2年に1度開催される「鉄道技術展」が、今回も幕張メッセ(千葉市)で11月26日から29日まで行われた。どんな最新技術が披露されるか興味津々だったが、筆者の目に留まったのは、自動改札機の最新テクノロジーを中心としたものだった。


■顔認証改札機は事前登録が必要
JR東日本メカトロニクスのブースでは、顔認証改札機が展示されていた。きっぷもSuicaやPASMOのようなICカードも不要、文字通り「顔パス」で改札を通過できるすぐれものだ。両手に荷物を持っていたり、または車椅子で利用したりするには便利であろう。

もっとも、事前に顔写真を撮影して登録する手続きが必要なので、定期券保有者のように頻繁に鉄道を利用する人向きかもしれない。目下、上越新幹線の新潟駅と長岡駅で実証実験を行っている。500名ほどが参加しているという。

筆者がいきなり通過しようとしたら、改札機に「通れません、戻ってください」の表示が出てしまった。

■タッチレス改札機の使い勝手
JR東日本のブースでデモンストレーションをしていたのは、ミリ波を活用したタッチレスゲート(改札機)だった。こちらも改札機にSuicaやPASMOをタッチすることなく通過できる。顔認証と異なり事前登録不要なのがポイントだ。

ただし、Suicaを特別なケースに入れて通過することとなる。そのケースと改札機がミリ波を利用して電波のやりとりを行い、タッチ不要となる仕組みだ。


この特別なケースは2000円くらいかかりそうだが、低価格にしないと普及は難しいかもしれない。とはいえ、降車駅ではふつうの改札機にタッチして下車することも可能なので、顔認証よりも使い勝手はよさそうだ。

実際にスタッフからカードを借りて試してみたが、改札機にタッチすることなくスムーズに通り抜けられた。これは楽だ。意外に早い時期に普及するかもしれない。

■進化するSuicaの今後
Suicaの進化としては、チャージ額の2万円超えやチャージ不要で後払い決済などさまざまな提案がなされている。その中で注目したいのが、ウォークスルーや位置情報を利用してJR東日本全駅でSuicaを使えるようにするというものだ。

現在、Suicaを使えるエリアは決まっている。首都圏や仙台など大都市を中心とした路線のみであり、ローカル線の無人駅の大部分はSuica適用外だ。

首都圏の駅からSuicaで入場し、幹線からローカル線に乗りかえて閑散とした無人駅で下車しようとすると、Suica非対応の駅では問題が生じる。運転士から後日精算するための券をもらうことになるが、精算が終わるまで、Suicaが使えない。

そうした不便を解消するには、全駅に簡易Suica改札機を導入することになるが、莫大な費用がかかるので、実現は困難だ。


そこで、JR東日本が位置情報を利用したタッチレス決済を今後10年以内に予定しているという。これなら、どんな無人駅でもSuicaで乗降が可能になる。鉄道会社にとっても利用者にとっても多大なメリットをもたらすであろう。

そうなれば、いよいよ紙のきっぷはなくなるかもしれない。もっとも、どんな駅でも乗り降り自由な「青春18きっぷ」や「大人の休日俱楽部パス」は残してほしいものだが……。

■トレイン・シミュレータでの実地訓練
トレイン・シミュレーションの開発で目覚ましい業績をあげているのが「音楽館」だ。

そのブースでは、乗務員訓練用シミュレータの実演を行っていた。単なる運転にとどまらず、信号不点灯やホームでの人身事故の可能性、吹雪による視界不良といった非常時の対応も実演されていた。ワンマン列車での作業というハンディキャップがありながらも、乗務員のきびきびとした動作には感心させられた。

シミュレータもよくできていて、訓練のみならず、ここから派生した鉄道ファン向けの商品もあるようで大いに興味をそそられた。

■現在進行中の鉄道建設工事など
独立行政法人「鉄道・運輸機構」(JRTT)のブースでは、近年の取り組みと目下進行中のプロジェクトについてパネル展示を行っていた。

北陸新幹線(金沢~敦賀)や相鉄・東急直通線は開業時に取材をしたこともあって、身近に感じられた。
現在進行中なのは、ほぼ北海道新幹線(新函館北斗~札幌)のみのようだが、まだ10年ほどかかりそうだ。「時間はかかりますが、工事は着実にすすんでいますので、しばらくお待ちください」とのこと。

今後、首都圏では地下鉄をはじめ新線工事がいくつも控えているものの、すべてJRTTの仕事ではないようだ。鉄道新線建設はなかなか複雑な事情がありそうである。

時間の制約もあり、ごく一部の展示を見るだけに終わったものの、得ることの多い半日だったと思う。

この記事の筆者:野田隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。
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