地域に土着した「発酵食品」を四十七都道府県それぞれに求め、訪ね歩いた旅の記録

地域に土着した「発酵食品」を四十七都道府県それぞれに求め、訪ね歩いた旅の記録


『日本発酵紀行』(D&DEPARTMENT PROJECT) 著者:小倉ヒラク

◆「土地の起源」まで掘り起こす旅
地方は独自の歴史と、それゆえの多様性を持つと言われる。けれども現在、多くの地方都市には似たような駅舎と車道沿いの商業施設があり、その貌(かお)は均質化しつつある。市場が運び込む東京の流行にさらされると、地方の個性など風前の灯火(ともしび)であるかのようだ。それでもなお地域を「ここでなければ」と思わせる要因などあるものだろうか。

気候や場所の特性ごとに異なる自然現象として、「微生物の生態系」がある。特有の微生物が生み出す産物は、その場所でしか得られない。移動すれば、生態系が変わってしまう可能性がある。そのように地域に土着した「発酵食品」を四十七都道府県それぞれに求め、訪ね歩いた旅の記録が本書である。

たとえば和歌山県の金山寺味噌。湯浅は熊野古道の宿場町だが、老舗である醸造蔵は古い建物を少しずつ直し、建て増ししている。物置には近代的な製造機器以前の道具も遺(のこ)る。麹(こうじ)の種つけでは一種のみから麹をつくる普通の味噌とは違って、米と麦と大豆の三種を混ぜる。その麹を漬け床にして、塩漬けした丸ナスやウリ、生姜などの野菜を樽に仕込み、紫蘇を薬味に加えて3~4カ月発酵させる。味噌と言いつつも漬け床ごと食べる漬物のようでもある。

こうした味噌(調味料)と漬物(食材)の不分離は、中国から持ち込まれた発酵食品「醤菜(ジャンサイ)」の名残と推測される。つまり金山寺味噌の醸造蔵を訪ねれば、建て増し前の蔵のみならず、外来の食品文化が伝搬した由来にも思いは及ぶ。それゆえ味覚に保存された「民族の記憶」を訊(たず)ねれば、背後にある「土地の起源」まで掘り起こす旅となる。

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