今やラッパーとしても名高い、声優の木村昴さん。そんな木村さんが6月27日(日)に放送されるアニメ『カートゥーン スペシャル 新 ルーニー・テューンズ』に、世界的ラッパーのスヌープ・ドッグ役で出演します。
英語版ではスヌープ・ドッグ本人が声を吹き込んだ本作に、木村さんはどのように挑んだのか。作品への印象やラップへの愛を伺ったインタビューをお届けします。

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――今回、スヌープ・ドッグ役で出演が決まった際のお気持ちをお聞かせください。

木村 めちゃめちゃテンションが上がりました! ある日、マネージャーさんから「木村さん、ちょっと事務所に来てください」と言われまして。怒られるのかな、でも身に覚えないしなと思い、「グッドニュースかバッドニュースかだけ教えてください」とお願いしたら、グッドニュースだと言われたので、ウキウキして事務所に行きました。そこで、マネージャーさんから「何役だと思います?」と聞かれて。
マネージャーさんのテンションが上がる役って何だろうと思ったのですが、スヌープ・ドッグ役だと聞いた時に「えーーー!」って。僕が大のラップ好きということでオファーをいただけたとは思うのですが、ついにスヌープ・ドッグの声をやらせていただけるというのが、本当に夢のようでしたね。

――スヌープ・ドッグが実際にアニメになっているのをご覧になって、いかがでしたか?

木村 過去にもリル・ディッキーというラッパーのアニメーションPVにスヌープ・ドッグが出ていたことがあったので、違和感なく見ることができました。なんか、フォルムが良いですよね。髭とか色々と特徴があるので、絵にした時に映えるなという印象をもちました。
木村昴が世界的ラッパーに!吹き替えで魅せたラップへの熱い想い
木村昴が世界的ラッパーに!吹き替えで魅せたラップへの熱い想い
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――実際にスヌープ・ドッグを演じてみた感想をお聞かせください。


木村 難しかったんですよ。よく知っているが故に、難しくて……。日本語にした途端に、彼の英語ならではの喋りの特徴みたいなものが失われてしまうんです。あの人って鼻で話しているみたいなところがあるので、その雰囲気をいかに日本語で表現するかで悩みました。せっかくやるから何とか日本語に出来たらと自分でリハーサルをしてアフレコに向かいました。

――現場でもリテイクを重ねたのでしょうか?

木村 結構重ねましたね。
というのも、監督さんたちは「めっちゃ良いです。OKです!」ておっしゃるのですが、自分が納得していなくて、「もう1回やらせてください」みたいな。監督のOKを無視し続けるという特殊な現場でしたね(笑)。

――それは、スヌープ・ドッグを知っているからこその葛藤で?

木村 妥協できなかったという感じですね。ただ、途中でやっぱり忠実に再現するのは難しいと思ったので、スヌープ・ドッグの日本語版として彼に恥じないようにやりつつも、日本語の醍醐味も残す方向にしていって。結果、物真似ともまたちょっと違う、良い塩梅になったのかなと思います。
かなり時間をかけた記憶がありますね。

――実際に他の声優さんの声も入ったラップ部分の完成形をご覧になっていかがでしたか? 特にポーキー・ピッグ役の龍田直樹さんは御年70歳でラップに挑戦されていましたね。

木村 素晴らしかったです! 龍田さんの果敢に挑戦している雰囲気は、エミネムの『8 Mile』に通ずるものを感じましたね。作品のストーリーも、ボロボロに負けていた主人公たちが立ち上がって、最後にボスに立ち向かって圧勝するという流れで似ていますし。それを日本の声優さんが見事に表現しているのは、声優としても、ラップミュージック好きとしても、胸アツでした。
木村昴が世界的ラッパーに!吹き替えで魅せたラップへの熱い想い


――そもそも、木村さんがラップを好きになったきっかけは何だったのでしょうか?

木村 僕は1997年にドイツから日本に引っ越してきたんですが、その時に飛行場でマルク(当時のドイツ通貨)を使い切りたいということで、母からCDを買ってもらったんです。
それが、『97』という、その年のコンビネーションアルバムのようなもので。音楽家の母が、今年は家族にとって大事な年になるからという理由で買ったCDだったのですが、M.C.ハマーやバックストリート・ボーイズらの曲が収録されていて、世の中にはこんな音楽があるんだと衝撃を受けたんです。それで、日本に越してきてからは、近所にシングル10円、アルバム50円という感じでレンタルアップCDを売っているお店があったので、みんなが駄菓子を買っている間に僕はCDを買っていました(笑)。そこで小3ながらジャケ買いしていたCDがことごとくラップミュージックで! そこからラップミュージックに興味が湧いた気がします。なんかハマっちゃたんですよね。

――色々な音楽がある中、木村さんがラップミュージックに心惹かれる理由は何でしょうか?

