格差の経済学のパイオニア。ノーベル賞を逃した稀代のエコノミストとは?

格差の経済学のパイオニア。ノーベル賞を逃した稀代のエコノミストとは?
       


『カルドア 技術革新と分配の経済学― 一般均衡から経験科学へ―』(名古屋大学出版会) 著者:木村 雄一
現代経済学の巨人、ニコラス・カルドア。彼に関する研究書として、日本語では初となる『カルドア 技術革新と分配の経済学』がこのたび出版されました。「格差」の問題がクローズアップされる昨今、カルドアの経済理論・思想から何を学ぶことができるでしょうか。本書の内容を、本文から抜粋してご紹介します。

◆格差の経済学のパイオニア。ノーベル賞を逃した稀代のエコノミストとは?
ニコラス・カルドア(Nicholas Kaldor, 1908-1986)は現代経済学の様々な領域に対して創造的な才能を発揮した、20世紀を代表するイギリスの経済学者である。ジョン・メイナード・ケインズがこの世を去った後の「ケンブリッジ学派」の支柱として活躍し、政治家や経済学者からは親しみをこめて「ニッキィ」と呼ばれた。カルドアのキャリアと功績は、経済理論家、ケインジアン、税務顧問、開発経済学者、イギリス労働党の経済顧問、マネタリズムと新古典派経済学の批判者、と多岐にわたっている。とりわけ戦後の労働党内閣の経済顧問として、選択的雇用税の導入、イギリスのEC加盟への反対、サッチャー政権への厳しい批判など、第二次世界大戦後のイギリス社会の方向性に多大な影響を与えた。

「ケンブリッジ学派」とは、もともとアルフレッド・マーシャルを祖とする「ケンブリッジ学派」を意味する。カルドアが属した「ケンブリッジ学派」は、その次の世代にあたる、ジョーン・ロビンソン、リチャード・カーン、ピエロ・スラッファらケインズの薫陶を受けた経済学者たちが集った学派である。彼らは、ポール・サミュエルソンやロバート・ソローらの「新古典派総合」を掲げるアメリカン・ケインジアンと対峙していた。カルドアは「ケンブリッジ学派」を主導し、「ケンブリッジ方程式」と呼ばれる、「限界生産力」に代替する客観的な分配関係を解明した。興味深いのは、カルドアがアカデミックな経済学教育を受けた大学が、LSE(London School of Economics and Political Science)だったことである。当時のLSEは、ライオネル・ロビンズやフリードリッヒ・ハイエクらを中心に「ロビンズ・サークル」を形成し、オーストリア学派や一般均衡理論などの、限界分析や極大原則に依拠したヨーロッパ大陸の経済学を積極的に導入した。カルドアは彼らの後継者として期待されたのである。「ケインジアン」として名高い「ケンブリッジ学派」のカルドアが、なぜケンブリッジ大学を対峙して聳え立つLSEの出身であったのだろうか。

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