筒香嘉智が再びメジャーでのチャンスを掴んだ。

 現地時間8月14日、筒香はロサンゼルス・ドジャース傘下の3Aオクラホマシティ・ドジャースから自由契約になった。

筒香にとってメジャーでは2回目の放出であった。この報道が出ると、日本のメディアは、「今度こそ日本の球団が獲得に乗り出すのでは」と予想。しかし、筒香を獲得したのは、メジャー球団のピッツバーグ・パイレーツであった。それもメジャー契約でだ。

筒香嘉智は活躍してもしなくても「構わない」。パイレーツ専門メ...の画像はこちら >>

パイレーツと契約し、結果も残している筒香だが......

 2年目の筒香はシーズン序盤からなかなか結果が出なかった。最初に所属していたタンパベイ・レイズでは、26試合の出場で打率.167と低迷。
本塁打は0本で、長打は二塁打4本と、期待されていた長打力は発揮されなかった。

 5月にレイズからDFA(事実上の戦力外通告)を受けた筒香は、ドジャースにトレードで移籍した。ドジャースが筒香を獲得したその理由は、筒香が複数ポジションを守れたからだ。主力選手のケガが相次ぎ、選手のやりくりに苦労していたドジャースにはバックアップ選手が必要だったのである。

 しかも、ドジャースは筒香に対し、ほぼ最低保障年俸57万500ドル(約6200万円)を負担するのみで、レイズが筒香の年俸700万ドルの残りを負担するという好条件でもあった。

 もちろんドジャースは筒香の打力にも期待していたが、結局ドジャースでは12試合に出場し、25打席の打率は.120、本塁打を含む長打は0と結果を出せなかった。
さらに6月9日には、筒香は右太ももの張りで10日間の負傷者リストに入った。調整のためマイナーに送られることになったが、その間に主力選手が戦列に復帰したこともあり、7月7日にメジャー出場の前提となる40人枠から外されてしまった。

 このように筒香はレイズ、ドジャースから"打撃は期待外れ"との厳しい評価を受けた。では、なぜそんな筒香をパイレーツは獲得したのか。それには、パイレーツのチーム事情が大きく関わっている。

 パイレーツの地元紙『ピッツバーグ・ポストガゼット』のジェイソン・マッケイ記者にチーム事情について尋ねると次のように返答した。



「今季、チームの打撃力はほとんどがメジャー最下位、あるいは最下位近くにいます」

 今季のパイレーツには長打力が圧倒的に欠けている。8月17日時点の成績によれば、チーム打率は.235でナ・リーグでは11位タイではあるものの、チーム全体の長打率は.361、ホームランは92本、得点は404点とすべてにおいて最下位で、得点力不足に苦しんでいる。

 また、マッケイ記者は「パイレーツは若いチームで、コンスタントに結果が残せる選手が必要だった」とチームの欠点を述べ、それを埋めるため、筒香の打力が求められたのではと予想する。

 実際、『ピッツバーグ・ポストガゼット』は、筒香の入団が発表されたその日、パイレーツのデレック・シェルトン監督のコメントを次のように紹介している。

「彼の打球にインパクトがあるところが気に入っている。(ドジャースの)マイナーでは明らかな改善がみられた。
そんな彼に私たちは興味を持ち、ここピッツバーグで機会を与えたいと考えた」

 筒香は6月17日から8月13日までの間、ドジャース傘下で43試合に出場し、打率.257、10本塁打、32打点という成績を残している。また、筒香のSLG(長打率)成績を見ると、6月は.333、7月は.533、そして8月は.677と月を追うごとに上昇していた。
 
 マイナーで試合を重ねる毎に、その打撃力を徐々に取り戻していた筒香は、長打力と得点力に欠けるパイレーツにとって魅力的だった。また、獲得条件もドジャースがレイズから受けたものと同様、レイズが引き続き筒香の残りの年俸を負担すると報道されている。つまり、チームの財政的にもありがたいものといえる。

 そんなチームの期待に応えるように、筒香はパイレーツへの移籍が正式発表された8月16日、敵地で行なわれた古巣ドジャース戦の9回に代打で出場し、相手チーム守護神ケンリー・ジャンセンの外角高めの95.8マイル(約154キロ)のシンカーを捉え、レフト線への二塁打を放った。

また翌17日には「4番・一塁手」でスタメン出場。この試合でも9回の第4打席で、再びジャンセンの92.4マイル(約149キロ)のカットボールをレフト前への二塁打にし、実力をアピールした。

 しかし、筒香はこれからもパイレーツが期待するような活躍を続けられるかはわからない。それも、「筒香は速球に弱い」という指摘がまだ解消されていないからだ。

 地元スポーツメディア『DK・ピッツバーグ・スポーツ』は、「筒香には速球に弱いという問題がある」と指摘し、「筒香に投げられた球のうち62.9%は速球であった」と述べている。この2年間、相手チームは筒香の弱点を容赦なく突いている。
そして、この配球はパイレーツに移籍しても変わらないだろう。

 前述のドジャース戦では2試合とも速球を捉えて長打にしてはいるが、筒香はマイナーで徹底的に速球への対策を講じていたわけではない。

 同記事は、「マイナー時代の筒香の映像を見る限りアプローチに大きな変化はない」と指摘し、筒香本人も、「大きくは変えていない」と会見で述べている。この証言もあったことで現地のメディアは、「筒香は自身の弱点を残したままメジャーに戻り、また結果を出せずに終わるのではないか」と厳しく見ている。現地メディアの見解からは、期待の声があるとは言い難い。

 本当にパイレーツは筒香に期待しているのだろうか。あるメディアは、筒香獲得について次のように興味深い見解を述べている。

「パイレーツはサイコロを振った」

 こう例えるのは、パイレーツ専門メディア『バックス・ダグアウト』だ。同記事では「筒香の獲得が失敗だったとしても、チームの給与的にも損失はない」とも述べられており、筒香が活躍してもしなくても「どちらでも構わない」という筆者の見解が述べられている。

 結局のところ筒香は、過去に在籍したチームに比べると過度に期待をされているわけではないようだ。それでもメジャーにおいて、筒香が厳しい立場にいることは変わらない。また、パイレーツ首脳陣も筒香の打力を買っているのは事実であり、残りのシーズンの中でその期待に応える必要がある。

 現地メディアからの期待が薄くとも、パイレーツから与えられたチャンスの中で結果を出していくしかない。