なぜ「こんにちわ」は間違いとされるのか? 新連載「米光一成の表現道場」

こんにちわ。表現道場の米光一成である。

宣伝会議編集ライター養成講座即戦力コース、池袋コミュニティカレッジ「表現道場」、さらにnoteの「表現道場マガジン」などで道場主を務めている。
なぜ「こんにちわ」は間違いとされるのか? 新連載「米光一成の表現道場」

こんにちわ? こんにちは?


さて。
あいさつの時に使う「こんにちわ」。
口に出して言うときは「こんにち」である。
だが、書き記すときは「こんにち」が正しいとされる。

なぜ「こんにちわ」が間違いとされるのか?


「こんにち」はもともと「今日、よいお天気ですね」といった挨拶の言葉を省略して、「こんにちは」としたもの。
「こんにち」の「わ」は、助詞の「」である。
「私、米光一成です」の「は」を「わ」と書かないように、「今日、よいお天気ですね」の「は」を「わ」とは書かない。

助詞の「は」は「わ」と発音するが、「は」と書く。
だから、「こんにち」でなく「こんにち」と書くのだ。
なぜ「こんにちわ」は間違いとされるのか? 新連載「米光一成の表現道場」

「あるいは」「とはいえ」


「こんばんわ」も同様。「こんばん」が正しいとされる。
「あるい」「といえ」等も、「わ」と発音するが「」と書く。
なぜ「こんにちわ」は間違いとされるのか? 新連載「米光一成の表現道場」

なぜ「こんにちわ」は間違いとされるのか? 新連載「米光一成の表現道場」

「いまわの際」は「いまは」「いまわ」?


では、「いまの際」はどうだろうか。
「いまわの際」は、臨終の時、死にぎわの意味。
「いまわ」は、元来「今限り」であり、旧仮名では「いま」と書く。

だが、今では、「いまの際」と書かず「いまわの際」と書く。
「す一大事」「出る出る」「きれいだ」なども、「は」と書くべきところだが、今や「わ」と書くのが慣例だ。

例外の例外の「わ」


仮名は、だいたい発音通りに記すのが原則である。
ところが一部例外がある。
表記の慣習を尊重して、発音と違えて書く。
そのうちのひとつが、「」だ。
助詞の「」は、いまや「わ」と発音するが「」と表記する。

だが助詞として使う意識が薄れたものは、例外の例外として「」と表記せず「わ」と表記する。
それが、「す一大事」「出る出る」「きれいだ」などだ。

「こんにちわ」が正しい日が来るのか?


では、「こんにち」はどうだろうか?
いま「こんにち」と言うときに、「今日は、よいお天気ですね」の省略だと意識しているだろうか。
ほとんどの場合していないだろう。
「こんにち」という挨拶のひとかたまりの言葉として使っている。
であるならば、「こんにち」と表記してもいいのではないか。

少なくとも目くじら立てて間違いだと主張するよりも、許容したほうがいいだろう。
(テキスト:米光一成 タイトルデザイン/まつもとりえこ)