大阪の名物モミジは、土産物屋に咲く
本物のモミジと見まごうばかり? なモミジの天ぷら。年中絶賛販売中だが、やはり秋が一番忙しく、こんな感じで店頭では常に揚げまくり状態。
「関西モミジの名所」といわれると、思い出すのは京都や奈良といった古都の面々。
しかし大阪にもモミジの名所と呼ばれる場所は多い。


その中でも大阪北部に位置する箕面は、都会の喧噪から離れたモミジスポット。
実はここ、見るモミジもいいけど美味しい食べ物も……という、花より団子派の人にも受けているスポットなのだ。

その秘密は土産物店にある。
訪れてみると、行楽地とはほど遠い油の香りがフンワリ。ハイキングコースまで続く道およそ400メートルの道のりに、15件前後の「天ぷら」の文字が連なっていた。
どの店でも店頭で店員さんが無心に揚げものを続けている。
油の香りが充満するはずだ。

こんなに揚げても良いのか、というくらい延々揚げ続けている物体。それが箕面名物「モミジの天ぷら」である。
作成方法は、1年ほど前に収穫したモミジを塩漬けし、衣を付けて揚げるだけ。この時代にあって工業化されない、完全手作り品だ。

皮の味は懐かしいカリントウ系の甘さで、囓ってみると中には薄いモミジの姿。
形も何となくモミジ型で、なかなかに情緒ある一品なのだ。
値段は小さい袋で300円。保存方法にもよるが、1月ほどは日持ちするらしい。いかにも観光地然とした雰囲気だが、天ぷらの歴史は意外に深く起源はおよそ1300年前。箕面のモミジの美しさに感激した役行者(えんのぎょうじゃ)が、灯明を使って揚げてみたのが始まりという。

モミジ天を販売し続けて3代目というお婆ちゃんに美味しい食べ方を尋ねてみたところ、風景を眺めつつそのまま囓るのが一番、とのこと。

しかし相手は油もの。食べ過ぎると飽きるのではないかと心配したが、少し冷やして食べるとちょっと変わった味わいになり飽きがこないのだとか。
ちなみにおばあちゃんオススメの食べ方は、「お湯に少し浸けて柔らかくするやり方」だそう。
「私くらいになると歯が弱くてあかんからね〜」とのことだが、毎日モミジの天ぷらを食べているおかげか、入れ歯にもならず健康的。モミジの天ぷらは、この辺りのお婆ちゃんの元気の秘密なのかもしれない。

今年は紅葉が少し遅れ気味。
とは言いつつそろそろ良い季節に突入で、箕面も賑わう頃合いだ。
忙しくてモミジ狩りに行けない人は、食べるモミジでモミジ狩りをどうぞ。
(のなかなおみ)