〈無理解という壁〉を嘆くでも、怒るでもなく肯定し、現代詩はその壁を相手に話をしていくのだと、荒川洋治は凛々しく宣言する

〈無理解という壁〉を嘆くでも、怒るでもなく肯定し、現代詩はその壁を相手に話をしていくのだと、荒川洋治は凛々しく宣言する
       


『空中の茱萸』(思潮社) 著者:荒川 洋治
詩は一体、どこで、何をしているのか。たとえば、道行く人に「あなたが今日見かけた詩は一体、どこで、何をしていましたか?」と訊ねてみる。……無理? じゃあ、もっと散文的な質問に変えて、「あなたが読んだことのある詩人の名前を十人挙げてみて下さい」なら、どうだろう。詩人はいるのに、詩を読む人はあまりにも少ない。

ロシアからアメリカに亡命した詩人、ヨシフ・ブロツキイによるノーベル賞受賞講演録『私人』(群像社)を読む。すると解説で、一九六三年に彼が定職につかない有害な“徒食者”としてかけられた裁判記録の一部が紹介されており、それがあまりにも不条理で笑えてしまうので、抜粋を紹介してみたくなる。

“裁判官「あなたの職業は?」
ブロツキイ「詩人です」
裁判官「誰があなたを詩人だと認めたんです?」
ブロツキイ「誰も」
裁判官「でも、あなたはそれを勉強したんですか? そういうことを教え、人材を育成する学校に、あなたは行こうとはしなかったでしょう」
ブロツキイ「考えてもみませんでした……そんなことが教育で得られるなんて」
裁判官「じゃあ、どうしたら得られると思うんです?」
ブロツキイ「ぼくの考えでは、それは……神に与えられるものです」”

日本には優れた詩人がたくさんいるのに、忙しがってばかりいる現代人は詩の言葉につまずいている暇がなく、淀みなく表層を流れるばかりの易しい言葉を操って詩の存在しない世界を突っ走っている。思えば、ブロツキイはある意味で幸せだった。少なくとも、彼は「詩人」という職業につまずく権力と向かい合うことができたのだから。日本の政治家ならどうだろう。おそらく無闇やたらと「先生」を連発し、握手を求め、お茶を濁して終わるに決まってる。
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2020年11月26日のライフスタイル記事

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