雷雲から上空へと放たれる、天を衝く青い光柱「ブルージェット」の発生源が国際ステーションの観測で明らかに

謎の青い光柱、ブルージェット image by:DTU Space, Daniel Schmelling/Mount Visual
 雲から天をつくような青い光の柱が立ち昇る。この青い光柱がブルーバンと呼ばれる現象で、その原理は完全にはわかっていなかった。


 このほど、国際宇宙ステーションが観測した映像から、ブルージェットの発生源が明らかとなったようだ。
【国際宇宙ステーションが撮影したブルージェット】

 ブルージェットは「超高層雷放電」と呼ばれる現象の一種で、これまで地上や飛行機から目撃されていたが詳しくはわからなかった。

 2019年2月26日、太平洋ナウル島上空を飛行していた国際宇宙ステーション(ISS)が、カメラ、光度計、X線・ガンマ線検出器によって「ブルージェット」を観測したことでその発生源が明らかとなった。

※映像はわかりやすくCG加工したものだそうだ

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Elves seen from space

【ブルージェットの発生源はブルーバン】

 デンマーク工科大学の大気物理学者トーステン・ノイバート氏は『Nature』(2020年1月20日付)で、ブルージェットの発生源についての見解をを発表した。

 ブルージェットの発生源は、光柱が立つ前の青い閃光の爆発で、「ブルーバン(blue bang:青の爆発)」と表現している。

 高度16キロにただよう雷雲の上部で、10マイクロ秒ほど青い閃光が爆ぜる(ブルーバン)と、成層圏へ向けて光の柱のようなブルージェットが吹き上がり、400ミリ秒で高度52キロまで突き抜ける。


 またこのときに波紋のように広がる光と紫外線は、エルヴス(ELVES/Emission of Light and Very Low Frequency perturbations due to Electromagnetic Pulse Sources)と呼ばれる現象で、放電で起こる電磁パルスが原因だと考えられている。こちらは30マイクロ秒ほど持続した。

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波紋状に広がるエルヴス image by:DTU Space, Mount Visual / Daniel Schmelling
 ノイバート氏によると、ブルージェットを発生させたブルーバンは、狭い範囲で起きる特殊な放電現象と考えられるそうだ。

 映像を見ると何か所かでブルーバンが発生し、その1つからブルージェットが発生したことがわかる。

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数か所で発生したブルーバン image by:DTU Space, Mount Visual / Daniel Schmelling
【雲の上部で発生する特殊な雷】

 太陽が地球の表面を熱すると、上昇気流が発生して、湿気を含んだ空気が上昇する。やがて湿気は冷えて氷になり、互いにぶつかりながら静電気を蓄積していく。


 このとき成長して重くなるあられは負の電荷を、軽い氷晶は正の電荷をおびる。こうして雲の中(あるいは雲と地上)で電位が異なる領域が形成され、その間で放電が生じたものが雷と呼ばれる現象だ。

 しかし雲の上部で起きた乱れによってそうした電荷領域が1キロ以内に接近すると、一瞬強烈な電気の奔流が発生する。これがブルーバンの正体かもしれないとのことだ。

 こうした自然現象の解明が重要なのは、それが大気中を伝わる電波に影響し、通信システムに干渉する可能性があるからだそうだ。

追記(2021/01/28)本文を一部修正して再送します
References:Nature / sciencenews / inverse/ written by hiroching / edited by parumo

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