クリスマスのイメージといえばツリーやイルミネーションが華やかで、サンタクロースがプレゼントを持って来る“キリスト教の祝日”というイメージが強いと思う。しかし、本場ヨーロッパのクリスマスはそれだけではないというのだ。


「西洋版なまはげ」に子どもギャン泣き クリスマスの悪魔・クランプスin板橋
クリスマスの悪魔「クランプス」

親の言うことを聞かない悪い子は、クリスマスの日にサンタクロースからプレゼントをもらえないばかりか、クランプスという魔物にお仕置きされてしまうという。しかも悪い子は袋に詰めてクランプスにさらわれてしまうともいわれている。

このクランプス、オーストリアやドイツなどに伝わる伝統儀式で、クリスマスシーズンになるとクランプスの恰好をした人々が、聖ニコラウスの後に続いてパレードをする。

恐ろしいけど人々に愛されているクランプスは、切手にもなったり、『X-MEN:アポカリプス』などを手掛けたマイケル・ドハティによって『クランプス 魔物の儀式』という映画にもなったり、『GRIMM/グリム』などの海外ドラマでもクリスマスの怪物としてたびたび登場していてかなり身近な存在のようだ。

日本でもクランプスが見られる?


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クランプスは日本でも見ることができる

日本でもクランプスパレードを見ることができる場所がある。しかもイベントの後援には“オーストリア大使館”の名前まであり本格的だ。それは見に行くしかないと向かったのは、東京都板橋区の志村坂上。
ところで何故板橋なのか。オーストリアとクランプス、何か関係があるのだろうか?

クランプスパレード主催krampus-japanの吉田さんに聞いてみると、「全く関係は無い」とのこと。このクランプスパレード、そもそもが吉田さんがクランプスに魅せられ始めたものだという。たまたま見ていたテレビ番組で映ったクランプスに衝撃を受け、クランプスのためにオーストリアへ渡り、オーストリア大使館の協力の元、吉田さんの地元である板橋で開催することになったのだという。このクランプス愛、すごい。

会場ではオーストリアに関連する物産展も開催されていた。


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手に持っているのはオーストリアのビール

オーストリアのビールとソーセージのお店では、民族衣装を着たお姉さんたちがお出迎え。
食べ物以外のブースでは、クランプスの生写真などグッズや工芸品が販売されていた。

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キャラクター化されたクランプス。かわいい

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オーストリアのスノードームの販売も


オーストリアのスノードームは販売だけでなく、スノードーム手作り体験も行われていた。この他にもクランプスが腰につけているベルの小型版やブローチなどの工芸品のブースもあった。

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会場ではクランプスの仮面も売られていた

板橋区のクランプスパレードは毎年12月の第一日曜日に開催されていて、今年は第三回となる。クランプスの仮面は赤松の木からできていて、全てオーストリアの職人の手で手作りされた木彫りの1点もの。
そのため同じ顔の仮面はない。

クランプスは仮面、装束、腰に付けた巨大なカウベルを合わせると12キロ~15キロの重さにもなる。大変な役割なので、パレード終了後はクランプスへ拍手を送るのがならわしになっているということだ。

セント・ニコラウスの後に続くクランプス


クランプスパレードは14時からと16時20分からの2回。オーストリア大使館の関係者も出席したオープニングセレモニーの後、いよいよパレードの開始となる。
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ほうきを持った先導者の後ろを、セント・ニコラウスが続く


この2人はセント・ニコラウスのために道を作る役目。ほうきで払われると幸せになるといわれているが、かたくなに払われるものかと何度も飛び越えている子どもの姿もあった。

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かわいらしい天使たち


セント・ニコラウスは天使たちを引き連れ、さらにその後ろをクランプスたちが進んでいく。セント・ニコラウスやクランプスたちがパレードする歩行者天国には、基本誰でも立ち入ることができる。そのためクランプスと写真を撮りたい人や、厄払いしてもらいたい人が集まって来て大人気。
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クランプスは厄払いになるともいわれている


クランプスの持っている鞭でたたかれると厄払いになるという。もちろん叩かれてきたけど、けっこうバシバシたたかれる。
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子どもに近寄るクランプス


クランプスは厄払いになるというので、小さなお子さんを抱っこした親御さんがクランプスのもとにやってくるのだが、子どもたちは本気で怖がっていた。
パパに抱っこされながら「パパとママの言うこと聞きます!いい子にします!」とクランプスに叫んでいる子もいた。
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近寄らなくても怖いよね


背中のベルをガラガラ慣らし、大きな身振り手振りで子どもたちを脅かしてまわるクランプス。クランプスも子どもたちに「悪い子は誰だ」と聞いてまわる。クランプスが泣かせた子どもには、すかさず天使がお菓子を渡していた。
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天使の籠の中身はお菓子

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近いです…


クランプスと見学者の距離がとても近くて、カメラを構えているとグイグイせまってくるのでかなりの迫力だった。
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目が合うと近寄ってくる


約350メートルほどのまっすぐな道のりを歩き、そこから折り返してスタートまで戻るのがクランプスパレードの順路だ。



夕方のパレードはさらに迫力を増す


16時20分からのパレードは、さらにクランプスの迫力が増して登場する。本場のクランプスは夜の開催がメインのようなので、こちらの雰囲気の方が本場に近いのだろう。

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クランプスの目が光る

薄暗い中で、目を光らせたクランプスはますます迫力を増していた。大人が見ても「おお」と思うので、当然ながらひと目クランプスを見ただけでギャン泣きしている子もちらほら。
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とても悪魔っぽい


クランプスたちはとてもアクティブに動き回り、ジャンプし、手を振りあげる。でもカメラを構える人のためには静止してくれるのでとても親切。
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背中のベルをガランガラン鳴らしながら歩く


商店街にはクリスマス音楽とともに、クランプスの鳴らすベルの音が高らかに鳴り響いていた。
「西洋版なまはげ」に子どもギャン泣き クリスマスの悪魔・クランプスin板橋
そしてパレードはフィナーレへ


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最後は全員の集合写真撮影で終了!

2017年のクランプスパレードは大盛り上がりのうちに終了した。暗くなってからの方が、やはり悪魔感が増して雰囲気満点だった。来年も板橋区でぜひクランプスに会いたい。

(すがたもえ子)