あす30日(金)に開幕する「樋口久子 三菱電機レディス」から国内女子ツアーに復帰する渋野日向子。8月から2カ月間は海外女子メジャー2試合を含む6試合に出場するため、長い海外遠征に臨んだ。
合計19ラウンドの場で渋野は何を得たのか。4カ月ぶりの国内大会を前に、スタッツと渋野自身のコメントで海外の経験を振り返ってみる。今回は海外遠征最終戦の全米女子プロについて。
日本復帰のシブコ 早速この笑顔【LIVEフォト】
日本を飛び立ってから2カ月が経とうとしていた10月上旬。渋野は、伝統あるアロニミンクGCで長い海外遠征の最後を迎えた。スコットランドから始まった武者修行は、今季の海外女子メジャー第3戦の「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」の58位タイで幕を閉じたが、渋野はこの6戦で何を得たのか?
最終戦を前に、渋野はこの大会を“集大成”と位置づけた。
「全米女子プロというくらいなので、コースもかなりメジャーセッティングで、日本ともまったく違う」。練習ラウンドからその難しさを警戒。「アメリカに来ていちばん難しい。比べものにならないほど難しい」と、特に大きくアンジュレーションが豊かなグリーンを攻略のポイントに挙げた。
「アメリカツアーの悔しい思いは日本で戦っていてもなかなか消えるものではないので、アメリカでの悔しさはアメリカで返さないといけないと思う。いつかこの大舞台で、レベルの高い選手たちとトップ争いできるような選手になれるように頑張って行くしかないなと思いました」
思うような結果が出ない遠征も、尻上がりに調子を上げていった。
そこにきての難コース。「集大成と言っていますが、見つける物のほうが多いと思います。これまでのゴルフ人生で習ってきたすべてのことをこの4日間でぜんぶ出し切れたらと思います」。持てる技術、知識、すべてを総動員しても苦労することは予想していた。
迎えた初日は2ホール目でバーディが先行。前半を3バーディ・2ボギーで折り返した。
ショットが絶好調だった。難コースに立ち向かった渋野はティショットでも輝きを見せ、フェアウェイを外したのはわずか1回でパーオンも15ホール。「泣きそうになった」という12番の4パットはあったが、イーブンパーと上々のスタートを切った。
ミスはあっても、5バーディを奪う攻めで埋め合わせた。それが2日目に入ると別人のようなゴルフに変わってしまう。7ホールで4つのボギー。
その後バーディを2つ奪ったが、5つスコアを落としてしまった。
「やっぱり昨日が良かったぶん、今日も頑張らないとって自分のなかでも思っていました。昨日の時点で上の方に結果的にはいられたので、やっぱりその位置から落ちたくないという欲深いところもちょっとはあったかなと思います」。前日絶好調だったショットも鳴りを潜め、パッティングもきわどい距離が入らない。そんな状態は、3日目の朝一に起こった事件でさらに加速してしまう。
予選ラウンドは突破したが、順位を大きく下げて迎えた3日目。
池ポチャに4パットと、出だしでまさかのダブルパー「8」。気持ちを立て直すのも困難な状況に置かれた渋野は、その後も2つスコアを落とし、トータル11オーバー。最下位争いへと落ちてしまった。
「悔しいですね。めっちゃ悔しいです。う~ん。
もうちょっと何とかなったよなと思うんですけど。やっぱり、パッティングも全然だめでしたし。4パット…、最悪なことをしてしまったかなと思います。情けないです」とホールアウト後は声を絞り出した。
「別に天狗になっていた訳じゃないですけど、鼻をへし折られたというか。今までここに来るまでは飛距離が必要だとすごく思っていたんですけど、飛距離どうこうの問題じゃないなというか、本当に飛距離以外のことで何打も縮められると今回すごい実感した」
悔しさだけが残る3日目だったが、なんとか気持ちを立て直した最終日。海外遠征の締めくくりでアンダーパーを狙った渋野は、3バーディ・3ボギーのイーブンパー。トータル11オーバーの58位タイで大会を終えた。
海外メジャー覇者ということで注目され続けている渋野だが、「(メジャー覇者の肩書は)もう捨てていいんじゃないかなと思うぐらい。日本では42年ぶり(の海外メジャー優勝)だったので何かを背負っていかなきゃいけないかもしれないけど、こっちにきてからは本当にそんな…、恥ずかしいぐらいのレベルの低さなので」。反省ばかりが口をつくが、6戦を戦い抜き、最高成績24位タイの成績は、これからの渋野のやる気をますます高めることになった。
スコットランドでのリンクスを除いては、いい日と悪い日の差が激しい大会が続いた。ただ、米国に移ってからの4大会では計48のパー5を回り、2イーグル・21バーディに対し、ボギー2つにダブルボギー1つ。パー5全体で21アンダーをマークしたことになる。
スコアメイクが計算できるところでバーディを獲って、課題としていたアプローチや、総じて不調だったパッティングが決まれば、世界のトップ選手と遜色はない。しばらくは日本ツアーでの参戦となるが、12月の「全米女子オープン」までに勢いを取り戻し、“メジャー覇者”として臨む姿が待たれる。