トーナメント会場にいる関係者のなかで、一番近くでプロゴルファーのプレーを見ているのがプロキャディ。そして唯一ラウンド中にプロにアドバイスを送れる存在でもある。
そんなプロキャディだからこそ、我々アマチュアゴルファーのスコアアップにつながる“アドバイス”を知っているのではないか。今回は、昨年、柏原明日架の初優勝を含む2勝をともに支えた佐々木裕史氏。
ニーハイ姿で柏原明日架がニッコリ
■小物に対するプロのこだわり
プロキャディ歴20年のベテランに“プロゴルファーのこだわり”について聞いてみると、柏原のこんな話を教えてくれた。「ラウンドで使用するグローブやキャップに、ものすごくこだわる選手。グローブは練習の前に何個も手にはめてみて、しっくりくるものしか使わない。それも試合で使用するのは1回のみです」。
プロは本革製のグローブを使用している人がほとんどだが、これは合成皮革のものに比べ、同じブランドでも個体差が生じてくるケースが多い。柏原はそのフィット感を試し、おメガネにかなわなかったものや、1回使用したものは練習用に回すという。
キャップもかぶり心地を非常に大事にするということだが、このいずれもラウンド中に余計なストレスを感じず、プレーに全神経を注ぐための準備といえる。「グローブについては、アマチュアの人は頻繁に替えるモノではないと思いますが、プロがこの部分にも気をつかっている姿はよく見かけます。柏原プロとは逆に、手になじませるため何回も使用する人もいる。選手それぞれのこだわりが出る部分だと思いますね」。

一般的に本革の製品は手にピッタリとフィットするものを選び、合成皮革のものは少し余裕をもたせたモノを選んだ方がいい、とも言われている。みなさんも、一度しっかりとフィッティングをしたうえで、本当に自分に合ったグローブを探してみてはいかが?
■ティショット、どこから打つといい?
また、プレー面でのプロのこだわりも聞いた。するとすぐに出てきたのが、「プロはティショットの時に、なるべく地面が平らな場所を探し、そこから打つ人が多い」という話だった。よく『ドローヒッターは左に、フェーダーは右に立つのがセオリー』など、持ち球やコースロケーション、その日の調子などによって、ティでの立ち位置を使い分ける方法はよく耳にする。しかしプロは、シンプルに“平らな場所”に立つケースが多いという。
ティエリアの地面は、緩やかな“お椀型”になっていたり、コース全体の傾斜が入っていたりと、決して平らな場所ばかりではない。
セオリーだけを意識してアドレスに入ると、実はそこがつま先上りで左にボールが出る原因になったり、逆につま先下がりで右へ…、なんてことも考えられなくはない。
佐々木キャディは、以前バッグを担いだ申ジエ(韓国)の名を挙げ、「彼女が一番平らな場所を探している。“右に飛ぶのが嫌だから右に立つ”などプロ特有の色々な考え方もあるけれど、(ジエは)そういうことはしない。もちろん真っすぐ飛ばせる自信があるというのも大きいけど、ただ平らな場所を探すだけですね」と“証言”する。
確かにそういわれると、プロがティショット前に何かを確かめるよう足場を固める場面や、その組の全員が同じ場所から打つ姿はよく見かける光景だ。この時は、そこが平らな場所ということも多いようなので、ぜひこういう部分も参考にしたいところだ。

■朝の練習場… ショット練習しすぎは“×”!
最後にラウンド前、特にショット練習について、1つ提言も。それは“朝の練習で練習しすぎるな”。「朝の練習でうまくなるわけではないので、ショット練習は柔軟運動くらいに考えたほうがいいです。こだわりのルーティンがあれば別ですが、そうでない場合、当たってようが外れてようが、ドライバー、FW、アイアン2本くらいにウェッジをそれぞれ3~4球ずつ打てばいいと思います」。
そうやって体を温めたら、練習グリーンに向かい、パター練習に時間を割くのが有効だと続ける。「その日のグリーンコンディションをしっかりと把握して、距離感を意識することのほうが大事。
8mくらいの距離から3球くらい何も考えずに打って、寄せるだけでもどんどん感覚がつかめてくるはず。それでグリーンのスピードに合わせていくほうが、スコアに直結するのではないでしょうか」。
「ラウンドは新たな課題を見つける場所」と佐々木氏。コースに出る前日までに練習は終わらせて、コースはそれを発揮し、そして次の練習材料を得る場所ということだ。「やっぱりゴルフの大前提は楽しむものであってほしいですよね。朝の練習場で劇的にうまくなる方法があるならば、みんなそれを普段の練習でもやっているはず。
気持ちよくコースに出るのが一番大事ですから」。プロトーナメントという緊張の場に身を置くからこそ、余計にこう思うのかもしれない。

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