60代は、自分の歩みをふり返り、“これから”を見つめ直すのにふさわしいタイミングです。おひとり様でも、ご夫婦でも、今の暮らしに合ったお金や備えを「見直す」ことが、人生後半の安心につながります。
■なぜ? 多くの60代が抱える「なんとなく不安」の正体
「人生100年時代」。60代の先には、20年、30年という時間が広がっています。一方で、物価は上がり続け、収入は横ばい……。
「この先もなんとかなるだろう」と思いつつ、心のどこかでモヤモヤした不安を抱えていませんか?
中立的な立場で金融教育を行う公的機関である「金融広報中央委員会」の調査では、60代の約7割が老後資金に不安を感じているとされています。その背景にあるのは、“現状がよく分からない”という思いです。
・今の貯蓄と年金で、あと何年暮らせるのか?
・毎月、一番お金がかかっているものは何か?
・昔入った保険は、今の自分に合っているのか?
分からないままだと、「もしかして足りない?」という気持ちが膨らみやすくなります。だからこそ、まずは現状を“見える化”することが、安心への入口になります。
■発想の転換! 大切なのは「増やす」より「見直す」こと
不安を感じると、「投資を始めるべき?」「副収入が必要?」と“お金を増やす”ことに目が向きがちです。でも60代は、生活スタイルや体力が少しずつ変わるタイミング。無理にリスクを取るより、今ある資産や制度を「見直す」ことで、確実で続けやすい備えになります。
また、働き方を見直すことも選択肢の1つです。厚生労働省の調査では、男女問わず多くの60代が自分のペースで働き続けています。収入のためだけでなく、健康や生きがいのために「どう働くか」を考えることで、暮らしに安心感が生まれます。
■今日からできる! お金を見直す5つのアクション
・お金の流れを見える化する:1カ月分の通帳や明細を眺めて、何にどれだけ使っているかを把握しましょう。見るだけでも支出の傾向が分かります。
・不要な支出を整理する:加入したまま内容を見直していない保険やサブスク、年会費など、「なんとなく続けていた支出」がないか確認しましょう。
・公的制度をおさらいする:「ねんきん定期便」で年金の見通しを確認し、高額療養費制度などの支援制度もチェックしておくと安心です。
・資産をシンプルに整える:使っていない口座や忘れていた金融商品を見直すだけで、全体の把握がしやすくなり、管理もラクになります。
・これからの働き方を考える:働き続けるかどうか、自分の体力や希望に合わせて「どう暮らしと収入をつなぐか」を考えておくと安心です。
■おわりに:「お金の見直し」は「これからを選び直す」こと
「お金の見直し」と聞くと、節約や我慢をイメージするかもしれません。でもその本質は、「これからの人生で、何を大切にしたいか」を自分で決め直すことです。
住まいをどうするか、趣味にいくら使うか、誰に何を遺したいか――。
“なんとかなる”と流れに任せるのではなく、自分で未来を描いていく。その第一歩として、「見直す」という視点を、今日から暮らしに取り入れてみませんか。
文:京極 佐和野(ファイナンシャルプランナー、キャリアコンサルタント)
FPオフィス ミラボ代表。CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、国家資格キャリアコンサルタントなどの資格を持ち、マネープランと働き方の両面から、20年以上「稼ぐ・使う・借りる・貯める・増やす」をアドバイス。FP向け継続研修、社員向けライフプラン・キャリアデザイン研修講師として活動する傍らJ-FLEC認定アドバイザーとして携わる。