今月17日、南米チリのビーチにシロナガスクジラ(blue whale)の死骸が流れ着いた。物珍しさに多くの人々が砂浜にやってきたが、彼らがとった行動がSNSに投稿され物議を醸している。


チリ南部マガジャネス・イ・デ・ラ・アンタルティカ・チレーナ州プンタ・アレーナスの砂浜に打ち上げられたシロナガスクジラの死骸。絶滅危惧種にも指定されており、個体の体長は20メートルを超える。

その砂浜に横たわる死骸に群がり写真を撮る人々の姿がSNSに投稿され、世界中に一気に拡散した。黒い身体には人間の靴で踏みつけられた跡がいくつも残っており、痛々しい姿には目を覆わんばかりだ。

Rodrigo Saavedraさんが「#RespetoAnimal(動物にリスペクトを!)」のハッシュタグを添えてTwitterに投稿した写真では、旅行客と思われる若い女性2人がクジラの上に乗り、Vサインをして笑っている。さらに2枚目では、クジラの身体に深く刻まれた「ANA TE AMO(アナ、愛してるよ)」の言葉も見られるのだ。


ユーザーのひとり、カルメンさんは「リスペクトや思いやりの気持ちはないのか」と憤りを示し、シエメンさんは「なんて馬鹿なことを! 人間は堕ちていくだけなのか…。亡骸にこんな言葉を刻むなんて考えただけでも嫌気が差す」とコメントをしている。

またプンタ・アレーナスに近い自然史博物館リオセコで研究員をしているガブリエラ・ガリードさんは、砂浜での様子を地元紙『LA NACION』に次のように語っている。

「あの日、クジラには50人ほどが群がっていました。セルフィーを撮る者だけでなく、個体の上に乗っている者も何人かいました。そこに秩序というものはなく、私は怒りとショックで震え上がりました。
なぜあんなことができるのか理解できません。」

騒ぎはしばらく続いたが、現場はその後チリの海軍によって封鎖され、現在は科学者らによる詳しい調査が行われているという。

チリ南極研究所(INACH)に勤める海洋哺乳動物のエキスパートであり獣医でもあるアネリオ・アグアージョさんは、「シロナガスクジラの身体にはボートと衝突した時にできる傷が見られないので、餓死した可能性が高いでしょう。痩せており、体重は標準の半分ほどしかありませんでした。また胃の中にはプランクトンではなく、通常は口にすることがない海藻が残っていたこともわかっています。まだ2歳くらいの若い個体です」と述べている。

寿命が80年とも言われるシロナガスクジラは、これまで確認されている中で最も大きいものは体長34メートルもあったようだ。
平均体重は100トンを超えるそうだが、最大の天敵は人間なのかもしれない。

なお昨年夏には、スペインのビーチで母親とはぐれたイルカの赤ちゃんが、海水浴客に触られ続けて死亡していた

画像は『Rodrigo Saavedra 2018年2月18日付Twitter「Una ballena azul de 21 Mts varo en el sector de Punta Delgada, a 117 kms de Punta Arenas, el cetáceo estaba rayado con dedicatorias, cortes profundos en su piel y dos mujeres fotografiándose encima de su cuerpo #RespetoAnimal」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)