生まれて、生きて、産んで、死んで、次世代にバトンをつないでいく。生命の終幕を粛々と描く二十九話

生まれて、生きて、産んで、死んで、次世代にバトンをつないでいく。生命の終幕を粛々と描く二十九話


『生き物の死にざま』(草思社) 著者:稲垣 栄洋

◆生まれて、生きて、産んで、死んで、次世代にバトンをつないでいく
セミの亡骸が路上にころんと転がる夏の終わり。何年も土中で暮らし、やっと明るい場所に出たのに、ひと夏だけ翅(はね)を震わせ、あっけなく地面に落ちるのだから、ああ無情。

しかし、著者は書く。

“繁殖行動を終えたセミに、もはや生きる目的はない。セミの体は繁殖行動を終えると、死を迎えるようにプログラムされているのである。”

感傷を拒むプログラムという無機質な響きに、むしろ救われる思いを抱く。生きとし生けるものすべて、生きて死ぬプログラムから免れることはできない。

本書は、静岡大学大学院農学研究科教授によるユニークな一冊だ。海、川、陸、空に暮らす多様な生命の終幕を粛々と描く二十九話。考えてみれば、これまで生き物の死の諸相をつぶさに観察したり、覗きこんで深入りしたりすることもなかった。しかし、生き物の「死にざま」とは多種多様なプログラムのありさまだと知るにつけ、著者のじんわりとした視線に惹きこまれてゆく。

ハサミムシの母親の最期は凄絶すぎて、絶句。卵から孵った自分の子どもたちに体を差し出し、貪られつつ死んでいきながら、血肉となって成長の糧となる。カマキリのオスにいたっては、交尾をしている最中にメスに食べられるのだから、壮絶だ。あるいは、ミノムシ。メスは頭だけ外に出し、フェロモンを発しながらオスを待つ。オスはメスの蓑(みの)の中に腹部だけ入れて交尾、このあと死んでしまう。泣けてくるのは、タコ。身を挺して卵を守り続け、無事に孵化を迎えると、泳ぐ力さえ残っておらず、すなわち母が死ぬときは子との別れのとき。

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