「MIU404」米津玄師「感電」タイムは犯人逮捕の陣馬(橋本じゅん)が家族の歓迎を受けたシーン 7話
イラスト/ゆいざえもん

猫は事件を見ていたか……「MIU404」7話

MIU404(TBS系 毎週金よる10時〜)第7話「現在地」(8月7日放送)は第6話に続いて休日のエピソード。今回は、陣馬(橋本じゅん)九重(岡田健史)がお休み。陣馬は息子の結婚相手との食事会に、九重が選んだスーツを着て出かける。
九重はオサレな装いでゴルフ(野球選手がゴルフウエアが似合う法則が当てはまっていた)。

ゴルフにつきあっている我孫子(生瀬勝久)が「彼女からですか」と聞くと、「いえ違います、機捜の相棒(陣馬)に服、選んであげて」と返す九重がほのぼの。警察の偉い人であるお父さん役が矢島健一って絶妙なキャスティングだった。

離れていても第4機捜は繋がっている。休日の陣馬が出くわしてしまった事件と、勤務中の志摩(星野源)伊吹(綾野剛)が初動捜査する事件が交錯していく東京シティ。それ以外の事件も奇妙な縁で繋がっている。


まずは謎の男・久住(菅田将暉)とデリバリー・出前太郎の人(King Gnu井口理)がすれ違い、出前の人は伊吹にメロンパンをお届け。伊吹は色とりどりのメロンパンの写真をハムちゃん(黒川智花)にLINE。今日は桔梗(麻生久美子)もお休みで家にいる。

そこへトランクルームに死体が発見されたという報告が入った。マゼンタピンクのドアが並び、インパクトのあるトランクルームのひとつに中年男の死体。なぜか猫砂がかけられていた。
自殺か他殺か――。

猫は事件を見ていたか……。大きな瞳が宝石のようなかわいい猫の名はきんぴら。「ニャンか気になる」「思えニャイ」「はいニャ」と伊吹はニャンニャン言葉を多用する。

「ニャンニャンニャン」といえば、今週アルバム『STRAY SHEEP』発売、サブスク解禁で話題の米津玄師による主題歌「感電」の2番。1番は「わんわんわん」で2番は「にゃんにゃんにゃん」。
MVには猫も出てくる。さて、今週の「感電」タイムは――。

米津玄師歌う「たった一瞬の このきらめきを」をしみじみ思う

狭い住居に置けないものをしまっておくトランクルームに住んでいる人がいるという意外な事実。東京シティは東京砂漠。孤独で貧しい人たちが寄る辺を求めて彷徨っている。

事件に居合わせた利用者は、コスプレが趣味の弁護士・清瀬十三(りょう)、退職金詐欺にあい、亡くなった人の隣のトランクルームに住んでいたおじさん・倉田(塚本晋也)、BABYMETALグッズをたくさん置いているBABYMETALファンの家出少女二人。そして、トランクルームの管理者赤ペン瀧川と、個性派ゲストがひしめいた。


亡くなった人は仮名で健さん(佐伯新)。猫を飼っていた。健さんも、倉田も、他に居場所がなく、トランクルームに隠れるように身を寄せている。

「死んでいるのも同じ」と言っていたと健さんを思い返し、「いらないものを置いておくこの箱のなかで、ただながらえて意味があるんだろうか」と嘆く倉田。「この世のほとんど、意味なんてないよ」と言う清瀬。ただ、BABYMETALファンの女の子は「いらないものなんて置いてないよね」「宝物置いてあります」と無邪気である。
だからこそ「たった一瞬の このきらめきを」(「感電」より)が尊いんだよなあなんて思った瞬間。

一方、陣馬は食事会に向かう途中に指名手配の人物と遭遇。第4機捜は偶然会う率高いなあ……。18年前も、指名手配犯と出会って、夏休みの家族を置き去りにしてしまった過去のある陣馬。今回は逆に妻と娘に車から降ろされてしまい……。

陣馬は相手の乗った車を足で追いかける。
いや、無理でしょさすがに……。だが橋本じゅんならやってのけてしまいそうな気もしないでない。なにしろ、無敵の男・剣轟天(by 劇団☆新感線)だから。

陣馬が指名手配犯を追っていると、健さん(梨本健)も指名手配犯だったことがわかる。

「あっちも指名手配犯、こっちも指名手配犯」
「指名手配犯は二人?」

この指名手配犯二人がつながっていた。陣馬が追っているほう(大熊邦彦)は梨本と共犯者で、二人ともトランクルームに住んでいたのである。なんでこんなに事件が数珠つなぎなのか。第4機捜、もってる。

