引きこもりをそれが求める的確な声で、リアルに描き尽くす

引きこもりをそれが求める的確な声で、リアルに描き尽くす


『共生虫』(講談社) 著者:村上 龍
否応なく時代とリンクしてしまう表現者がいる。

たとえば村上龍。無差別殺人鬼を主人公にした小説『イン ザ・ミソスープ』を書いた時、わたしたちは神戸で起きた酒鬼薔薇事件に顔色を失っていた。『限りなく透明に近いブルー』でデビュー以来、癒しとしてのSMを描いた『トパーズ』、援助交際をする女子高生を主人公にした『ラブ&ポップ』など、時代が発信する無視できないノイズに敏感に反応してきたこの作家は、テニス、F1、サッカーと、時々の流行りのスポーツに対してもコミットメントの姿勢を露(あら)わにし、そうした上品とは言いかねる貪欲な好奇心のありようを指して、〈野蛮〉という毀誉相半ばする評価が与えられてもいるのだけれど、わたしはこう考えている。

村上龍は新人作家のように書く、と。

デビューして二〇余年にもかかわらず(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2000年)、村上龍は『限りなく――』当時と同じスタンスで小説を書き続けている。それは脈絡のなさだ。本来なら若手作家が反応すべき風俗や事件を取り上げ続けるこの作家の著作を並べてみるといい。そのとりとめのなさはちょっと感動的なほどだ。が、実はそれは表向きの貌(かお)にすぎない。多くの著作に通底しているのは今ここにある危機であり、それを成立させている社会システムに対する異議申し立てなのである。古い革袋に新しい酒をそそいでも仕方がない。新しい危機に対しては、新しい思想が必要なはずだ。出来不出来の差が激しい村上龍の著作群からは、そんなメッセージが伝わってくる。そのわかりやすい真摯さゆえに、彼の小説は多くの読者を獲得し、商品として見事に流通しているのではないか。

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