木村 ラップミュージックの反骨精神みたいなものが共感できたというところと、歴史の成り立ちも素晴らしいなと思えたり、単純に見えて、すごく複雑なことをやっているように思えたからですかね。
何がカッコいいかなんてよく分からないんです。理屈じゃない、全部がカッコいいんですよね(笑)。うん。
木村昴が世界的ラッパーに!吹き替えで魅せたラップへの熱い想い

――今回、子供向けアニメにラップやスヌープ・ドッグが登場されたことについてはどう思われますか?

木村 今回のように、アニメでラップが扱われるようになったことが凄く素敵なことだなと思っています。今でこそ大人たちがやる音楽になったけど、ラップミュージックって元々は10代の若者、子供たちがやっていた音楽ですからね。ラップは、黒人差別が色濃くある1970年代のアメリカ・NYで、ろくに学校も行けず、仕事も無くて、奪ったり人を傷つけることでしか生きていけなかった子供たちが、暴力ではなく、ラップのスキルで優劣を付けようという中で生まれた音楽なんです。だから、子供とラップは通ずるものがあるのかなって思っていて。子供の有り余ったエネルギーを向けたことで発展してきたカルチャーですから。それに、ラップは時代が進むにつれて扱うテーマも変わってきていて、令和の今なら、子供の遊び道具としても楽しめるんじゃないかな。言葉遊びを通して感性を磨くこともできますし、友達とラップバトルで通じ合うこともできるので。是非子供たちにこそラップを楽しんでほしいなって思います。

――『ルーニー・テューンズ』の世界観で表現されると、ラップもより身近に感じられそうですよね。

木村 アニメーションにラップが登場する時って、ラップをすること自体がギャグとして捉えられていることが多いのですが、今作はスヌープ・ドッグを出すというところでも、本気さが窺えるというか……。気合入っているなと。ただ、個人的な意見なのですが、願わくば今後ラップが登場する際は、僕にラップ部分を書かせてほしいなと思いました(笑)。英語を日本語に変える時に、口の動きに日本語を合わせなくてはならないので、ボキャブラリーがぐっと狭まるんですよね。そこが翻訳家さんたちも苦労されるのかなと思ったので、僕がラップとしても成立するし、口にも合うラップを書きたい。挑戦してみたいです。

――よりブラッシュアップできそうな?

木村 そうですね。声優としての立場でラップをできるので、一度監修してみたいですね。龍田さんにラップをお教えしてみたいです(笑)。そんなことを思うくらい、可能性や楽しさを覚えました。

――実現したらより本格的なラップになりそうです。もし、木村さんが『ルーニー・テューンズ』の仲間としてあの世界に入るならどんな形で入りたいですか?

木村 うーん……。本人役だったら激アツですかね。木村昴役で出て、バックスに「やぁ!昴」って言われたいですね。もしくは空き地のガキ大将役で。みんなで空き地で野球するエピソードとかないんですかね(笑)。

――それは是非観てみたいです(笑)。最後に、作品を楽しみに待っている方に向けてメッセージをお願いします。

木村 めっちゃポップでコミカルで、観ていて楽しい物語になっていると思います。これまでの『ルーニー・テューンズ』ももちろん楽しいのですが、スヌープ・ドッグが登場する今回は、ご機嫌度合いが特別マシマシかなと思いますので、楽しんで観ていただけると嬉しいです。物語もストーリー展開は王道なんですが、それを現代的にポップにコミカルに作ってあって、楽しんでいただけること間違いなしです。願わくば、クラスの友達、会社の同僚、親族、近所の人、回覧板も含め、お薦めだよと広めてもらえたら嬉しいです!

木村さんがスヌープ・ドッグ役で出演する、日本初放送のエピソード「ラップバトル前編/ラップバトル後編」<原題:Hip Hop Hare Pt 1 / Hip Hop Hare Pt 2 >を含むアニメ『カートゥーンスペシャル 新 ルーニー・テューンズ』は、アニメ専門チャンネル「カートゥーン ネットワーク」にて2021年6月27日(日)14時から放送予定。

同番組内では、スヌープ・ドッグの日本語吹替を務め、ラッパーとしても活躍している木村昴さんが、オリジナルラップを披露する特別映像「木村昴の明日から使えるラップ講座」もカートゥーン ネットワーク限定で放送する。放送を記念して、木村さんのサイン色紙が抽選で当たるプレゼントキャンペーンをカートゥーン ネットワーク公式サイトで実施中。応募締め切りは、2021年6月30日(水)まで。
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