全英オープン 事前情報◇17日◇ロイヤルポートラッシュGC(北アイルランド)◇7344ヤード・パー71>
1951年以来68年ぶりに「全英オープン」が開催される、北アイルランドのロイヤルポートラッシュGC。事前には、多くの選手から「情報はない」という声も多く聞かれたこのリンクスコースの正体は、いったいどのようなものだろうか?
難関16番の右サイドの“崖”【写真】
開幕2日前の16日に行われた公式記者会見に出席したタイガー・ウッズ(米国)は、“謎に包まれた”コースの印象を聞かれると、上機嫌で次のように答えた。

「本当に素晴らしいコース。これほど長期間にわたり全英が戻ってこなかったのに、とても驚いている。トリッキーな場所もあるけど、純粋に素晴らしいコースだよ」
実際にコースを歩くと、これまで全英オープンを開催してきた多くのリンクスコースとはイメージが異なり、アップダウンがあり、グリーン周りのアンジュレーションに富んでいるという印象を強く持つ。ウッズは、「これまでの全英との違いは、グリーン周りでボールが戻ってくる場所が多いところ。“こぶ”に当てて転がす、『バンプ・アンド・ラン』のチッピングショットや、パターで上り坂を登らせていく場面も多くなるはずだ」とその攻略法をイメージする。
またフェアウェイやグリーン周りといった場所の地面が硬いのは、他のリンクスと同様。
そのため、アイアンの底を削ったり、ウェッジのバンス角を減らすなど、クラブが弾かれない工夫をする選手の姿も見かける。日本勢でも、「ウェッジのバンス角を、国内では10度だけど、5度にしてきた」という藤本佳則や、「SWのバンスを抑え、アイアンの底を削った」と話す浅地洋佑のように、リンクス対策を練って現地入りした選手も少なくない。
今年4月22日に、大会の主催のR&Aが都内で行った会見では、「総距離(7344ヤード・パー71)はメジャー大会として長いというわけではないが、ショットの正確性が要求される」と、このコースの特徴を説明。上記の理由に加え、フェアウェイも狭いことが、その言葉の背景にある。また、バンカーの数は、全英オープン史上最少の59個。ポットバンカーもあるが、どれもそれほど深くはない。
だが選手からすると「少ないけど、すごく効いている。ティショットの時に気になるバンカーは多い」(藤本)と効果的に配置される印象を受けるようだ。
会見でR&Aがキーホールとして挙げたうちの一つに、“CALAMITY CORNER(災いのコーナー)”と名付けられた、16番パー3(236ヤード)がある。ティイングエリアからグリーンまでが極端に狭く、お互いが分離しているようにも見える。さらにグリーン右に外すと深いブッシュに覆われた崖が待ち受ける名物ホールだ。落としどころを間違えると大きなハンデを追ううえに、風も吹き抜けるホールのため強風のなかで立ち向かうと、スリルはさらに増す。

地元・北アイルランド出身のローリー・マキロイは、幼少時からプレーしてきたこのコースについて、「僕が育っていくうえで、ロイヤルポートラッシュは大切な一部」と話す。「その時とは大きくコースが変わっている」というが、16歳の時にはここで「61」をマークした経験も持つ。そのマキロイは注意すべきポイントとして、以下のことを挙げる。
「横からの風が多くなると非常にタフな顔を見せてくる。コース自体がドッグレッグのようなホールも多い。横に打たなくてはいけないところに、加えて横風が入ってくる。
大きなカギを握るのはフェアウェイバンカーとラフ。たとえ2打目を長く残してしまったとしても、これらは絶対に避けなければいけない。ラフもこの2週間で一気に伸びているから、ラインから外れてしまうとスコアメイクが苦しくなるはずだ」
地元の大きな期待を背負う2014年の全英チャンプは、「この場所で全英が開催されるなんて、思ってもみなかった。世界のトップゴルファーが立っているのを見て不思議な感覚だ」と、特別な思いを胸に本番のコースに立つ。
16日までの穏やかな天候から一転、開幕前日の17日には強い風と雨に見舞われたロイヤルポートラッシュ。今平周吾の「(風の影響で前日までと)50ヤードくらい違う場所もあった」という話を聞いても、天候によってコースの気性は荒くなる。
この4日間でどのようなドラマが生み出されるのか?“68年ぶりの戦い”がいよいよ幕を開ける。(文・間宮輝憲)


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