ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月26日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。見直しとなった「Go To トラベル」の在り方について解説した。

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Go To トラベル 東京発着旅行の旅行商品予約解禁 旅行代理店では割引商品の販売開始=2020年9月18日午後、東京都台東区の日本旅行リテイリングパルコヤ上野支店 写真提供:産経新聞社

衆参両院予算委員会の集中審議~新型コロナ対策などで与野党論戦

国会では11月25日、衆参両院で予算委員会の集中審議が行われた。新型コロナウイルスの感染者増加と政府の観光支援事業「Go To トラベル」について、立憲民主党の枝野代表は「人の移動が活発になれば、感染が拡がる」と指摘し、事業の中止を求めたが、菅総理は「感染拡大の主要な原因であるとのエビデンスは存在していない」と発言し、事業を継続する考えを示した。

飯田)このGo To トラベルについて、20日の夜に専門家会議があって、そこから一気に動き始めました。

「Go To トラベル」を中止できない“3トップの存在”

衆院予算委員会に臨む菅義偉首相=2020年11月4日午前、国会・衆院第1委員室 写真提供:産経新聞社

ギリギリまで継続することにこだわっていた菅総理

鈴木)新型コロナ感染症対策分科会のメンバーに取材していますけれども、そのさらに10日くらい前に「Go To トラベルは手をつけなければいけないのではないか」という声が出ていました。専門家側ですから、政策について控えているのです。しかし、はっきり「Go To を」と言って、「これは考えたほうがいいかも知れない」と言うくらい、感染状況が一気に拡大するという話をしていました。分科会としては、「少しでも早く手をつけてくれ」ということだったのですが、政府側はまったく動きませんでしたからね。それでいよいよあのようなメッセージを出したのです。

後押ししたのは世論です。菅さんに近い派閥の議員と話をしたら、世論が高い数字を見て、「中止したほうがよいのではないか」「見直したほうがよいのではないか」という雰囲気になって来た。そういう世論で決断せざるを得なかった。「ギリギリまで菅さんはこだわっていた」ということを言っていました。

飯田)そうですか。

鈴木)政策の中身ではなく、これをつくって行く体勢としての構造的なものがあると思います。

Go To について、観光庁の官僚が言っていたのは、いまの政治中枢の3者のことです。まずは菅総理、菅さんは、インバウンドを含めて観光をライフワークでやって来た。だから「絶対にGo To をやるのだ」という、菅総理の肝煎りがあります。それから、もう1人は二階さん。観光業界で観光に関する政策のドンとも言われています。この二階さんのところにも3月に業界が「何とかして欲しい」と言って来ています。
そして、もう1つの当事者は公明党です。「Go To トラベル」を主管しているのは国交省です。

「Go To トラベル」を中止できない“3トップの存在”

政治 Go To トラベル、東京発着除外へ 記者団に応じる赤羽一嘉国交相、西村康稔経済再生担当相=2020年7月16日午後、首相官邸 写真提供:産経新聞社

「Go To トラベル」を推し進めて来た背景に存在する“3トップ”

飯田)そうか、国交大臣は……。

鈴木)ずっと公明党です。公明党にも今年(2020年)1月くらいから、観光に関係している人たちが大変なことになるということで、陳情を含めて来ているのです。公明党は国交省をずっと仕切って来ているわけですから、「Go To をやろう」ということなのです。夏の連休前に、Go To について「感染が拡大して来てまずいのではないか」という状況になったときに、珍しく山口代表が「やめるべきではない」と言いました。

「あれ」って思いませんでした? 公明党は通常、こういう庶民生活に関わると、「慎重に」と言うのに、ここでは「やるべきだ」と言ったので、「え?」と思ったけれど、その強気な言葉の背景には、そういうことがあるわけです。ということは、菅総理、二階さん、公明党といまの政権のスリートップと言ってもいいけれど……。

飯田)屋台骨ですね。

鈴木)これがGo To を強く動かして来たから、簡単に止めたり、制度を変えたりということは大きくて動かしにくく、変えにくいということを観光庁の官僚が言っていました。そういう背景が1つあると思います。

飯田)なるほど。

「Go To トラベル」を中止できない“3トップの存在”

【政治 菅首相ぶら下がり】記者の囲み取材に応じる前、マスクを外す菅義偉首相=2020年11月21日午後、首相官邸 写真提供:産経新聞社

菅政権への交代時期も影響~必要なのは「細やかな検証」

鈴木)もう1つだけ言うと、国交省の幹部が言っていたのだけれども、夏に少し感染が増えたとき、「Go To の影響があるのではないか」と言われた。これから行楽の秋、そして年末年始にまた人が動くから、「その前にGo To の制度設計を含めて、再検討するべきだ」という意見が国交省の役人のなかにあったのです。感染が低い時期ならば、そういう準備ができるではないですか。

飯田)備えておこうということですね。

鈴木)そんななかで、9月に政権交代が起きました。

飯田)そうか。

8月末から9月は。

鈴木)国交省の幹部は、「コロナ対策に関しては、9月に政治空白ができた」と言っていました。本当はそこで準備をしなければいけなかったけれど、そういうものが重なってしまった。このような背景もあったのです。しかしそんなことばかり言っていても仕方ありません。菅さんの思い入れというのもよくわかるのだけれども、臨機応変さが重要です。コロナは有事だから、明日がわからないわけです。私が提案したいのは、もっと細やかな検証です。例えば、3連休がありましたが、連休が終わった段階でチームが検証する。それで、制度を細かく見直す。代理店や宿泊施設は、キャンセル1つで被害を被るわけです。だから、そこに補償として、予備費があるのだから、それをうまく補填しながら制度を少しずつ臨機応変に修正する。Go To は、コロナが落ち着くまでは、そういう形で継続するべきだと思います。

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