「役に立たない」科学が役に立つ

「役に立たない」科学が役に立つ
       


『「役に立たない」科学が役に立つ』(東京大学出版会) 著者:エイブラハム・フレクスナー,ロベルト・ダイクラーフ
今年は様々な場面で「科学」や「学問」が話題になる年でした。そもそも「科学」はわたしたちの生活のなかでどのような役割を果たしているのでしょうか? こういう疑問について、プリンストン高等研究所の創設者と現所長のお二人が明快に語っているのが本書『「役に立たない」科学が役に立つ』です。監訳者、初田哲男(東京大学名誉教授)先生に本書の成り立ちや意義についてご寄稿いただきました。


◆「役に立たない」科学が役に立つ
毎年ノーベル賞の発表があると、「この研究は何の役に立つのですか?」という質問が受賞者にしばしば投げかけられます。その意図は、研究成果が私達の生活をどのように便利にしてくれるのですか、ということだと思いますが、科学者は必ずしも何かに役立てるという目的で研究しているわけではありません。自然をより良く理解したいという好奇心に突き動かされて行った研究が、結果として役に立つということの方が多いように思います。私自身は宇宙初期や中性子星を研究する理論物理学者ですが、自分の研究の有用性を問われた時に、「残念ながら全く役に立ちません」あるいは「役に立つかもしれませんが100年後かも」と答えるべきか、あるいは「芸術と同様に文化活動としての意義があります」と答えるべきか悩みます。

プリンストン大学出版局から2017年に出版されたThe Usefulness of Useless Knowledgeは、1930年に設立されたプリンストン高等研究所の創設者アブラハム・フレクスナーのエッセイ(1939年)と現所長であるロベルト・ダイクラーフのエッセイ(2017年)を収録した100ページに満たない書籍です。この本のなかで、基礎研究に関する豊富な実例を挙げながら、フレクスナーは「有用性という言葉を捨てて、人間の精神を開放せよ」、ダイクラーフは「役に立つ知識と役に立たない知識との間に、不明瞭で人為的な境界を無理やり引くのはもうやめよう」と述べています。2018年の秋に、理化学研究所にある数理創造プログラムの同僚である多田司さんと私が、偶然にも独立にこの原著を読んで感銘を受け、日本語で広く読んでもらいたいと考えるに至りました。幸いにして、野中香方子さん・西村美佐子さんという素晴らしい翻訳家に巡り合うことができ、さらに、原著にあらわれる様々な科学用語と科学者の解説を、サイエンスライターの荒舩良孝さんにお願いすることで完成したのが、2020年7月に出版された『「役に立たない」科学が役に立つ』(東京大学出版会)です。

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2020年12月2日のライフスタイル記事

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