調布市では「映画のまち調布」応援キャラクター「ガチョラ」を活用した30秒間の動画『ガチョシアター』を制作、市内の映画館「イオンシネマ シアタス調布」のプレアド(本編開始前の広告)として上映中だ。
4月16日(金)から上映される『ガチョシアター』第2作には、『仮面ライダー響鬼』でザンキ役を演じた松田賢二さんが出演することとなった。
松田さん、そして『響鬼』前期のプロデューサーであり、今回の動画プロデュースも務める角川大映スタジオ・髙寺成紀さんにお話をうかがった。

>>>松田さん&髙寺さん・撮影現場を見る(写真6点)

――松田さんは『ガチョシアター』という企画はご存知でしたか。

松田 いえ、最初は絵コンテを読んで「こういうご当地キャラ的なものなのかな?」っていう感じで。こう言っては何ですが内容はあまり気にしていなくて。「師匠(髙寺さん)が声をかけてくれたからやる」っていう、それだけでしたから。

――髙寺さんとのお仕事はいつ以来ですか。


松田 それこそ筋立てがあるものとしては『仮面ライダー響鬼』以来ですね。『響鬼』のイベント(20年2月22日開催の『仮面ライダー響鬼』BD-BOX好評発売御礼イベント 久々之巻「集う輝き」)が1年前にありましたが、『大魔神カノン』の時は声をかけてくれなかったし……。

髙寺 すみません(笑)。

――では今回、髙寺さんとは「お久しぶり」という形なんですか。

松田 ちょこちょこと電話とかLINEでは連絡しているんですよ、髙寺さんは僕にとってすべてを晒せる人なので。あと京都の撮影所に行った時にお会いした東映のスタッフの方に怪獣同盟(髙寺さんが創設した早稲田大学の特撮サークル)出身の人がいて、「あの下ネタが大好きな人!」っていう話で関係性が築けるのも有難い話だなあと思ってます。


髙寺 そんなとこで俺がツナギ役になってたなんて(笑)。

――なぜ髙寺さんには全てをさらけ出せるんですか。

松田 何でですかね……とりあえず、プロデューサーでありながら、こんなに下ネタを話せる人はいないですからね。

――心を開ける安心感がある?

松田 ていうか、他のプロデューサーとか偉い人って、AVに興味持ってないですから。

――そこですか(笑)、じゃあちょっと話を元に戻します!(笑) 絵コンテを読まれての感想はいかがですか。

松田 「強面の僕を活かしてくれてありがとうございます」っていう。
でもまさか、こんな取材を受けるほどの大層なものとは思っていませんでした(笑)。

――絵コンテも拝見しましたが、「鬼の目にも涙」的な素敵な親子の話でした。

松田 僕も同じくらいの歳の子供がいるので、少しは父親としての顔を見せられたらいいなって。実は以前、映画の上映前に流れるマナーCMに友人の俳優が出ていたことがあったんですが、テレビで観る時よりも圧倒的な訴求力を感じて、ライバル目線ですごく嫉妬していたんですよね。そういうこともあって、今回はガチョラと一緒にプレアドに出演できて嬉しいですね。

――ああ、やっぱり映画館のスクリーンに映るって特別ですよね。


松田 スクリーンにかかるCMなんてなかなかないじゃないですか。オリジナルというと、「NO MORE映画泥棒」くらいしかないですよね。

――今回でリベンジが果たせますね(笑)。今作では「お父さんが泣いていい場所」として映画館が紹介されますが、ここで松田さんの映画体験というものをお聞かせください。初めて観た映画は覚えていらっしゃいますか。

松田 はい。
『レイズ・ザ・タイタニック』(80年)です。小学校2年生くらいだと思いますが、これは親父と兄貴についていっただけなんですけれどね。自分で選んで初めて観に行ったのは『ドラえもん のび太の恐竜』(80年)ですね。

――同時上映は『ゴジラ対モスラ』(64年)のリバイバルでしたから、そちらにも興奮しました?

