世界で50勝以上挙げ、海外メジャーは2勝。米韓で賞金女王に輝き、世界ランキング1位となったこともある申ジエ(韓国)。
2020年もわずか8試合の出場で2勝を挙げるなど今なおバリバリの実力者だが、その一方で、日本ツアーを愛し、常々「若手の壁になりたい。後輩達に多様な技術を見せるのも私の役目」と話すツアー全体の発展を願う選手でもある。そんなジエに、日本が誇る若手選手たちについて聞いてみた。
“球質”が安定 原英莉花のドライバーショット【連続写真】
今回の主役は、20年に国内メジャー2勝を挙げ、大きく飛躍を遂げた原英莉花。「日本女子オープン」では3日目に首位に立つと、最終日も攻めの姿勢を貫き、2位の小祝さくらには4打差、3位の上田桃子には8打差をつけて勝ちきった。また、「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」では、「今週は本当にショットが悪い」と言いながらも、ショートゲームで粘って優勝。
もう一段高いレベルに到達した感がある。
ジエも原については「安定感」をポイントに挙げる。「原さんは本当にパワーがあって飛ぶ選手ということは、みなさんもよくご存じだと思います。昨年は彼女と一緒にラウンドする機会はありませんでしたが、プレーが安定しているなと私は感じました。素晴らしい先生(ジャンボ尾崎)のもとで長く指導を受けて成長し、安定感も抜群に伸びています」とジエは評価する。
原の安定感は数字にも表れている。
18年シーズンのダブルボギー率は1.7460で67位、19年シーズンは2.2426で88位だった。それが20-21年シーズンになると、1.2346で39位にまで順位が上がる(3月18日現在)。つまり、100ホールに2つ前後あったダブルボギー以上の数が、今シーズンはおよそ1.2個にまで減少しているのだ。
では具体的に原のプレーの何が安定しているのだろうか。「私は“球質”が安定していると感じています。スイングのリズムやタイミングが良くないと、球質は安定しません。
原さんがいいプレーをしているときは、どんな弾道でも自分のイメージ通りに打てている。タイミングが合っているからこそブレが少ないのです。そして球質が安定すれば、当然良いスコアにつながります」。
ちなみにジエの今シーズンのダブルボギーの数は1つだけ。もちろんトリプルボギー以上はない。ダブルボギー率は0.2415で、414ホールに1度だけダブルボギーを打つという驚異的な数字になる。
規定ラウンド数に達していないため順位には反映されていないが、数字的には現在1位に立っている李知姫の0.3401を上回る。ジエ自身が“安定感の女王”だからこそ、原の成長を感じているのだろう。
最後にジエだからこそ知る原の意外な一面について聞いてみた。「こういうことを言うと、自分がおばさんみたいで嫌なのですが」と切り出したジエ。「コースのなかでは、原さんをはじめとする若い選手たちはプロとして一生懸命頑張っていて、その姿はすごくカッコイイんです。でもラウンドが終わった後、クラブハウスや練習場で会う彼女たちの姿は、みんな本当にカワイイと思います…。
原さんもカワイイんですよ(笑)」と、ギャップ萌えも原の魅力だそうだ。
申ジエ(しん・じえ)
1988年4月28日生まれ、韓国全羅道出身、スリーボンド所属。155センチという身長で母国韓国、そして米国の賞金女王に輝いたジエが、日本ツアーを主戦場に移したのが2014年。「温かい人間味を感じる国でやってみたい」というのが理由で、本格参戦後は元世界ランク1位の名に違わぬ実力でカップを積み重ねている。また、たびたび児童施設に寄付するなど人格者としても後輩たちの良い手本に。米ツアー時代は最終日に無類の強さを発揮することから“Final Round Queen”と呼ばれており、日曜日の強さは日本になっても変わることはない。