遅いうえに、道路上を走るため自動車にとっては邪魔者……そうしたイメージを覆す路面電車が福井県にあります。普通の電車は停まるのに、路面電車は高速で通過するという駅も。

どういうことなのでしょうか。

ゆっくり走るイメージを覆す路面電車とは

 路面電車というと、おもに道路上に敷設された併用軌道を用いるため、自動車などとともにゆっくり走るイメージがあるかもしれません。事実、それゆえに自動車交通の邪魔となり、消えていった路面電車は各地にあります。

 しかし、そんなイメージを覆し、電車と同じようなスピードで走り、さらには普通電車が停車する駅を高速で通過する路面電車が福井県に存在すると聞き、現地へ行ってみました。

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福井鉄道のF1000形超低床電車「FUKURAM」。3両固定編成で編成長は約27mある(2020年3月、乗りものニュース編集部撮影)。

 路面電車が高速で走るのは、福井県にあるえちぜん鉄道三国芦原線。この路線は県都福井市の中心部と日本海に面した港町、坂井市三国町にある三国港駅を結ぶ約25kmの路線です。

 三国芦原線は途中の田原町駅(福井市)で福井鉄道福武線と接続しています。同線の福井市中心部区間は事実上の路面電車であり、この接続によって両社は相互乗り入れを行なっているため、これから先の区間は路面電車がいわゆる普通電車の専用軌道を走ります。

 よって、路面電車が高速走行するといっても、走るのは市街地のなかで自動車とともに走る併用軌道の区間ではなく、郊外に延びる専用区間になります。

路面電車といえど最高速度70km/hを発揮

 福井鉄道ならびにえちぜん鉄道の超低床電車が走るのは、田原町駅(福井市)と鷲塚針原駅(福井市)のあいだです。

途中に5駅(このほかに臨時駅ひとつ)ありますが、鷲塚針原駅のひとつ手前にある中角駅は、超低床電車、いわゆる路面電車が停まらず高速で通過してしまいます 。

 中角駅は九頭竜川の堤防至近にあるため、堤防と同じ高さの盛り土の上に作られています。田原町~鷲塚針原駅間のほとんどの駅は2016(平成28)年3月の相互乗り入れに合わせて低床ホームが設置されたものの、当駅だけはそのような工事がされなかったため、超低床電車が停車してもホームとの間の段差が大きすぎて乗降が難しいことから、通過の措置が取られているようです。

福井の「やけに速い路面電車」 駅を高速で通過 現地でわかった停まらない理由とは

九頭竜川にかかる鉄橋をわたる福井鉄道のF1000形超低床電車「FUKURAM」(2020年9月、柘植優介撮影)。

 そのため、えちぜん鉄道の普通電車は停車するのに、福井鉄道に乗り入れる路面電車は通過するという不思議な運行パターンができたそう。なお路面電車といえど、福井鉄道が所有するF1000形(愛称:FUKURAM)やえちぜん鉄道所有のL形(愛称:Ki-bo)は最高速度約70km/hまで出すことが可能なため、普通電車のダイヤに影響を与えることなく相互乗り入れできます。

 ちなみに隣の鷲塚針原駅には、相互乗り入れに合わせて折り返し専用線ならびに専用の低床ホームが新たに造られています。そこではえちぜん鉄道が所有する普通電車と、福井鉄道所有の超低床車の並びも見ることができます。