皆さんは、口や歯に関する悩みがありますか?
私は虫歯が絶えない子ども時代を過ごして常に歯科医院に通い、永久歯に生え変わると歯並びという問題に悩まされてきました。
こうした口腔内の悩みについて、年代別の調査結果をもとに、日本歯科医師会常任理事 小山茂幸先生に話をお聞きしました。
若年層の主な悩みは「歯の色」「歯並び」の見た目
公益社団法人日本歯科医師会が全国の15歳~79歳の男女10,000人を対象に行った調査によると、若年層は「歯の色」や「歯並び」などの見た目、40代以上は「ものが挟まる」という悩みを抱えていることがわかります。
口腔の機能不全の疑いがある若年層多数、「噛む力」も未発達
「食べる」「話す」「笑う」などは口腔機能と呼ばれ、滑舌が悪くなったり、食べこぼしをしたりすることは「口腔の機能不全」が疑われる症状です。
口腔の機能不全の疑いがある6つの項目について聞いた質問では、10代の約半数(48.3%)、20代でも40.6%が「すでにある」「たまにある」と回答しています。
年齢が高くなるとこれらの症状を経験する人が増えますが、若年層の半数近くがすでに何らかの症状を経験していることから、口腔機能が十分に発達していない疑いがあります。
さらに、若年層は「噛む力」も未発達な傾向にあるようです。
普段の食事について聞いた質問では全体の2人に1人が「硬い食べ物より柔らかい食べ物が好き」(47.0%)、4人に1人が「子どもの頃から硬い物を食べる習慣があまりなかった」(25.1%)と答えています。
年代別に見ると、「硬い食べ物より柔らかい食べ物が好き」と答えたのは10代が53.6%と最も多く、また、「硬い物を食べるときに噛み切れないことがある」のも10代が40.3%と最多です。
10代の咀嚼力には課題があることがわかりました。
口腔機能の発達不全は全身の衰えを加速させるリスクがある
日本歯科医師会常任理事の小山茂幸先生は、若年層は歯並びや歯の白さなど見た目には気を使う反面、口腔機能に対する意識が低いことに警鐘を鳴らします。
「特に若年層は『噛む力』が弱まっている傾向があり、これは噛む筋肉や顎の骨が十分発達せず歯並びの乱れや顎関節症を起こすだけでなく、食物繊維やタンパク質の摂取量低下につながり、栄養不足や運動機能の低下にもつながっていきます」(小山先生)
当たり前に思える「食べる」「話す」「呼吸する」といった口周りに関する基本的な機能が未発達のまま年齢を重ねると、オーラルフレイルの状態を飛び越えて機能不全の時期が早まり、全身の衰えを加速させる恐れがあるそう。
健康寿命を引き延ばすためにも、早い段階から健全な口腔機能を保ち維持することが大切です。
そのためには何をすれば良いかを小山先生に尋ねると、「舌を含めた口周りの筋トレ」と「食べるときによく噛むこと」をすすめてくれました。
小山先生オススメの口腔環境維持対策
・食事は30回以上咀嚼
・唾液の分泌を促すマッサージ
・「あいうべ体操」「パタカラ体操」などの口腔体操
あいうべ体操は、くちを大きく開けたり唇を突き出したりして「あー」「いー」「うー」と言ったあとに、思い切り舌を突き出して「べー」という体操。「あいうべー」を1セットとし、1日30セットを毎日行います。
参考:みらいクリニック
パタカラ体操は、「パ・タ・カ・ラ」を含む文章を発音するという体操。
「パ」「タ」「カ」「ラ」を1音ずつはっきり発音したり、「パパパパ……」「タタタ……」「パタカラ、パタカラ……」のように連続して発音したりすることで、口周りの筋肉を鍛えます。
実際にやってみるとわかるのですが、唇も舌もたくさん動くのでけっこう大変です。特に連続の発音は口が疲れます。
(※パタカラ体操は、秋広良昭歯学博士が考案したものです)
うがいで筋トレも効果的
習慣にしている人も多いであろう「うがい」も、舌や頬の筋肉を鍛える効果的な口の筋トレになるのだそう。
・水を口に含み、頬全体を思い切り膨らませたりすぼませたりしてブクブクとうがいする
・口に水を含んだ状態で上を向き、喉の奥でガラガラとうがいする
帰宅したあとのうがいは感染症対策やホコリを吐き出すのはもちろん、「口の筋トレをしている」と意識しながらやってみると良さそうです。
口周りの筋トレを習慣にしつつ、定期的に検診も受けよう
小山先生は、早口言葉や砂糖不使用のガムを噛むことも効果的だと教えてくれました。いずれも思いついたらすぐにできるものばかりです。
口の筋トレを習慣にしつつ、定期的な歯科医院での検診でクリーニングをしてもらい、虫歯や歯周病の早期発見に努めたいですね。
取材/出典:日本歯科医師会