個性派集団・AKB48で正統派を貫いた渡辺麻友という生き方
BestRegards!【通常盤】

不合格の通知にもめげず、オーディションを再度受験して合格してから11年間。渡辺麻友は、個性派ぞろいのAKB48で清楚で愛らしい偶像=アイドルとして生き抜いた。
キャッチーなことを言ったり、突飛な行動を取ればもっともっとバズったかもしれない。優等生でちょっと退屈と取られかねないにもかかわらず、彼女は常に明るく愛らしく振る舞ったのはなぜか。

以前、本人に話を聞いた際、「メンバーからはよく、背中で語るタイプだよねと言われる」と教えてくれた。朗らかで屈託のない笑顔の裏で、常にアイドルはどうあるべきか。AKB48を良くするにはどうしたらいいかを考えていたのだろう。しかも、それを言葉で伝えるのではなく、自らが率先して態度で示してきた。
“背中で語る”は、メンバーからの尊敬と信頼から発せられた言葉に違いない。

いわゆる総選挙では早くから1位を獲りたいと公言してきた。2014年に念願叶って1位に輝くまで、あえて自らプレッシャーをかけ続けていたのだろう。そうやっていつもストイックに自分を追い込むのが、渡辺麻友の生き方なのだ。

■完ぺきすぎるから、アンドロイド疑惑?
個性派集団・AKB48で正統派を貫いた渡辺麻友という生き方
BestRegards!【完全生産限定盤A】

持って生まれたキュートなルックスに加え、ストイックに正統派のアイドル像を追求した結果、冗談交じりに「渡辺麻友はアンドロイドではないか」と囁かれたりもした。事実、渡辺のソロ楽曲には「マユユロイド」なる楽曲が。
また、ソロで初めてオリコン週間チャート1位に輝いた「ヒカルものたち」では、アンドロイド風の衣装を着用。気鋭のクリエイターたちが描くイラストは、まるでアニメの中の完璧な美少女ロボットのようだった。

ソロの4thシングル「ラッパ練習中」のリリース記念で開催した初のワンマンライブでは、膨大な楽曲の振り入れも頭に叩き込み、ノーミスで完走。さぞ感極まったかと思うのだが、それでもいつもの笑顔でファンの期待に応えた。ただ、ビジュアルの愛らしさだけで、アンドロド疑惑が浮上するわけではないだろう。

総選挙で1位になった年は「人生史上最も忙しかった」と語るほど、多忙を極めた。
その理由の1つに、稲森いずみとダブル主演したドラマ『戦う!書店ガール』の撮影がある。実在の書店が閉店した後、深夜から早朝にかけて撮影されたため、過酷さに拍車がかかった。その頃のことを本人は、「撮影からそのままAKB48の活動に行ったこともある」とあっけらかんと笑うが、膨大なセリフを覚えつつ、グループ活動にも手を抜かない。想像するだけでも目がくらみそうだ。

そんなふうに苦しいときも、嬉しいときも、いつもまゆゆはいつものスマイルで通した。その精神力の強さには感服するほかない。


■ついに卒業! 愛するグループから巣立つ日
個性派集団・AKB48で正統派を貫いた渡辺麻友という生き方
BestRegards!【完全生産限定盤B】

2017年6月に行われた総選挙結果発表の日、恒例のスピーチで突如、卒業を発表したまゆゆ。同年2月にグループ最年長で1期生の小嶋陽菜が卒業したばかりで、指原莉乃や柏木由紀らとともにグループを牽引するのだろうと思っていただけに、驚きと衝撃が広がった。だが、彼女自身の胸の中ではやりきったという思いが芽生えたとしても不思議はない。これまでどんなにつらくても涙を流すことなく、凛として、グループを見えない太いロープで引っ張ってきたのだから。

卒業を意識し始めたのは2〜3年前に遡るというが、本当に決意したのは意外にも発表の数ヶ月前だったという。仕事に関しては綿密に計画を立てるくせに、自分のこととなると意外におおらか。
「卒業後も特に何も決まってません」と笑う。そんなギャップも、渡辺を知る程に魅力的に思えてくる部分かもしれない。

AKB48の卒業とソロシンガーとしてデビュー5周年の節目にリリースされる1stアルバム『Best regards!』の特典映像では、今までに見たことのないまゆゆの素顔が垣間見える。アメリカのロサンゼルスで無茶振りされた渡辺が孤軍奮闘するのだが、「あんなに流暢に日本語を話してる私は滅多に見られません(笑)」というのだから大いに期待できそう。

完璧なアイドル、渡辺麻友。その実は、ちょっと天然なところもあって、謙虚で、口下手。
だけど思いは人一倍熱いものがある。最近は、「暇さえあれば舞台を見に行く」と瞳を輝かせる渡辺。卒業決意も、女優業に集中したい気持ちが抑えきれなくなったゆえかもしれない。

現在、23歳。女優としてもアーティストとしても、そして女性としても本当に輝けるのはこれから。持って生まれた「無限に努力できる」という非凡な才能を武器に、渡辺麻友の第2章でさらに人の目と心を惹きつける存在になるだろう。

文/橘川有子

≪リリース情報≫
Album
『Best Regards!』
2017.12.20リリース


■渡辺麻友オフィシャルサイト