来年に迫った東京五輪への準備が着々と進んでいる。チケット申し込みが締め切られ、聖火ランナーの募集が開始された。
ゴルフの世界では、なかなか決まらなかった女子コーチが26日に発表されるというリリースが出たばかりだ。
リオ五輪のゴルフ競技を写真で振り返る!【フォトギャラリー】
ただし、コーチが決まっても選手はギリギリまで決まらない。前回のリオ同様、大会約2年前の6月から、大会約1か月半前の2020年6月30日(男子は23日)までの2年間の成績が基準となる。この期間の世界(女子はロレックス)ランキングポイントがオリンピックランキングだ。
ランキング15位までに入れば、各国最大4人までが出場できるが、それ以外は60位以内で2人まで。現状では、6位の畑岡奈紗と25位の鈴木愛(6月18日付け)が、候補となっている。

最終決定まであと1年ちょっと。ロレックスランキング上位選手の多いフィールドでプレーして結果を残せれば、よりポイントが稼げるだけに、米ツアーを主戦場にして優勝争いを繰り広げる畑岡にアドバンテージがあるのはまちがいない。日本ツアーで戦う選手がもう1枠を争うという形になりそうだが、こうなってくるとやはりメジャーで上位に入れば、大きくポイントを稼げることになる。
オリンピックランキングとしては60位までしか発表されていないが、今年の全米女子オープンで単独首位発進し、5位に終わった比嘉真美子などは大きくポイントを稼いでおり、今後の活躍次第では鈴木に迫る可能性もある。
国内でコツコツポイントを稼ぐのももちろん大切だが、それ以上にメジャー出場権を獲得し、そこで上位に入ることが、確実に五輪出場権を獲得する方法だ。
一方で、開催時期や場所、選手選出の方法についてはどうしても大きな疑問が残る。
さすがに大会まで約1年となった今、決まってしまったものを変えることはできないだろうが、各国ツアーが確立しているゴルフでは、4年に1度のオリンピックだけにすべてを賭けるのは難しいからだ。女子は年に5回(男子は4回)メジャトーナメントがあり、それ以外もシーズン中は毎週試合がある。その中で、ギリギリまで出場できるかどうかわからない上、いつまでゴルフ競技が行われるのかも4年に1度のオリンピックを、どれだけ目標にすることができるのか。
その時、最も調子のいい選手を出す、という意味で、大会直前の選手決定なのかもしれないが、それにしても決定が遅すぎる。今回、女子のコーチが発表になるが、そもそも選手も決まらず、選手は実戦で忙しいと言うのに、コーチに一体何ができるのか。日頃から個々にコーチがついているのが当たり前の昨今の状況では、技術的に選手をいじるわけにもいかない。
本番での戦い方や、コースへの対応など、できることは限られている。
112年ぶりにゴルフが五輪競技に復活した3年前のリオでは、出場を辞退するトッププレーヤーが相次いだ。松山英樹もその一人だ。治安の問題や健康上の不安、スケジュール調整がつかないなど、理由は様々だったが、ゴルフのトッププレーヤーすべてが五輪を目指しているわけではないということが明らかになった出来事だった。
リオに続いて行われる東京大会は、もう少し選手が出場の方向に傾いているように見えるが、世界のゴルフ界はもう一度「何のためにオリンピック競技にしようとしたのか」を、改めて考え直した方がいい。
WGC(World Golf Council)と言う組織をIGF(International Golf Federation)と言う組織に改編し、世界のトッププレーヤーをアンバサダーにして五輪競技を目指したところまでは悪くなかった。
「ゴルフをオリンピック、パラリンピック競技にすること」「世界のゴルフの発展を勧めること」をIGFは掲げている。
しかし、パラリンピックに関しては復活2度目の東京でもゴルフが行われることはない。

会場についても、東京大会では、プレーへの敷居が高い上、猛暑が予想され、ギャラリーが安全に観戦できるとは言い難い霞ヶ関GCを選ぶあたり、ゴルフの発展を勧めているとは到底思えない。
五輪を目標に頑張る選手がいる一方で、出場を辞退する選手も多い現実をどう受け止め、今後にどう生かすのか。大会終了後、五輪のIFであるIGF、その核となるR&AとUSGAはもちろんのこと、東京大会のNF(National Federation)である日本ゴルフ協会(JGA)、そして選手を派遣する側でもある各国の男女ツアーは大事な作業を怠ってはならない。詳細な大会の分析、反省、そして責任追及。
五輪招致と開催まではお祭り気分でいいかもしれないが、その後なくして将来はない。(文・小川淳子)


【関連ニュース】
■五輪ゴルフは団体戦があればもっと良くなる【申ジエのリオ総括】
■スロープレー撲滅を世界レベルで【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】
■本当にゴルフ界は女性差別をやめたのか!?【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】
■プレー完遂への努力が足りない日本【小川淳子の女子リポート“光と影”】
■第1回大会にリステリン開発者も出場?五輪ゴルフ競技豆知識