子どもにとっては長く、親にとってはもっともっと長い夏休み。子どもにさまざまな体験をさせてあげたいが、仕事が忙しくて時間がない人もいるだろう。


そんな親の思いに応え、子どもたちの「引率」を代わりに行う会社があることをご存じだろうか。その名も、「引率舎」

設立は4年前。最初は下請けからスタートし、本格的に企業として活動をするようになったのは、昨年春からだという。いったいなぜこのサービスを? きっかけなどについて聞いた。

「小学生の頃、子どもだけで参加できる3泊4日のスポーツ教室に参加した際、その時のリーダーに憧れて、地元葛飾区の子ども会リーダーの育成講習会に参加しました。
高校時代からは葛飾区の子ども会や行政事業で子どもだけのイベントの運営に携わり、キャンプやスキーなどで引率を始めました。子どもたちに『また一緒に行こうね!』や『笑顔』を届けことができる引率という活動にどっぶりとハマってしまいました」と話すのは、代表の岸幸成さん。
18歳からは大手スポーツクラブでリーダーとしてかかわり、民間・行政の両方でディレクターとして経験を積んだ後、独立した。
「引率業務は、保育でもシッターでも学校でも塾でもない特殊な領域ですが、共働き・核家族の社会にマッチしたビジネスモデルだと考えています。子どもだけのイベント、ツアーで必須となるスタッフとノウハウを多くの企業・団体様に提供することで、今まで以上に子どもだけで参加できる機会が増えればと思います」
実際、子どもだけのキャンプやツアーを自社で行う、スポーツクラブや学習塾から分社した会社は存在しているが、アウトソーシングで引率を受注する会社は引率舎だけだそう。

どんな利用方法が多いのだろうか。

「人気が高いのは『子どものはとバス』です。通常は子どもだけで乗ることができない、誰もが知っている『はとバス』に子どもだけに乗ることができるという限定企画です」

ツアー代金は14000円だが、親子で参加するよりもお得な価格設定になっているそう。利用者には、子どもが参加している間、仕事をする人のほか、ママ友とゆっくり過ごす、夫婦だけの時間を楽しむ人もいるそうだ。また、バスツアーは内容によって幼児や中学生もいるが、小学生が中心。

利用者からは、「こんなサービスがあったなんて知らなかった」という声が多いほか、「細やかで丁寧な説明」「子どもが荷物を自己管理できるよう、事前準備や指示が細やか」「飽きさせない工夫」などの感想があがっている。
「特に、安全については常に意識しております。
子どもたちの引率は事前の準備と体制作りが90パーセントと言っても過言ではありません。想定を越える事態が発生しても冷静に対応できるように、しっかりとした準備と確認の繰り返しを実施しております」

引率舎では他に、完全オーダーメイドの個人ツアーも提供。これは、会議やセミナーなどの出張で地方から東京に来る保護者が、会議などのある日中に子どもを預け、子どもだけで博物館やテーマパークを引率スタッフの安全管理のもとに楽しむというものだそう。

ちなみに、同社では、夏や冬などの長期休みだけでなく、月1回定期的に体験活動を子どもたちに提供していきたいという考えから、新たに「子ども会」を設立。近場の集合、日帰りの体験が年間通してできるそうだ。

子どもたちにたくさんの体験をさせたいが、時間がない人、不安だという人は、プロの「引率」を頼ってみては?
(田幸和歌子)