ごく一般的なドイツのスーパーマーケットの野菜果物売り場では、長ネギ一本、みかん一個でも購入できるバラ売りが基本。節約のご時世ですから、特にディスカウントスーパーでは、1キロ、2キロ入りののお徳用パックが増えてはいるものの、全体的には、依然としてバラ売り商品が売り場の主役であることは変わりません。


例えば、長ネギを一本だけ購入したい場合、売り場に設置されている計量器にネギ一本をのせ、品物のアイコン、または商品番号を押すと、その重量に見合った価格がプリントされたステッカーがぺろんと出てくるので、それをネギの胴体に直接貼ってレジへ持参すればOK。
ドイツに来て間もないころは、たとえ長ネギ一本であっても、売り場に設置されている無料ビニール袋に入れ、その袋に価格ステッカーを貼っていましたが、今では節約ドイツ人に習って、ビニール袋には手を付けず、 直接品物に貼りつけるようになりました。

ある日のこと。スーパーのレジで会計待ちをしていると、すぐ前に並んでいる人が、バナナの皮だけを手にしているのに気づきました。よく見ると、外皮には価格ステッカーが貼られています。「ありえない! この人、中身を食べちゃったんだ」と思わず吹き出しそうに。
レジ係が一体どんな呆れ顔をするかと楽しみにしていたのですが、係の反応はまるでゼロ。何事もなかったかのように、外皮に貼られた価格バーコードをピピッと読み取り、「◯◯ユーロです」と価格を告げるのみ。その光景を見ているはずの他のレジ待ち客も、誰ひとりとして反応する気配なし。

こんな珍事だというのに、周りの人間が一向に驚かないという事実に、すっかり驚いてしまった私。この調子なら、とける前に食べてしまったアイスクリームの外袋で会計するとか、半分かじってしまったフランスパンの残りを提示して会計するとか、そんなことさえ許されそうな気配です。

近所のドイツ人にこの話をしましたところ、照れ笑いとともに、次のような答えが返ってきました。
「私も、食べかけのブレツェル(パン)で会計することがありますよ。特に焼き立てほやほやのパンなんて、とてもレジまでがまんできなくて」
(柴山香)