アニメ『どろろ』(→公式サイト)。今日3月11日(月)22:00より、TOKYO MXほかで、第十話「多宝丸の巻」が放映される。

Amazon Prime Videoで毎話24:00頃から配信予定。
早く来た衝撃「どろろ」あのタブーシーンもちゃんと描かれた9話
EDテーマ「さよならごっこ」amazarashiジャケット

食べること、生きること


第九話は原作にもある、どろろの過去編。
少し改変はされているが(母親が強盗をしていない、武家の館を壊していない、など)、テーマに関わりそうな大事な部分は、かなりしっかり再現されていた。

中でも食人のシーンが残っていたのは、本当によかった。
原作では餓死で全滅寸前の村で、村人が村人を食っていた。アニメでは戦場で、生き残った武士が死体を貪っている。

どろろでは「現世の地獄」の表現と「生きる」描写のために、欠かせない部分だ。

対になるのは、母親がおかゆをもらうため、焼けただれても手にもってもらうシーン。
どちらも生きるための食の行動。食べるために奪うか、自らを犠牲にするかの違いが見える。
また以前、百鬼丸を育てた寿海が、戦場で死体の修復をしていたのとも対称的。
人の死体を大切な生命として見るかどうかの差だ。

原作では父親が、飢餓のあまり自分も死体に手を出そうとする瞬間もあるが、そこはカット。

アニメの父親の方が、誇り高い人間として、全体的に強調されている。
ここは第六話「守り子唄の巻・下」と通じる部分だ。母親が絶対身体を売らなかったことをどろろは誇りに思い、身体を売ってでも皆で生き延びようとしていたミオを褒めていた。
両親は、理不尽を与えた侍以外を決して殺さなかった。飢えようとも、無差別に奪わなかった。
彼らの、苦しんだ農民としての誇りと信念だ。


もう一つ比較しておきたいのが、死滅した村を通るシーン。
廃墟の中、母親が赤子に乳を与えた状態のまま、親子共々白骨化しているのをどろろは目撃している。

イタチの生き方


どろろ「おいら刀使えねえから、こいつで悪い奴をやっつけてやんだ!」
イタチ「そいつはいい心がけだぞ。だがなどろろ、これからの世の中は、力だけじゃ生き残れねえ」
盗賊の頭である、どろろの父親・火袋。彼を裏切った、イタチの表現がとても丁寧だ。
どろろからしたら敵のような存在のはずだが、イタチの考えが雑ではないので、悪人と責められない。

おかしらである火袋を、イタチは憎んでいなかった。

武士が盗賊である彼らに対して返り討ちに来た時、生命をかけて一緒に戦っている。
彼は「生き残るにはどうするべきか」を真剣に考えた結果、提案としてきちんと火袋に伝えている。
イタチ「見てくださいよ。ずいぶんと腕のいい子分たちが集まった。おかしらもそろそろ先を見たらどうなんでい? うまく領主に取り入れさえすれば、いいご身分が手に入りやすぜ?」
そもそも悪人なら、この時点でひょいっと抜けていてもおかしくない。
原作でもイタチはそこまで極悪人ではないが、赤ん坊のどろろを盗んでいるので、アニメ版はかなり誠実になった方。


武士に取り入った後、イタチは火袋を殺さなかった。ふとももに矢を射て、歩きづらくしただけだ。
どろろが「イタチ!」と叫んだ時、一瞬だけイタチの顔が映る。
そこには、皮肉っていた時の笑顔はない。むしろ、少し悲しそうだ。

母親がおかゆをもらいにいく場面でも、イタチが出てくる(ここはオリジナルの追加シーン)。

おかゆを配って集まる人の中から、戦場で手柄を立てるための人員をスカウトする、ということらしい。とはいえ施しを与えているイタチの姿は、とても悪人には見えない。
イタチ「これからの世の中は力だけじゃ生き残れねぇ。ここだよここ。賢くねえ奴は死ぬぞ」
煽り立て嫌がらせをしているようにも見えるが、どろろに対して彼なりに教えてあげているのだろう。
どろろが投げた石(生き残るための「力」の象徴)を、イタチが手で受け止める様子は印象的。
実際どろろは百鬼丸と出会ってからは、賞金を狙うなどかなり賢く立ち回っている。
ミオのように、どろろは価値観の差を理解して、イタチのことも認められるんだろうか。

どろろの本性ばらし


さらっと、どろろは女の子だとばらしていてびっくり。
原作読者は知っているネタではあるが、そもそもオープンにするのは後半。
もっともアニメ版ではまだ百鬼丸の目が見えていないので、ここで公開したところで何ら問題にはならなさそう。

どちらかというと、男の子として育てられてきたであろうどろろが、女の子バレを気にしている様子。
全く今後話に絡まないということはなさそうなので、注目しておきたいところ。
過去編を見るとそこまで赤ちゃんじゃなかったので、両親が死んだのはちょっと前のことに見えるが、何歳設定なんですかね?

(たまごまご)