専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第230回

 日本で開催されたラグビーワールドカップは、超盛り上がりましたなぁ~。2002年に日本で開催されたサッカーワールドカップぐらい、日本中が熱狂し、もはや国民的なイベントになったかのような盛況ぶりでした。

誠に羨ましい限りです。

 うちの母校、宮城県石巻高校はその昔、花園ラグビー場で開催される全国高等学校ラグビーフットボール大会への出場をかけた、地区大会の決勝に進出したことがあります。高校3年の秋、授業をサボって、決勝の会場となった隣の山形県まで応援に行きました。

 担任の先生は、応援に行くのを黙認してくれて「気をつけて」と言ってくれたけど、残念ながら母校は敗退。高校ラグビー界の”甲子園”花園出場の夢は、露と消えたのでした。あれから44年……って、いつの話だっちゅうの。
とにかく、ラグビーがこんだけメジャーになって、非常にうれしいです。

 うれしいついでに、アマチュアゴルファーとしては、嫉妬しちゃいます。ゴルフのほうがメジャーだと思っていたのに、ササーッと抜かれてしまいましたから。いくら渋野日向子選手が人気とはいえ、瞬間視聴率50%超えは無理ですもん。

 ということで、ラグビーの成功を冷静に分析し、ゴルフ界にそのエッセンスを導入したらいいのではないかと、あれこれ考えてみました。

(1)政治主導の展開
 森喜朗元首相が、日本ラグビー協会の会長(2005年~2015年)をやっていたことは大きいです。
森さんは首相をやっていた時以上に、精力的に活動していましたしね。

 元首相がトップとなれば、国家レベルの参入が可能となり、予算もつきやすくなります。実際、スタジアムの建設や、ワールドカップの招致など、大きなプロジェクトを成功させていますから、大したものです。

 これを、ゴルフに置き換えれば、答えはすぐに出ます。安倍晋三首相があと2~3年で総理を引退するはずですから、その際にはJGA(日本ゴルフ協会)の会長になってもらえばいいのです。

 アメリカでは、大統領クラスの著名な政治家とゴルフ界の関わりは深いです。

たとえば、”パパ・ブッシュ”ことジョージ・H・W・ブッシュ米元大統領の家系は、USGA(全米ゴルフ協会)に長く関与していました。銀行家でビジネスマンの祖父がUSGAの会長になっているし、”パパ・ブッシュ”の父プレスコット・ブッシュ氏も、政治家になる前にUSGAの会長に就任しています。

 メジャースポーツの発展は、政治力がないと実現できません。

 スポーツと政治を結びつける話は、別に今に始まった話ではありません。都市伝説ではありますが、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領は、オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブのメンバーの力によって、大統領になった――そういう噂がまことしやかに流れています。

 オーガスタのメンバーの推挙により、同クラブのメンバーになったアイゼンハワー氏。
そこから、メンバーの尽力によってロビー活動が始まり、大統領選時の選挙対策室は、オーガスタにあったとも言われています。

 日本も、ゴルフ好きの安倍さんがJGA会長となり、ロビー活動をやって、日本オープンを世界の準メジャー競技に格上げする――そんなことを実現させてほしいです。

 現在、JGAは何をやっているのか、外からではよくわかりません。そもそも政治的な動きができるのか? たぶん無理でしょう。コースレート算出で小銭を稼いでいることぐらいしか、知りませんしね。

 ただ、日本オープンなどの大きな大会の主催者であることは確かです。


 じゃあ、日本オープンをでっかくして、盛り上げましょうよ。

 優勝賞金は、なんとかスポンサーをつけて、最低でも1億5000万円はほしいです。先日、日本で初めて開催された米PGAツアー、ZOZO CHAMPIONSHIPの優勝賞金がおよそ2億円ですから。それぐらいじゃないと、海外の主力選手は来ないでしょう。

