新世代のツアープロコーチ、目澤秀憲と黒宮幹人。学年は1つ違いだが、ともに今年で30歳を迎える。
目澤は河本結のコーチとして2019年のツアー初優勝に貢献。そして最近では松山英樹と契約して、大きなニュースとなった。また、黒宮は松田鈴英のスイングに安定感をもたらし、18、19年と2年連続のシード獲得をサポートした。世界最先端のスイング理論にも精通している目澤&黒宮に、河本結の「お手本にしたい」トップを解説してもらおう。
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目澤 さすがに河本さんのスイングは僕からは言いづらいなぁ(笑)。
黒宮 河本さんも畑岡(奈紗)さんや渋野(日向子)さん同様に体が強いですよね。
あとはフェースをシャットに(閉じ気味に)使うイメージがあります。
目澤 そうだね。いちばん最初に教えてからずっとこういう感じ。
黒宮 なかでも、テークバックは本当に上手いと思う。手先で操作してない。胸と腕とクラブが同調しながら上がるから、毎回同じ位置に上げられる。
その結果として、上半身と下半身の捻転が深く、胸も伸展できている。しっかりエネルギーが溜まったトップですね。骨盤の左右の高さも変わらないし、切り返しで体が右に倒れないのもいい。20年は19年よりも倒れなくなりましたよね?
目澤 だいぶ変わったでしょ? 本当にいいスイングになった。2、3年前は頭1つ分くらいトップで右に倒れていたから。アメリカでの環境の変化も大きいよね(河本は昨シーズンから米女子ツアーに参戦)。
持ち球のフェードだけでなくドローも要求されるから、いろんな球を打たないといけない。それで自然と覚えていったと思う。
編集部 目澤さん、フェースをシャットに使うために、最初はどんな指導をしたんですか?
目澤 クラブの運動量が少ない状態で、最大限の出力で飛ばすスイングを覚えたほうがいいって話をして、ボールのフライトからつなげてインパクトの形から逆算して作っていきました。本人もそっちがいいと気づいて、自然とシャットに上げるバックスイングに変わっていったんです。
ツアープレーヤーにとってスイングは後付けなので、『シャットに上げないといけない』とか、一般ゴルファーほど細かくは考えていません。オフシーズンには、脳にテンションをかけるような課題を与えたりしますが、ほとんどは打ちたい球筋からの話がメインになります。

編集部 ここでちょっと整理したいんですけど、インパクトで体が右に倒れると、左から右に曲がるフェードが打ちづらくなる?
黒宮 調子がいいときはフェード、悪いとチーピンになりやすいんです。体が右に倒れると、スイングの最下点が右になってしまう。するとアッパーブローになるし、体は左に向く。そうなると出球は左に行ってしまいます。いまのスイングはだいぶ良くなりましたね。
目澤 基本的にフェーダーで、昨年からドローが必要なホールでドローが打てるようになった。
良い意味でフェード一辺倒のスイングではなくなりました。でも両方打てることによって、左へのミスが消しきれなくなったときに迷いが出てきています。それが今後の課題ですね。
【河本結が球を左右に打ち分けられる理由】
・骨盤の左右の高さが変わらず、体が右に倒れない
・テークバックで胸と腕とクラブが同調している
・フェースの開閉動作が少なく、シャットに使う
■目澤秀憲
めざわ・ひでのり 1991年2月17日東京都生まれ。日本大学ゴルフ部出身。世界最先端のゴルフ理論に精通し、16年には日本に数名しかいない、TPI(Titlist Performance Institute)Level3 GOLF & JUNIORを取得。
河本結・河本力の姉弟や、有村智恵のコーチを務める。そして今年から松山英樹と契約し、さらなる飛躍が期待される若手プロコーチの一人。FIVE ELEMENTS西麻布店のヘッドインストラクターとしてアマチュアへのレッスンも行っている。
■黒宮幹仁
くろみや・みきひと 1991年4月25日愛知県生まれ。日本大学ゴルフ部出身。12年の「日本学生ゴルフ選手権」では同学年の松山英樹に次いで2位となった。そのとき、ティショットの調子が悪くても対応してくる松山のすごさを目の当たりにして、インストラクターの道へ。現在は松田鈴英や梅山知広のコーチを務める。指導者となったいまも、ドライバーでは300ヤード以上の飛距離を誇る。黒宮ゴルフアカデミー主宰し、豊田市を中心にレッスン活動を行う。