松田 え、そうでしたっけ? 僕は師匠と違ってああいう怪獣系には興味なくて、もしかしたら飛ばしたのかもしれないですね……あとはシュワちゃん(アーノルド・シュワルツェネッガー)、(シルベスター・)スタローン、ジャッキー・チェンの主演作に走ってましたね。

――真っ当な80年代少年の映画嗜好だと思います(笑)。

松田 『コブラ』っていつくらいですかね?

――スタローン主演の?

松田 いえ、アニメの。
松崎しげるさんが声優をやっていた……。

――ああ、劇場版アニメの『SPACE ADVENTURE コブラ』ですか。82年公開です。

松田 『コブラ』と『(SF新世紀)レンズマン』(84年)は、劇場に何回も行きましたね。あの当時、映画は入れ替え制じゃなくて、終わってもそのまま席にいてよかったじゃないですか。だから朝から晩まで観て。もちろん別日に行ったりもしましたけど

――すごいですね、2作のどういう部分に惹きつけられたのでしょうか。

松田 寺沢武一先生のマンガが好きだったんですよ、僕は当時漫画家を目指していて『コブラ』をもじった『ケブラ』っていう漫画を描いていたので。

――そのまんまの内容を予感させるタイトルですね(笑)。

松田 あと『レンズマン』は確か主題歌がTHE ALFEEでしたよね? あの曲(『STARSHIP-光を求めて‐』)に惚れちゃったんですよ。

――漫画家を目指してらしたんですね?

松田 そうなんですよ、それを経て『幻魔大戦』(83年)の大友克洋先生へと移行していった感じですかね。

――その頃の映画といえばアニメだった?

松田 はい、アニメだと『コブラ』と『幻魔大戦』で、実写だと『アウトサイダー』(83年)。

――フランシス・F・コッポラ監督の青春ドラマですね。どこがよかったですか?

松田 ダイアン・レインのむねが大きかったんですよね。

――感動ポイントはそこでしたか(笑)。最近観たアニメは何ですか。

松田 こないだ娘と『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』を観に行きました。周りからすすり泣く声が聞こえてきて、アニメってやっぱりすごい力を持っているんだな、と。僕は『鬼滅の刃』を予習していなかったので、「煉獄さんがカッコいいな」とか「声優さん上手いな」みたいな印象だったんですが……。

髙寺 俺は煉獄さんのお母さんのエピソード以降はラストまでずっと泣きっ放しだったけど。

松田 伊之助の泣いているところは上手かったですね。

髙寺 そこも泣かなかった?

松田 僕はただただ感心していて。

髙寺 そうか、役者として観ちゃうのね。

松田 こんなに心を込めて、しかも変に生っぽく伝わらないのって、どういう技術なんだろうと、ずっと耳を澄ませていました。「本当にアニメはすごいな」って。

――お子さんと映画館へは結構行かれるのですか。

松田 そうですね、大作やディズニー作品が多いかな。去年自分が声をやった『アナと雪の女王2』は何回か観に行きましたね。

『ガチョシアター』松田賢二&髙寺成紀が語るアニメ・映画館の思い出
▲『ガチョシアター』撮影現場での松田さん。

――声優としても活躍されている松田さんですが、やはりお仕事の大きな転機となったのは髙寺さんと出会った『仮面ライダー響鬼』のザンキ役になるでしょうか。

松田 そうですね。今年50歳になるおっさんが、今でもまだ「元仮面ライダー」ということでいろんな場所に出してもらえるっていうのはありがたいですね。「どんだけ影響力あんねん!」っていう感じで。

