ケツメイシが7月19日にリリースするニューシングル『はじまりの予感』。そのジャケット写真に、芸人・アンタッチャブル柴田英嗣の顔面ドアップ写真が起用され話題を呼んだ。


かねてよりケツメイシのメンバーと親交があったことから今回の起用が決まったというが、過去に多くの苦境を乗り越えてきた柴田のまっすぐな眼差しは「はじまりの予感」というタイトルにぴたりとハマっている。
今回は、アンタッチャブル柴田のこれまでを振り返ってみたい。

「べらんめえ口調」ツッコミが斬新だった


1994年、プロダクション人力舎のタレント養成所で出会った山崎弘也と柴田英嗣がアンタッチャブルを結成した。
アンタといえば、今や“バラエティ番組の顔”である“ザキヤマ”こと山崎弘也をまっさきに思い浮かべる人が多いだろう。今の若い視聴者にとってはバラエティでガヤを入れるザキヤマのいるコンビ、という印象が強いはずだ。

しかし、アンタが実力派漫才師としてその名を轟かせていたことを忘れて欲しくない。むろんザキヤマの天性のキャラクターはもちろんのこと、彼らの漫才の中核を担っていたのはツッコミ担当の柴田英嗣の存在である。


関西弁の芸人が主流のなか、スピード感あふれる“べらんめえ口調”の柴田のツッコミは当時かなり斬新で、インパクトの強いものだった(とはいえ柴田の出身は静岡県静岡市である)。
間の取り方から緩急の付け方まで、その巧みなツッコミは関東の漫才師の可能性を大いに感じさせるものだったことを記憶している。

キレぎみでツッコミまくる柴田がザキヤマの思わぬアドリブに吹きだしてしまう様は、つねに観客の拍手笑いを誘っていた。アンタは、1990年代から2000年代にかけてのお笑いブームのなかで関東芸人の実力と可能性を広く知らしめた英雄だったと言ってもいい。

漫才からバラエティ番組へ


その証左として、1999年にはNHK総合の『爆笑オンエアバトル』で毎回高得点を叩きだし、大きな注目を集めていたことを覚えている人も少なくないだろう。

そんな彼らの存在をお茶の間に知らしめたのは、2003年の『M-1グランプリ』(朝日放送)での敗者復活戦からの勝ち上がりだ。この年は惜しくも優勝を逃したが、翌年の大会では見事に頂点に輝き目覚ましいスピードでバラエティ番組に進出していった。


なかでも柴田の個性を開花させた番組といえば、2004年から2005年まで放映されていたバラエティ番組『リチャードホール』である。
くりぃむしちゅー、中川家、おぎやはぎらと共に同番組のレギュラーとして活躍していたアンタだが、なかでも番組内でのコント「パンダプロデューサー」は、動物マニアの柴田のキャラクターを生かした伝説的コントとして未だに根強いファンがいる。筆者もその1人だ。

「パンダP」から動物好きタレントの地位を確立


柴田扮する“パンダP”ことパンダプロデューサーは、動物の全身タイツを身にまとい冷笑する周囲の空気を読まずにひたすら動物ウンチクを語るプロデューサー。
動物ネタで数字を取ろうと奮闘する彼のウンチクに笑ってしまった放送作家は、無理やり動物コントを書かせられる。このお決まりの展開に、くりぃむ上田ら出演陣も素で爆笑させられてしまうという人気のシリーズだった。

その後も柴田は趣味の動物園めぐりなどで得た知識をもとに、動物関連のバラエティ番組に多数出演。
自ら『アンタッチャブル柴田英嗣の日本一やかましい動物図鑑』(講談社/2007年)を刊行するなど、“動物好き芸人”の地位を確立していく。
自身も動物のような愛らしい風貌をしているというのはさておき、なぜか妙に動物コスプレが似合ってしまうのも柴田の魅力である。

柴田英嗣を襲ったスキャンダル


順風満帆に見えた柴田だが、プライベートでのトラブルから2010年より1年間の休業期間に突入する。
体調不良とも女性関係のトラブルとも様々な憶測を呼んだが、復帰後のバラエティ番組では「冤罪で逮捕されていた」ことを告白。さまざまな事情から、誤解が生じ事情聴取されたのだという。

また、2016年には妻Aさん(当時)と歌手のファンキー加藤とのW不倫が発覚。
元妻の妊娠が発覚し、柴田とAさんは離婚するに至った。
柴田本人の過失ではないものの、またもやスキャンダルで世間を騒がせるという結果となったことは残念という他ない。しかし終始誠実なメディア対応を行ったことから、図らずも世間は好意的に受け止めた。

そんなジェットコースターのような芸能生活を送ってきた柴田だが、この夏(2017年8月)にはプロダクション人力舎の芸人養成スクール・「スクールJCA」のオープンキャンパスにて、アンジャッシュ児嶋、ドランクドラゴン鈴木らとともに特別体験授業を行うという。柴田ファンとしては、是非とも参加してみたいイベントだ。

柴田にしかない個性、柴田にしかできない笑いで、またお茶の間で爆笑させてほしい。
もっと動物ネタをくれ! ファンの願いはそれだけである。
(ヤマグチユキコ)

※文中の画像はamazonよりはじまりの予感 (DVD付)