3日目を終えて賞金ランキング2位タイの申ジエ(韓国)が2位タイ、同1位の鈴木愛と同3位の渋野日向子が7位タイ。優勝争い=女王争いの様相を呈した「大王製紙エリエールレディス」を制したのは渋野だった。
同組でマッチレースを繰り広げ、単独2位となった鈴木、そしてジエは終盤の連続ダボが響いて結局11位タイと崩れた。
渋野日向子はシックな黒ドレス【前夜祭フォトギャラリー】
結果3人が賞金女王となる可能性を残して最終戦「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」へと挑む。予選落ちから優勝を飾った渋野は何が変わったのか。もっとも女王に近いのは誰なのか。上田桃子らのコーチを務める辻村明志氏が解説する。
■取り戻した“壁ドン”パット 4メートルオーバーしても動じない
前週「伊藤園レディス」では3月の「アクサレディス」以来となる予選落ち。
「ショックです…。ちょっと泣きそう…」と涙を拭いながら、「情けないの一言。まだまだだなって思い知らされました。もう賞金女王って私の口からは言ってはいけない」とまで話していた。
それ以上に深刻だったのが、持ち前の強気のパッティングが失われていたこと。初日のホールアウト後に「今日は出だしの10番からしっかりパットが打てていました。
ほとんどのホールでショートすることはなかった。やっぱりバーディパットはショートしたくないですからね」。グリーンの重さもあるが、ショートする場面が目立った前週がうそのように攻めの姿勢を貫いた。これが大きく優勝に影響したと辻村氏。
「予選ラウンドに同じ組で回った小祝さんが『どこからでも入りそう』と話していたように、渋野さんらしいパッティングが戻ってきていました。たとえ4メートルオーバーしても動じず積極的に狙っていく。
球聖ボビー・ジョーンズがいうように『ネバーアップ、ネバーイン』。届かなければ入りませんし、積極的な3パットを恐れては バーディ合戦についていけませんし、ラインの読みがよく 出球の合っている渋野さんなら例えボギーにしてもそれ以上のバーディ数で圧倒できる。」(辻村氏)
そんな渋野の強気のタッチのパッティングはパンチが入っているわけではないと解説する。
1.体を流さず
2.体幹、腹筋を使ってヘッドを出す
3.ボールを打ち抜き、出きったヘッドは体幹、腹筋とともに後方に戻る
この3つができているからだ。
「渋野さんのパッティングストロークでの特徴は、フォロースルーでヘッドが『グゥン』と加速し 『スゥー』と戻るリバウンド型です。ヘッドを出しっぱなしにしていない点に注目です。そして決して手で戻していないところも見てください。
渋野さんは朝に青木翔コーチ、もしくはキャディさんに左手をつないでもらって右手だけのパッティング練習をやっています。あの左手を持ってもらい、右手片手打ちドリルは 、体の中の張りを意識した『ターゲットへ攻める所は攻める、止める所は止める』の確認作業だと思います」(辻村氏)
グリーン上も素晴らしかったが、ショット、そして気持ちの部分でも強さを感じた。
「ショットもすごくタイミングがあっていました。見ていてフェースの球の乗りがすごく良くなりましたね。ここ数試合結果が出ていないときほどバタバタして力で打っているように見えましたが、しずかに落ち着きがあるように見えました。何よりすごいのはそれを優勝争い、そして女王争いをする相手が同組で目の前いるのにできるところです。
初優勝のサロンパスカップのペ・ソンウさん、資生堂のイ・ミニョンさん、そして全英…。いずれ劣らぬ名手たちと同組で戦い、目の前の相手が強ければ強いほど力を発揮できるのは、笑顔の下に負けん気があるからです。普通なら飲まれていますよ。鈴木さんに負けないくらい、強い気持ちがあると思います」
■辻村氏が予想する、賞金女王の行方は…
最高のかたちで最終戦に入った渋野の勢いが3人のなかでも最大であることに異論はない。とはいえ、鈴木、ジエの2人も名手であることは言わずもがな。さらに2人には渋野にない、『最終戦の舞台を経験している』というアドバンテージもある。
そんな女王争いの行方を辻村氏はどう見ているのか。
「分があるのは鈴木さんと渋野さんでしょうね。渋野さんの勢いは言わずもがなですが、鈴木さんも絶好調ですし、宮崎カントリークラブを何度も経験しているのは大きい。一方の渋野さんはティフトンの芝のアプローチがポイントとなるでしょう」
かたや気になるのはジエだ。
「正直、最終日最終組で負けた伊藤園、そして今回の大王製紙と今まで見たことのないような浮かない表情を見せていました。今週の練習を見ていても、ここまで身の入っていない姿を見るのは珍しいですね」
もう一つ気になるポイントがあるという。
「ジエさんは持ち前のショット力、そして2勝しているという大会との相性を生かして戦っていくかたちになると思いますが、今年のグリーンは例年のようにパンパンの速いグリーンではありません。となると、ジャストタッチで入れるジエさんのようなタイプよりも強気で打つ鈴木さん、渋野さんのほうが向いていると思います。特にここ数試合、ジエさんは最終日に行くにつれてパッティングが入っていません。そこを克服することがカギとなりそうです」
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、山村彩恵、松森彩夏、永井花奈小祝さくらなどを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。著書には『ゴルフ トッププロが信頼する! カリスマコーチが教える本当に強くなる基本』(河出書房新社)がある。

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