――その後もシリーズに何作かご出演されていますし。

松田 ええ、最近だと『仮面ライダージオウ』に『キバ』の次狼役で出ました。

髙寺 ザンちゃんのスマホは、ロック画面が例のお尻の写真になってるんですよね(※「四十四之巻 秘める禁断」のザンキが全裸で倒れている場面)。

松田 あれは髙寺さんがP(プロデューサー)の時のじゃないんですけどね(※髙寺さんは二十九之巻でプロデューサーを降板)。

髙寺 でも、あれのおかげで、特撮界で「尻」と言えば松田さんって感じになっちゃったよね。

――日曜朝にお尻を見せてくれたインパクトは、確かに強烈でした。

松田 師匠とお会いした時もそうでしたけれども、「自分はこうしたい、ああしたい」っていう思いもなく、ただ成り行きに任せているだけなんですけれど。

髙寺 オーディションの時は、ザンちゃんのそんな無欲な感じがスッと入ってきたんですよね。当時の気分のすべてを正確に覚えているわけじゃないんですけれど、自分としては『響鬼』でヒーロー番組を新たなステージに進めたいという思いがあったんです。そういう意味では平成ライダーシリーズの若い役者さんたちのお芝居も気になっていたもので、ザンちゃんが持ってたそれに対する大人の余裕というか、油の抜けた感じが逆に新鮮でもあり、待ってましたという風に思えたんですよね。

――なるほど。

松田 宮崎駿監督が「堪る限りの力を尽くして生きなさい」と『風立ちぬ』(13年)を作っている時に言っていて、僕がすごく好きな言葉なんです。今の話を聞いていて、持てる限りの力を尽くして天命を待つ、自分は変わらずそうあるべきだなって思いましたね……ってダメだな、真面目な話をすると僕らしくないスよね。下ネタを話さないと、何かどうも調子が……。

――せっかくいい話でまとまるところを(笑)。松田さんは声優もやられていますけれども、役者として演じる時と違いはありますか。

松田 やりがいとしては勿論全身を見せる役者の方だと思いますが、声優の仕事は童心に戻れるというか……さっきも言いましたけど漫画家を目指していたので、自分の声で絵に命が吹き込まれていくことには、子どものように感動しますね。ある意味、漫画家になる夢を別の方法で叶えられたんだと思います。

髙寺 言われてみたら役者と声優、両方やれるのは強みだよね。二刀流っていうか、ザンちゃんが好きそうな言葉でいうと「両刀遣い」?

松田 ハハハハ、両刀と言われるほど遣いこなせてはいませんけれどね。

――最後は真面目に。今回のミニムービーのような「映画館を守っていこう」という姿勢に関して、松田さんはどのように思われますか。

松田 わかったようなことを言うと恥ずかしいんですけれど、去年あんな状況下だったにも関わらず、『劇場版 鬼滅の刃』はあれだけヒットしてたわけですから、面白い映画にはちゃんと人は来るんですよね。僕もそうなんですけれど、今は配信で映画を観ることが増えてきていると思うんです。でもやっぱり映画は大きい画面で観るのが一番ですよ。ぜひガチョラと僕が出るミニムービーを観に調布まで足を運んでいただきたいと思います。「イオンシネマ シアタス調布」をよろしくお願いいたします!

髙寺 すごい、いきなりキレイに締めたね!ザンちゃんも大人になったね(笑)。

松田 師匠に褒められて光栄です(爆笑)。

松田賢二
9月23日、大阪府出身。1995年に蜷川幸雄演出・舞台『近松心中物語』に出演、2001年には『VERSUS』で映画デビューを飾る。『仮面ライダー響鬼』(2005年~2006年)のザンキ役で注目を集めた。現在はドラマ・映画・舞台はもちろん、『遊☆戯☆王VRAINS』(ボーマン)、『アナと雪の女王2』(マティアス中尉)など声優としても活躍中。現在、舞台「モダンボーイズ」に出演中(東京:4月3日~16日、大阪:4月28日~30日)。

髙寺成紀
9月28日、東京都出身。86年に東映入社、『激走戦隊カーレンジャー』(1996年)、『仮面ライダークウガ』(2000年)など、スーパー戦隊シリーズ、平成仮面ライダーシリーズのチーフプロデューサーを務める。現在は角川大映スタジオに所属、調布FMにて毎月最終土曜日午後1時から放送中の『髙寺成紀の怪獣ラジオ(昼)』のパーソナリティを担当。

※煉獄の「煉」は「火」+「東」が正しい表記となります。