日本最大の匿名掲示板サイト「2ちゃんねる」。1999年に作成されてから現在にいたるまで、政治経済からスポーツ、芸能ネタなど、ありとあらゆる分野の議論や情報交換が日夜行われている。
2ちゃんねるから発祥した文化やネットスラングは数多く、今も新しい流行が生み出されている。時には2ちゃんねるの書き込みが大きな騒動(祭り)となり、社会現象化することも。今回は、2ちゃんねる発足初期に起きた祭りの中で有名なものを振り返ってみよう。

2ちゃんねるに犯行予告!「西鉄バスジャック事件」


西鉄バスジャック事件は、2000年5月3日に発生した当時17歳の少年によるバスジャック事件である。刃物を手にした少年が西日本鉄道の高速バス「わかくす号」の乗客を人質に取り、バスを乗っ取った。犯人は運転手を脅し、九州自動車道から山口県、広島県へとバスを走らせ、その間に人質3名を切りつけた。事件発生から約15時間後に犯人は取り押さえられたが、人質2名が負傷、1名が死亡するという痛ましい結末となった。


その後の調べで、犯人が事件の前に2ちゃんねるに犯行をほのめかす書き込みをしていることが発覚した。2ちゃんねるで犯行予告を行った者が実際に罪をおかして逮捕されるという初めてのケースとなったのだ。この件はマスコミにも取り上げられ、2ちゃんねるに対して批判的な報道がなされた。

2ちゃんねるの書き込みによる犯行予告(虚偽も含む)はその後も増え続けた。この対策のため、2ちゃんねるでは2003年からすべての書き込みに対してIPアドレスの記録、保存が実施されるようになった。これにより、2ちゃんねるは完全な匿名掲示板ではなくなった。


ネット投票が荒れた!「田代祭」


2001年12月、アメリカのニュース雑誌「TIME」が、その年に世界でもっとも活躍した人物を選出する「パーソン・オブ・ザ・イヤー」のネット投票を実施した。

これを受けて、2ちゃんねるで「タレントの田代まさしを1位にしよう」という呼びかけが起こった。当時、田代まさしは盗撮や覗き、覚せい剤所持の容疑で逮捕され、世間を騒がせていたのだが、この悪ノリのような呼びかけを面白がった者たちがこぞって田代まさしに投票した。当時の投票用ウェブサイトは多重投票が可能なシステムとなっていたため、手動の多重投票はもちろん、しまいには大量の多重投票を可能にするプログラム「田代砲」を作って投票する者まで現れ、一時はサーバがダウンするほどの事態に陥った。

最終的な投票結果では田代まさしが1位になったのだが、さすがにTIME誌側の配慮もあり、2001年度の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」は別の人物(ジュリアーニ元ニューヨーク市長)が選出された。

この一連の騒動は「田代祭」と呼ばれるようになったが、その後もネット上のランキングで田代まさしを1位にしようという動きが見られた。

映画やドラマにもなった!「電車男」


2004年3月、まるでドラマのような恋愛模様が2ちゃんねるで話題となった。
物語は「電車の中で酔っ払いに絡まれている女性を助けた」というある男性の書き込みから始まった。アニメやゲームが好きで「彼女いない歴=年齢」のアキバ系オタクだというその男性は「電車男」というハンドルネームで、助けた女性から後日お礼として手紙とティーカップが届いたこと、彼女のことが気になるので連絡するべきかどうか迷っていると書き込んだ。

その書き込みを見た者たちが「わざわざお礼の品を送ってきたということは彼女も気があるのだろうから連絡したほうがいい」「いや、ティーカップなんてお礼としては普通だし、特別な感情があるとは思えないからやめておけ」とさまざまな意見を述べる中、女性から贈られたティーカップがエルメスという高級ブランドのものだということがわかり、「エルメスならただのお礼のはずがない!ここは食事に誘うべきだ」と盛り上がる。
書き込みによる励ましを受けて、電車男は相手の女性「エルメス」に電話し、食事の約束を取り付けることに成功する。その後、お店選びや服装など、多くのアドバイスの書き込みが寄せられ、電車男はついにエルメスとの初デートに挑む。

電車男とエルメスのデートの様子、それに対するアドバイスや応援の書き込み、そしてついに電車男がエルメスに告白し、晴れて恋人同士になるまでの一連の物語は書籍化され、ベストセラーとなった。
その後も映画化、ドラマ化、舞台化され、2ちゃんねるを知らない人にもネットのつながりが生んだ純愛ストーリーとして支持された。

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