 海外有名選手の招聘は、最低でも20人。これも、スポンサーによるCM撮りなどのアルバイトをセッティングすれば、選手もいい仕事だと思って日本にやって来るでしょう。


 スケジュールも、PGAやUSGAなどと協議して、PGAツアーと被らないように根回しをする。これぐらいやったら、日本のゴルフ界も大いに賑わうんじゃないですか。

(2)国家プロジェクトによる選手育成
 日本人選手は「海外で通用する選手が少ない」と、以前から言われています。今は、男子でそれなりの結果を残しているのは、松山英樹選手ひとりだけ。これが、日本の大学ゴルフ部出身の限界だと思います。

 卒業後は、自分で腕を磨くわけでしょ。それじゃあ、ムラが出るし、スキルアップが保証されるわけではありません。

 建前は「オリンピック出場を目指して」で構わないので、国家プロジェクトによって選手を育てていくことが急務だと思います。海外から有名なコーチを招聘して、10代のうちから、将来性のある選手を指導していくのです。

 そういうアカデミーを国家予算で作り、門戸を広げて、海外からの留学生も受け入れるとかもアリですね。

 選手育成のための、専門コースも造ったほうがいいでしょう。沖縄に、世界標準の全長7400ヤード、バミューダ芝のコースを併設した施設を建設。そこで合宿したり、寮生活したりするのもいいんじゃないですか。

 ゴルフは、個人でやっているから、成績が伸びないと思うんですよ。国を挙げて、選手を育成すべきです。今や、そういう時代がやって来たと思います。

(3)『ZOZO CHAMPIONSHIP』は正解

 アメリカPGAツアーの日本誘致は、正解です。ZOZOの社長を退任した前澤友作さんが残した最後の偉業は、これです。

 海外のメジャーな選手が毎年日本にやって来て、その実力を目の当たりにする――これって、とても大事なことです。

 また、日本開催なら”地の利”もあって、ハイレベルな戦いのなかでの、日本人選手の活躍も見込めます。かつて、ジャンボ尾崎選手は「海外では弱い」みたいなことを言われていましたけど、日本開催のトーナメントでは、海外から実力者がやって来ても、かなりの確率で勝っていました。これぞ、”ホームの強み”ってやつです。

 ラグビーワールドカップでも、日本は”ホームの強み”を発揮できたじゃないですか。7万人が目の前で応援してくれるから、そのあと押しを受けて、日本は快進撃を見せました。結果、大会自体もすごく盛り上がりました。

 ゴルフでも、PGAツアーの試合を日本でもっと開催すれば、世界最高峰の舞台であっても、日本人選手が活躍する可能性は大いにあります。そうすれば、一段と注目度が増すと思うんです。

 とにかく、そういう機会が増えれば、日本の選手たちにとって、大いなる刺激となります。ラグビーやサッカー、野球などは、海外との交流が盛んですが、ゴルフは選手の出入りは自由だけど、日本ツアーが主流で、実際には海外との交流はまだまだ少ないんですよね……。


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付け焼き刃ではなく、立派なアカデミーが創設されるといいんですけどね...

(4)英語をマスターさせる
 世界に羽ばたくには、ゴルフの技術向上も大事ですが、英語を流暢に喋れるようにならないと、話になりません。

 ラグビーは外国人選手も多数おり、日本代表とはいえ、チーム内では英語が飛び交っています。ヘッドコーチが英語圏の人ですし、そもそも英国のスポーツなのだから、英語で指示がなされるのも当然でしょう。こういう環境は大事です。

 結局、多くのメジャースポーツは英語圏で生まれています。だから、スポーツを覚える前に、英語を覚えろ――突き詰めると、そうなります。

 世界的に有名になって、英語でインタビューを受けてこそ、世界的なスーパースターと言えるのではないでしょうか。

 そういう成功したときのイメージを思い浮かべることができる人は、大成します。「まずは英会話を覚えよう」って、なんだか駅前の英語教室の触れ込みみたいになりましたが、メジャースポーツで成功を目指す人は、そこまで見込んでいてほしいですね。