■新たなインバウンド関連銘柄として評価、一方で懸念材料も



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■9月末に3日連続で年初来高値を更新



新興市場である東証マザーズに上場している串カツ田中(3547)の株価が好調に推移しています。



8月初旬に久々に4,000円台に乗せた株価は、8月21日に上場来高値を付けました。

そして、それ以降も着実に上昇しており、9月27日から3日連続で年初来高値を更新しています。9月29日に付けた高値は7,340円、10月2日の終値は7,090円です。



■上場後1年間で株価は約4倍に上昇



今から約1年前の2016年9月14日に東証マザーズへ上場した同社の公開価格は3,900円、上場日の初値は4,425円、当日の終値が4,970円でした。



しかし、同社は今年6月1日付で1株→2株の株式分割を行っています。この株式分割を調整した現在の株価のベースに直すと、公開価格は1,950円だったことになります。つまり、現在の株価は、1年前の公開価格に対して約4倍弱まで大きく上昇しているのです。



串カツ田中の過去1年間の株価推移



串カツ田中は上場1年で株価が約4倍! 躍進の背景は何?

■1年前の上場時に注目度は高くなかった?



新興市場に上場した企業の株価が、公開価格の数倍まで上昇することは決して珍しくありません。時には10倍以上に買われる場面も見られます。



しかし、そうした株価の爆騰は、満を持して上場した日、および上場から数日の間に起きるケースが圧倒的に多いのが実情です。まさしく、上場したばかりで、将来の高い成長が見込める株に“飛びつく”といったところでしょう。



実際、串カツ田中が上場した2016年の初値上昇率(注)を振り返ると、1位のグローバルウエイ(3936)の約4.7倍を筆頭に、23社が2倍以上になりました(東証マザーズ、ジャスダックなど全市場が対象)。



ところが、串カツ田中の初値上昇率は+13.4%に過ぎず、上位50社にも入っていなかったのです。

少なくとも、上場時の注目度はさほど高くはなかったと言えましょう。では、串カツ田中のどういうところが評価されたのでしょうか?



注:初値上昇率=初値が公開価格をどれだけ上回ったかを示す騰落率



■お世辞にも魅力的とは言い難い株主優待制度



真っ先に思い浮かぶのが株主優待です。現在、保有株数に応じた株主優待としてお食事優待券が贈呈されていますが、たとえば、100株保有(保有時価は約71万円)で貰える食事券は3,000円のみです。これは、お世辞にも魅力的とは言い難い状況です。



それに、もしこの株主優待目当てに同社株を買う投資家がいるとしても、権利付き最終日と何の関係もない9月末に株価が急騰することに合致しません(注:同社は11月決算)。やはり、同社の成長性が評価されていると考えるのが妥当ではないでしょうか。



■“ソース二度づけ禁止”の串カツ人気は、とりわけ海外で急上昇



ここで注目すべきは、串カツという料理に対する評価・人気の高まりです。串カツと言っても範囲は広いようですが、同社の串カツは看板に書かれた「大阪伝統の味」が示す通り、“ソース二度づけ禁止”の大衆向け串カツです。



この“ソース二度づけ禁止”は、関西の方は普段から馴染みがあるかもしれませんが、筆者を含めた関東を含む東日本在住の人には、非常に興味深いものがあります(既に慣れましたが)。料亭などの高級感のある「串揚げ」とは一味違う、大衆的な価格と美味しさは時間を追うごとに評価されているのでしょう。



そして、この“ソース二度づけ禁止”の串カツは、訪日外国人観光客にも大人気となっています。ネットで検索すると、日本で串カツを食べた外国人観光客が自身のブログやツイッターで紹介している記事が多数見られます。

筆者も全て調べたわけではありませんが、特に、中国などアジアからの観光客に人気が高いと考えられます。



■中国の大型連休で串カツへの需要がさらに高まる



さて、10月1日~8日は中国が国慶節・中秋節の大型連休を迎えており、例年通り、多くの中国人観光客が日本を訪れているようです。



既に、多くの中国人が“爆買い”を卒業し、様々な日本の文化を体験することに嗜好がシフトしています。串カツのような日本の大衆的食文化もその1つでしょう。この1週間強の間、多くの訪日中国人が串カツを食べに行き、それに伴って串カツ田中の商売も繁盛する可能性は高いと考えられます。



■新たなインバウンド関連銘柄へ



そして、この国慶節・中秋節の大型連休による売上増を見込むならば、9月下旬に株価が急騰したことの十分な説明にもなります。



今後、中国を始めとする訪日外国人観光客の増加が続くならば、同社の中期的な収益拡大も見込めます。実は、同社は新たなインバウンド関連銘柄として評価されていると考えられましょう。



■客単価の前年割れが続いていることは懸念材料



一方で、懸念すべき点も少なくありません。まず、同社の客単価の低迷が続いていることです。



同社が公表する月次データでは、既存店客単価が2016年3月から今年8月まで18カ月連続の前年割れとなっています。外食企業では一番重要な指標である客単価の上昇が見込めないということは、今後の大きな懸念材料と言えましょう。



また、同社のHPに掲載されたニュースによれば、10月3日は「社内行事のため」に全店舗の約3分の1が臨時休業するようです。詳しい事情はわかりませんが、前述した通り、書き入れ時かもしれない時期に休業するのは腑に落ちません。



直近の株価上昇がやや急ピッチであるため、中国の大型連休が終わると、いったんは株価調整局面があるかもしれません。しかし、今後の収益拡大が見込める環境が続くと考えられるため、引き続き注目したい銘柄の1つです。