突然ですが、この浮世絵の赤(オレンジ)や黄色、何で着色されているかご存知でしょうか。

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春信「三十六歌仙 紀友則」大英博物館蔵

江戸明和期に鈴木春信らが生み出した多色刷りの浮世絵の着色方法は、浮世絵ファンから注目を集めている分野の1つです。
今回は知れば知るほどハマっていく浮世絵の色材の一部をご紹介します。

■赤

銀朱(ぎんしゅ) 辰砂、朱、朱砂などとも呼ばれます。硫化鉱物です。なんと、「ハリーポッター」シリーズや漫画「鋼の錬金術師」などでよく知られる「賢者の石」というのはこの石の事だそうです。鉱物から水銀を取り出して朱色を作ります。中国辰州から多く産出しましたが、日本では、伊勢国丹生(にう)などで弥生時代から採れたようです。
摺った時の色味は深い赤色です。

問題:この浮世絵の赤や黄色は何で着色されている?浮世絵の色の材料ってどんなもの?赤・黄色編


銀朱 Wikipediaより

丹(たん) 鉛丹(えんたん)とも呼ばれます。名前のごとく、鉛から作られます。顔料の粉を見た感じは赤みの強いオレンジですが、浮世絵として摺ると黄みの強い色になります。

問題:この浮世絵の赤や黄色は何で着色されている?浮世絵の色の材料ってどんなもの?赤・黄色編


丹 Wikipediaより

紅 口紅や着物など、日本人にはとてもなじみ深い紅色。ベニバナという植物の花から抽出される色材ですが、その抽出方法は大変手間暇がかかるもの。
ベニバナの花を摘んで額を取り除き、花びらをすぐに水洗いし発酵させます。3日ほど発酵させると、赤くなります。その後すりこぎですりつぶして餅のようにまるめ、紅花餅(紅餅)を作るのです。浮世絵で使うには、その紅花餅を水に浸け、アルカリと酸で中和して布でこし、ようやく「片紅(かたべに)」と呼ばれる絵の具が完成します。以下の図では少女の着物の色と提灯の色が紅で摺られています。

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春信「三十六歌仙 紀友則(部分)」大英博物館蔵

■黄

藤黄(とうおう) 雌黄(しおう)とも呼ばれる藤黄は、植物由来の色材です。
東南アジア産オトギリソウ科のガンボージという木からとった黄色樹脂。着物の染料や日本画の顔料としてよく使用されるほか、皮膚病や外傷・火傷などの薬にも使われます。浮世絵の色材として紙上に摺る時には、温かみのある黄色に発色します。

下記の図の傘の黄色が藤黄です。

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春信「三十六歌仙 紀友則(部分)」大英博物館蔵

鬱金(うこん) こちらも植物由来の色材。根っこの部分にできるショウガのような根茎を使用します。
その根茎を煮てから乾燥させ、砕くと綺麗な黄色い粉になるのです。ちなみにこの根茎に含まれる成分が二日酔いにも効く事でも広く知られています。鬱金の別名はターメリックで、カレーのスパイスとしても有名です。色材としての発色は赤みが少なく、より鮮やかな黄色。藤黄よりも淡く、レモン色に近いような優しい澄んだ発色です。

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鬱金の根茎と粉末 Wikipediaより

参考文献:目黒区美術館「色の博物誌 江戸の色材を視る・読む」

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