5月に入って、世界的な株安に見舞われている。

東京株式市場の日経平均株価は、史上初の10連休となった今年(2019年)のゴールデンウイーク(GW)明けの5月10日時点で、5営業日連続で続落。

また、米国のダウ工業平均株価や中国の上海総合指数などの海外の株価指数も下落している。

「ハロウィーン効果」で10月末の株式は割安

株価のこうした動きについて、筆者が思い出すのはアノマリーである「5月に売り逃げろ」「ハロウィーン効果」と呼ばれるものである。

ちなみに野村證券の用語集の説明によると、「アノマリー」とは、効率的市場の仮説では説明のつかない証券価格の変則性をいう。明確な理論や根拠があるわけではないが、当たっているかもしれないとされる相場の経験則や事象である場合が多い、としている。

たとえば日本株では、4月(GW前)に株価が上昇しやすいという「4月効果」や、「10月効果」と呼ばれるものが該当する。

「10月効果」とは、米国株でよく見られる値動きで、10月に株価が下落する傾向があるとされる。

裏を返せば、10月末に買うと割安に買える可能性が高まる。そのことから、「ハロウィーン効果」とも呼ばれている。

実際、2018年10月の株式市場は急落に見舞われ、19年4月の株式市場は総じて堅調な推移を見せていた。

ただ、相場の経験則はもっともらしく聞こえる場合も少なくないが、「人から聞いた」というだけではその妥当性の判断ができないという問題もある。

したがって、この「4月効果」と「10月効果」の二つのアノマリーを、統計的に検証することにした。そうすれば、客観的な方法で相場の経験則の真偽を確かめることができるはずだ。

なお、検証にあたって1950年から2018年までのS&P 500株価指数の月足データを使用した。つまり、69年間にわたる検証を行うということである。

※ Yahoo! Finance(米国サイト)からCSVデータを取得した。

「10月買い」「4月売り」の有効性

もし、5月と10月に株価が下がりやすいというのなら、10月末に買って、4月末に売れば、割安な価格で買って、割高な価格で売ることができるはずである。

そこで、ある年の4月の終値でS&P 500指数を買い、10月の終値で売った場合と、10月の終値で買い、翌年4月の終値で売った場合の平均リターンを比較した。

結果は、次のようなものだった。

このとおり、検証の結果は驚くべきものだった。

「4月買い、10月売り」が平均してわずか1.5%の利益しか上げていなかったのに対して、「10月買い、4月売り」は7.0%もの利益を上げていた。

サンプル期間の長さ(十分なサンプル数があること)を考慮すれば、この考察は妥当なものと考えてよいだろう。

一般に、アノマリーとは効率的市場の仮説では、説明できない相場の経験則とされる。

ただ、季節性のアノマリーについては、現実社会の制度も関連してくる。企業決算は4半期ごとに行われ、また法人税の納付は1年ごとである。

そのような季節性のイベントが、相場のアノマリーを生んでいるのではないだろうか――。相場のアノマリーを、今後の投資活動に役立ててみるのはいかがだろう。(ブラックスワン)