世界で50勝以上挙げ、海外メジャーは2勝。米韓で賞金女王に輝き、世界ランキング1位となったこともある申ジエ(韓国)。
2020年もわずか8試合の出場で2勝を挙げるなど今なおバリバリの実力者だが、その一方で、日本ツアーを愛し、常々「若手の壁になりたい。後輩達に多様な技術を見せるのも私の役目」と話すツアー全体の発展を願う選手でもある。そんなジエに、日本が誇る若手選手たちについて聞いてみた。
笹生優花のドライバースイングは圧巻【連続写真】
今回ジエに聞いたのは、19歳のルーキー・笹生優花について。昨年11月の「TOTOジャパンクラシック」で優勝したジエを「63」というビッグスコアで追い上げて2位に入ったのが笹生。そのとき語った印象は「ヤニ(・ツェン)を思い出します。
自分のゴルフに自信がある感じがする」だった。
鮮烈なルーキーシーズンの始まりだった。20年開幕戦の「アース・モンダミンカップ」では初日を首位発進。最後は5位タイに終わったが、2戦目となった「NEC軽井沢72」で初日に「65」で飛び出すと2日目は停滞したが、最終日に「63」の大爆発を見せてツアー初優勝。翌戦の「ニトリレディス」では初日2位の滑り出しから、2日目に首位奪取、以降は1位を明け渡すことなく優勝を勝ち取った。
その後は優勝こそないものの、強烈なインパクトをファンにも選手にも植え付けている笹生のゴルフとはどんなものなのか。
「怖い物知らずで、インパクトがありますね。ひとによっては淡々とプレーしていると見えるかもしれませんが、積極的でアグレッシブなゴルフです」とジエ。その積極性がビッグスコアにつながるゆえんだろう。
現在の平均ストロークは「70.3575」で堂々1位。さらにはパーオンホールでの平均パット数も1位、1ラウンドあたりの平均バーディ数も「3.76」で1位、そしてイーグル数も6コで1位。積極性に加え、最後のパッティングに至るまで、スキがないのが笹生の特徴だ。
このスキのなさをジエは、「シンプルだから」と分析する。プレースタイルは前述のとおり前に進むシンプルなもの。そこに積極性が加われば、自ずと好スコアが生まれる。19歳という若さが大きなメリット生んでいる点も忘れてはならない。
もちろんシンプルさと積極性だけではないのが笹生の魅力。今季は平均飛距離の測定はされていないが、270~280ヤードともいわれる圧倒的な飛距離は、ローリー・マキロイ(北アイルランド)を彷彿させる強烈なスピードを誇る高速スイングから生まれる。
16試合でイーグル数6コは、このままでいけばシーズン20コに迫るハイペース。魅力に詰まった笹生のゴルフは見どころが満載だ。
しかし、この快進撃はなにも勢いと若さから来るものではない。「シンプルにゴルフをしますが、彼女はよく練習をしています。けっこう長い時間やっていますね。そういう点も知ってほしいですね」と、努力、才能、勢いすべてが兼ね備わっている点も見逃せないとした。
また、「勘も鋭い選手だと思います」とジエ。ここまでくれば、さらなるインパクトを国内で残し、米ツアーでの活躍が見たいもの。そこについてもジエは心配ないと話す。
「向こうでの生活では言葉的な問題が大事ですが、彼女はそれがクリアできている。大きなメリットです。まだ若くて有望。
いろんなことにチャレンジしてほしいです。失敗してもそれがこやしになる。どんどん進んでほしいです」
昨年から続いている統合シーズンでは、すでに約9500万円を稼いで賞金ランキング1位を快走中。進化が止まらない笹生のゴルフと、世界一に輝いた円熟味あふれるジエのゴルフがぶつかるシーンが待ち遠しい。
申ジエ(しん・じえ)
1988年4月28日生まれ、韓国全羅道出身、スリーボンド所属。155センチという身長で母国韓国、そして米国の賞金女王に輝いたジエが、日本ツアーを主戦場に移したのが2014年。「温かい人間味を感じる国でやってみたい」というのが理由で、本格参戦後は元世界ランク1位の名に違わぬ実力でカップを積み重ねている。また、たびたび児童施設に寄付するなど人格者としても後輩たちの良い手本に。米ツアー時代は最終日に無類の強さを発揮することから“Final Round Queen”と呼ばれており、日曜日の強さは日本になっても変わることはない。