伊吹は言う、逮捕することが大熊の淀んだ負の感情を救うかのように

陣馬が追いかけている指名手配犯は10年逃げていた。隠れていたトランクルームのなかは荒れ果てていて、週刊誌の表紙の女性の顔が黒く塗りつぶされている。それを見た伊吹は「10年あったら何ができるかな」と思いを馳せる。

伊吹の10年は、交番に飛ばされて機捜に異動になった年月。「10年間誰かを恨んだり腐ったりしないで本当によかった。俺はラッキーだったなあ」としんみり。

長いこと復讐に燃える生き方も古典「巌窟王」や、現代のヒット作「半沢直樹」みたいな物語になりえるけれど、物語の小さな脇役で終わってしまうような無為な生き方になってしまうこともあるのだ。

誰にも見つけられないまま孤独を燃やしていた大熊の悲しみを伊吹は想う。「さっさととっつかまえようぜ」と志摩に明るく言う伊吹。捕まえることが、大熊の淀んだ負の感情を救うことになると思っているかのように。

大熊は仲間の梨本を殺し逃亡していた。追いかける陣馬。出前太郎の自転車を盗んで逃げる大熊。だがそれが運の尽き。東京の道路網を駆け回るウーバーイーツ的な宅配業者・出前太郎(200人)を使って追跡。ここはゲーム感覚でわくわく。重量が感じられる陣馬、華麗に跳ぶ伊吹と志摩のアクションも迫力だった。ささやかに鳥が飛ぶのがプチ・ジョン・ウー的で(嘘)。

10年無為だったはずの大熊が体を鍛えていて、めっぽう強い。武器まで持って大暴れ。彼だって10年、何もしないで、女性の顔を黒く塗り潰しているだけではなかったのだ。体を鍛えることはいい方向に使えたら良かったのに。「完全に閉じちまった手はつかめねえんだ」(陣馬)。

犯人逮捕でボロボロになったまま食事会に遅れて行った陣馬は、九重が息子にメッセージを送っていたことで、歓迎される。「感電」タイムはここ!

「MIU404」米津玄師「感電」タイムは犯人逮捕の陣馬(橋本じゅん)が家族の歓迎を受けたシーン 7話
第8話は8月14日放送。画像は番組サイトより

東京――小さな生きる哀しみがこの街には無数にうごめいている

誰かが誰かのことを見ている。それが助けになる。大熊も梨本もBABYMETALファンの家出少女も社会から隔絶した人たち。自ら逃げたとも言えるし社会から捨てられたとも言える。知識の乏しい十代の女の子たちに親切な顔して寄ってくる悪いオトナもいて。

でも、おじさんのほうがもっと救われない。誰も助けてくれない。おじさんにも救いを。社会から見放され、誰にも気づかれない、声にならない声に耳をすまし、気配に気づき、手を差し伸べ合いたい。

ひととき、BABYMETALを歌って踊って、メロンパンパーティーするトランクルームでの出会い。亡くなった梨本の席にメロンパン。興が乗って「ハムちゃん、これからもっと楽しいことしようぜ」とオンラインしてくる伊吹に涙するハムちゃん。

生と死の交錯する刹那的な宴、これも「たった一瞬の このきらめきを」のひとつだと思う。楽しいだけでなく、なんだか哀しい感じがたまらない。小さな生きる哀しみがこの街には無数にうごめいている。

名監督にして俳優でもある塚本晋也、出番が少ないながら、愛らしくも気が弱そうな小市民のおじさん感が出ていて素敵だった。

なかには味方のフリして甘い言葉で近寄ってくる危険な輩もいる。成川岳(鈴鹿央士)に忍び寄る久住(菅田将暉)。成川もまた、社会から逃げて身を隠している未成年である。彼は社会の悪に染まってしまうのか。それとも手が差し伸べられるのか。

桔梗の家には盗聴器。それは伊吹のオンラインの電波の乱れが教えてくれる。人生の道路網にはほんの小さな出会いや、ちょっとした合図がたくさん。それに気づけるか。それをきらめきに変えられるか。

余談だが、まるごとメロンパン号。もはや警察の覆面車って世の中にバレバレなのではないだろうか……。
(木俣冬)

※次回8話のレビューを更新しましたら、ツイッターでお知らせします

番組情報

TBS 金曜ドラマ『MIU404』
毎週金曜よる10:00〜10:54
番組サイト:

https://www.tbs.co.jp/MIU404_TBS/