モーリタニアの首都ヌアクショットから南東に55キロ離れた場所に、中国が建設を支援したモーリタニア畜産技術実証センターがある。ここでは「巨菌草」やムラサキウマゴヤシなど作物が生い茂り、広大な砂漠の中に生き生きとしたオアシスを育んでいる。


 
センターの試験田では、張洪恩主任と地元の労働者が巨菌草の挿し芽苗の成長数値を測定している。巨菌草は中国から伝わり、多くの国の人々から親しみを込めて「中国草」「幸福草」と呼ばれ、今ではサハラ砂漠で大きく成長しつつある。
 
モーリタニアは国土の80%以上がサハラ砂漠に覆われ、雨が少なく乾燥し、気温が高い。牛や羊、ラクダの飼育で長い歴史があり、農村人口の収入の70%が畜産業による。だが、砂漠化、半砂漠化した草原は生態系が脆弱で、家畜に与える大量の牧草需要に応えることができない。過度の放牧も生態系の退化を深刻化させ、草原の環境収容力が年々低下しており、地元民の生活手段や経済発展は厳しい試練に直面している。
 
牧草は牧畜業の発展の基盤である。モーリタニア畜産技術実証センター技術協力プロジェクトは2017年に発足し、中国寧夏回族自治区の企業が建設と運営を担う。農業技術者の努力により、ムラサキウマゴヤシの導入と大規模栽培に成功し、地元の飼料供給源問題の解決を助けた。その後、多くの種類の牧草が次々にサハラ砂漠に導入され、普及が行われた。現在、センターの牧草栽培面積は約千ムー(約67ヘクタール)を安定して維持しており、中国の成熟した節水・かんがい設備と技術もここで実証・応用が行われている。だが、専門家らは歩みを止めることなく、試験と模索を続けている。

 
張氏は昨年10月、寧夏から巨菌草の種苗をスーツケースに詰めてモーリタニアに持ち帰り、栽培試験を始めた。多くの国に幸福をもたらす「中国草」が砂漠の地にあるアフリカの国により多くの緑と希望をもたらすことに期待を寄せている。
 
「菌草」は木の代わりに草を使うキノコ栽培に用いられる草本植物で、中国国家菌草工程技術研究センターの首席科学者、林占熺氏が研究チームを率い、数十年をかけて開発した。収量が多く、質が良く、根系が発達し、痩せた土地でも育ち、耐寒性や耐塩性、耐アルカリ性などの特徴を持つ。一部の菌草は株が大きくて収量が多く、適応力が高いため、大規模に栽培することで土壌の流失を防ぎ、飼料や有機肥料などに利用することもできる。巨菌草はその中でも優れた品種の一つとなっている。
 
中国の菌草技術は1990年代末に海外進出を始め、世界の貧困削減事業に中国独自の手法と知恵で貢献した。現在、菌草技術は研修や教育、協力、援助などの形でアフリカの多くの国に定着している。
 
張氏は「菌草は良質な牧草であり、砂漠化の予防・対策に適した植物でもある。砂漠化が深刻なモーリタニアでの栽培は将来性が大きい。これからも引き続き菌草の新しい品種を導入して牛や羊、ラクダの飼料庫を満たし、サハラ砂漠に緑を増やしていく」と述べた。(新華社銀川)

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