国連協定規則で標準と識別できる色が条件となっている

日本の道路は舗装化が進み、昔のように年中パンクを直しているという時代ではなくなった。筆者も運転歴は30年を超えるが、公道でパンクしたことは二度だけだ。とはいえ、万が一に備えてパンクに対応できる手段を持っておくことはクルマの条件として決まっている。



理想的なのは標準装備されているのと同じサイズのスペアタイヤを積んでおくことで、これまた1980年代まではコンパクトカーでも標準サイズのタイヤを積んでいることは珍しくなかった。いまでもジムニーなど背面にタイヤを積んでいるクロカン4WDにおいては標準サイズのスペアタイヤを備えていることは珍しくない。



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最近増えているのがパンク修理キットを積んでおくこと。タイヤのなかに注入することで空気漏れを防ぐパンク修理剤と、適正な空気圧にするための電動ポンプがセットになっている。これは軽量かつコンパクトなのが利点で、ハイブリッドカーなどラゲッジスペースの余裕が少ないモデルから普及をはじめ、いまや主流となりつつある。



国際的なルールで決まっていた! 応急用タイヤのホイールに「黄色」が使われるワケ



とはいえ、多くのクルマはテンパータイヤとも呼ばれる薄くて若干小径な応急用スペアタイヤを積んでいることが多いのではないだろうか。

ラゲッジの下に収められていたり、床下に吊り下げられていたりする。そして、このテンパータイヤのホイールは黄色であるというイメージがある。黄色でなくとも、ブラックのホイールにイエローのラインを入れることでテンパータイヤを明確にわかるようにしていることが多い。



はたして、テンパータイヤのホイールが黄色なのは何かで決まっているのだろうか?



応急用と識別できる「色」がルール化されている!

結論からいえば、黄色のホイールを使うことは決まっていない。だが、実質的にクルマの世界統一ルールとなっている国連協定規則には次のような文言でテンパータイヤに使うホイールの条件が記されている(日本語訳を引用)。



“応急用のために車両に装着した際には、ホイール及び/又はタイヤの外側表面は、標準ユニットの色とは明らかに異なる識別色又はカラーパターンとする。

応急用スペアユニットにホイールカバーを取付けることができる場合においては、このホイールカバーによって識別色又はカラーパターンが不明瞭にならないものとする。”



具体的に黄色とは記されていないが、『明らかに異なる識別色』または『カラーパターン』とすることが明示されているのだ。標準装着のホイールといえば、シルバーやブラックが多い。そうした色と明らかに異なる識別色として選ばれたのが黄色で、それを多くのメーカーが採用したことで、テンパータイヤ=黄色のホイールというイメージが強くなったといえる。逆にいうと明確にテンパータイヤということが伝わるのであれば、ルール上は黄色でなくても構わないのだ。



国際的なルールで決まっていた! 応急用タイヤのホイールに「黄色」が使われるワケ



ちなみに、この国連協定規則ではテンパータイヤの条件として、『車両の許容限度軸重の最大値の少なくとも1/2とする』こと、『応急用スペアユニットの設計速度は、少なくとも120km/hとする』ことも定められている。

テンパータイヤで高速走行するのは推奨できるものではないが、日本の公道においては制限速度・指定速度で走行することが可能なだけのポテンシャルを持っているのだ。



ただし、標準タイヤよりも細いサイズでこうした条件を満たすためにテンパータイヤの指定空気圧は、たいてい420kPaと非常に高くなっている。エアが足りない状態では、こうした条件を満たせないともいえるわけで、テンパータイヤに履き替えたときには十分に気を付けて走行したい。また、使わないと思っていても定期的にテンパータイヤの空気圧を確かめておくのもオーナーの務めといえるだろう。



今回の記事を見て、自分のクルマはどんなスペアタイヤを積んでいるのか気になったというならば、ホイールの色を確認するだけでなく、是非とも空気圧のチェックも行なってほしい。