2020年の活躍が期待される“若手ホープ”のスイングを、昨年限りでレギュラーツアー~退き、「ほかの選手のスイングを研究することが好き」と語る大江香織が解説。今回は、ツアーで最も初優勝に近い選手の一人ともいわれ、153cmの大江と身長がほぼ同じの吉本ひかる。

腕の使い方がうまい!吉本ひかるのドライバーショット【連続写真】
2016年にアマチュアながらステップ・アップ・ツアー「ルートインカップ 上田丸子グランヴィリオレディース」で優勝するなど、勝みなみらとともに“黄金世代”として早くから活躍していた吉本。勢いそのままに17年のプロテストで一発合格を果たしたが、同年のQTでは51位に終わり、18年はフル出場の権利を得られず。19試合の出場にとどまった。
それが開花したのが19年。QTランキング21位の資格で前半戦の出場権を得ると「Tポイント×ENEOS ゴルフトーナメント」で4位タイ、「KKT杯バンテリンレディス」、「フジサンケイレディス」で2戦続けて2位に入るなど序盤から大活躍した。優勝こそなかったが、何度も上位に顔を出し、初シードを獲得しただけでなく、出場者が限られる「TOTOジャパンクラシック」、「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」にも出場するなど飛躍の一年となった。

大江はそんな吉本と一緒の組で回ったときに「球の打ち分けがとても上手。どちらかといえばフェード系だと思うのですが、フェードもドローもどちらも打てる。女子だとあまりいないタイプ」とショットのうまさを感じたという。
「なぜ両方の球筋を打てるかというと、ポイントはアドレスにあります。アドレスの形がすごくいい。グリップがフック過ぎず、ストレートに近い。
バランスがいいので両方振りやすいのかなと思いますね」。逆の例に挙げたのが、同じくアマチュアでプロの試合を制した古江彩佳。「古江さんは結構左手のフックグリップが強くて、クラブがシャローに入ってくる。だから、ちょっとストレートからドロー系なのかな、フェードはあまり打たないのかな、と感じますね。吉本さんとは対照的です」。吉本はアドレスの段階から両方打てる準備ができているのだ。

また、ダウンスイングでの腕の使い方も評価ポイント。「飛距離を出したいから結構オーバースイングですが、力感がないんですよね。トップは高いし、切り返しも高い位置から来る。だけどダウンスイングの途中で結構右ヒジが体にめり込むくらい近くにくるのがすごくいい。高い位置から下ろすと手が遠回りがちですが、高いところから下ろすけどしっかり引きつけられているから、ためた力がほどけません。そして、インパクトの後も体を開いていないし、下半身も粘っていて、腕の三角形が体の正面にクラブがあるからそれがすごくいいなと思います」。
パワーロスを減らすコツがここにある。
「昨年ジエさんに7打差を逆転されたフジサンケイレディスで一緒に回りましたが、吉本さんはショットだけでなくゴルフ自体がすごくいい。スコアも伸ばしていましたし、勝負どころでのパターも入る。優勝については、あとはタイミングなのかなと思います。小技もすごく上手ですが、やっぱり体が小さいのでちょっと飛距離が出ないタイプなんですよね。それはちょっと難しいところでもありますが、コースセッティングが短い試合とかもありますし、飛ばそうと思うとスイングのバランスが崩れちゃうからこのままでいいと思います。
あとはショットの精度が上がれば優勝争いの回数はもっと増えるのかな、と思いますよ」
大江香織(おおえ・かおり)/1990年4月5日生まれ、山形県出身。通算3勝。153cmと小柄ながら体全体を大きく使ったスイングで8年連続シードを保持するなど、息の長い選手として活躍。2019年にツアー撤退を表明、「今後ツアーを撤退するプロに“大江が生きているから撤退しても大丈夫”と思ってもらえるように、色々活動できたら」と20年からは新たなかたちでゴルフに携わっている。

■吉本ひかるプロフィール&成績
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