12月30日はタイガー・ウッズの誕生日。44歳になった今のウッズは、デビュー以来、一番いい笑顔をたたえているのではないだろうか。

43歳のタイガー・ウッズ 最新スイング【連続写真】
先ごろ、米経済誌「フォーブス」が発表した「この10年間で最も稼いだアスリート」番付で、公式・非公式を含めた大会で稼いだ賞金等のトータル615ミリオン(約670億円)を誇るウッズが6位にランクされた。
だが、昨今のウッズが黄金時代には見せることがなかった温かい笑顔を輝かせるようになったワケは、ビッグマネーより、ゴルファーとして人間として得られている充実感や達成感のおかげだと思う。
ウッズが米国キャプテンを初めて務めた12月のプレジデンツカップでは、3日目午後のマッチ出場を直前で自ら取りやめ、副キャプテンらが大慌てで米国チームのペアリングを再考するという一幕があった。「肉体的に戦えない」とウッズ自身が明かし、米メディアが即座に報じたため、ウッズの健康状態を危ぶむ空気がゴルフ界に一気に広がった。
しかし、最終日の個人マッチで快勝し、米国チームを逆転勝利に導き、キャプテンとしての重責も果たし、大きな期待にしっかり応えたところは、さすが王者の貫禄だった。
振り返れば、この1年も、ウッズは世間で広まったあらゆるマイナス要因を、その都度、プラスに転じ、人々の期待に応え続けてきた。

2019年は4月にマスターズを制し、メジャー15勝目を挙げたとはいえ、全米プロは予選落ち、全米オープンは予選こそ通過したものの21位止まり、全英オープンは予選落ちだった。シーズンエンドのプレーオフシリーズは第1戦のノーザントラストで途中棄権、第2戦のBMW選手権で敗退。最終戦のツアー選手権にはディフェンディングチャンピオンとして臨むことすらできず、不本意な形でシーズンを終えた。
その直後に生涯5度目の左ヒザの手術を受け、米ゴルフ界ではウッズの10月のZOZOチャンピオンシップ出場を危ぶむ声も上がっていた。だが、日本にやってきたウッズは、広がっていた暗雲を見事に吹き飛ばし、サム・スニードの記録に並ぶ通算82勝目を挙げて、世界中のファンの期待に応えてくれた。
若年化に拍車がかかる米ゴルフ界には年々、有望な若手選手が現われてはいるものの、やっぱりウッズあってのゴルフ界であることを誰もがあらためて感じた1年だった。

ウッズ自身が感じ取った最大の喜びは、マスターズで2人の子どもたちに「父親の勝利」を見せてあげられたこと。最多勝利数を誇る王者の子どもたちが「父親が勝つ姿を見た記憶が無い」とは驚きの事実だったが、ウッズにとっては人生最大の皮肉であり、その事実を変えることは彼にとっての命題だった。
そして、手術後の肉体を考慮し、無理をしない年齢なりのゴルフ、守ることが一番の攻めになるゴルフを心掛け、最大限の努力と気合いで掴み取ったZOZOチャンピオンシップ優勝は、ウッズにとって特別な喜びになった。
「温かいサポートをありがとう。来年また日本へ戻ってくることを楽しみにしています」
そんなウッズの言葉は、日本のファンが向こう1年間ワクワクできる何よりの励みになった。
いよいよ2020年。
東京五輪出場を希望しているウッズだが、五輪イヤーにも米ツアーの試合があり、メジャー4大会もあり、ウッズに寄せられる期待は膨らむばかりだ。
ウッズがクリアすべき課題は、ひとえに肉体面。手術を繰り返してきた腰や膝の状態を悪化させることなく、適度な練習量と練習内容で好調なゴルフを維持しつつ、成績をさらに向上させ、さらなる勝利を挙げること。
「すべてのピースをつなぎ合わせることは、今までもやってきたことだ。そして僕はいろんな勝ち方でメジャーを制することができている。これからの未来の可能性は誰にもわからない」
神のみぞ知るウッズの未来。
だが、彼の今後に大きな期待を抱ける今は、世界中のゴルフファン、ウッズファンにとって、とても喜ばしい年末年始である。
ウッズにも、みなさんにも、うれしいことがたくさん訪れる2020年になってほしい。
文 舩越園子(ゴルフジャーナリスト)


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