は1500円で、クリアまでのプレイ時間はおよそ4時間程度。商業作品ながら、作家性の強い内容となりました。難易度も低めで、ヒントがふんだんに用意されていますので、ゲームが得意ではない人にもオススメです。
(小野憲史)

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