伝説のTVドラマ『NIGHT HEAD』を新たにアニメーションとして描き出す『NIGHT HEAD 2041』。
その物語が間もなく佳境を迎えようとしている。


超能力者の存在が完全否定されている2041年。
強力な超能力を有する霧原兄弟と国家保安本部特務部隊に所属する黒木兄弟、二組の兄弟の出会いによって今、状況は大きく動き始めようとしている。
世界の裏側に隠されていた真実。
人類を次なる段階へ進化させようとする者の思惑。
そして、過酷な宿命を背負わされていた霧原兄弟と黒木兄弟が選ぶ道とは……!?

1990年代前半にカルト的な人気を呼んだTVドラマ『NIGHT HEAD』の世界を、令和の時代に落とし込むことで生まれた新たな物語。
伝説の作品を新たに演じる思いを、黒木兄弟の兄・直人を演じる小野大輔に語ってもらった。

小野大輔が〈伝説〉に挑んだ気持ちとは?『NIGHT HEAD 2041』インタビュー
▲小野大輔が演じる霧原直人。

>>【画像】『NIGHT HEAD 2041』場面カット(写真5点)

(C)飯田譲治/NIGHT HEAD 2041 製作委員会

『NIGHT HEAD』との出会い

ーー『NIGHT HEAD』という作品に小野さんが最初に触れたのはいつ頃ですか。

小野 最初のTVドラマが放映された頃ですが、ドラマに最初に触れたわけではなくて。バラエティ番組でネタになっているのを観たのが最初です。芸人さんたちがおもしろおかしく『NIGHT HEAD』をパロディにしているのを観たのが、僕の最初の『NIGHT HEAD』でした。

ーー当時はバラエティ番組でネタになるくらい、一般に浸透していた作品ですからね。
では、実際にドラマそのものに触れたのは?

小野 その後に大学生になってからです。90年代後半から2000年くらいの時期に、VHSで観た記憶があります。だから、そもそも流行った時期にそのムーブメントの中にいたかというと、そうではなかった。でも、ものすごいカルト人気というか、観たことない人でも知っている感じが、当時の『NIGHT HEAD』にはありましたよね。今だと『鬼滅の刃』みたいな感じですよね。『鬼滅の刃』のキャラクターは知っているけど、実際には観たことはない。
そういう人もいるそうですから。今、資料を見たのですが、最初のTVドラマって92~93年の放送ですね。僕はまだ中学生でした。

ーーまだ深夜ドラマを観る年頃ではないですね。

小野 さらに、僕は地方出身なので、リアルタイムでは放映もされていませんでしたから。とにかく『NIGHT HEAD』というタイトルが社会現象を引き起こしているけれど、それが何かは知らないという状況で、パロディのほうに先に触れてしまいました。
ただ僕はその後、中学~高校生くらいからTVドラマにどっぷり浸かり、日大芸術学部放送学科に進むんです。その勉強のためにも、上京してからいろいろなTVドラマを観ました。その中に『NIGHT HEAD』があったんですね。

ーーかつて一世を風靡した名作ドラマを観てみよう、と。

小野 「元ネタは、何だったんだろう?」って。そんなふうに作品に触れました。


ーー実際にご覧になった『NIGHT HEAD』はいかがでしたか。

小野 観る前の印象として、「頭が痛いよ、兄さん」「どうした、直也」という、この一連の会話しかなかったんですよ。

ーー『NIGHT HEAD』といえばそこですよね。

小野 そして、それくらい一般的に認知されたブームになっていたということは、もっと「明るい」作品だと思っていたんです。わかりやすくて、明るい作品だと思っていたけれど……真逆でした。物語が何を語りかけているのか、自分で探し出さなければならない。
その時は、いい意味で「暗くて重い作品だな」と思いました。

(C)飯田譲治/NIGHT HEAD 2041 製作委員会

演じることで感じた霧原直人の素顔

ーーでは、今回「あの『NIGHT HEAD』に出る」と決まった際のお気持ちはいかがでしたか。

小野 まず、『NIGHT HEAD』がもう一度アニメになる、映像作品として世に出るというのが純粋に嬉しかったです。というのも、僕は以前、『NIGHT HEAD GENESIS』という作品にも参加していまして、まだ仕事をはじめて4~5年目の駆け出しの頃でした。その時は森川さんと石田彰さんが霧原兄弟を演じていらっしゃいました。『NIGHT HEAD』が90年代から脈々と、視聴者の心にずっと残り続けていたんだなということを、今回のアニメで再認識したんです。『NIGHT HEAD』という作品が持っている訴求力はすさまじいんだなと、まず思いました。さらに言うと、ふたたびアニメになるということはとても嬉しかったです。でも、霧原直人役を任されるとは思いませんでした。この作品を背負わなければならないということで、プレッシャーを感じました。

ーー歴代の直人の印象は強いですからね。

小野 まずはやはり、豊川悦司さんを想起するじゃないですか。あれ以上の霧原兄っているのか? というのはありますよね。その上で僕は幸いなことに森川さんが演じる直人も、共演させていただいたので知っているわけですが……めちゃくちゃ度量が広くて、むちゃくちゃいい声で、僕の中では「完全無欠」に感じられたんです。だからまず、プレッシャーを感じました。フタを開けてみたらまったくそんなことはなかったんですけれども。

——というのは?

小野 直人は弟と二人だけの天涯孤独の身になり、弟だけが心の拠り所で、自分たちの居場所をずっと探している。とても寂しく、精神的には弱いひとりの青年だったんだ、と。それは演じるにあたってあらためて物語に触れ、セリフを発していく中で僕自身、気付いたことでした。

——アフレコで印象的なエピソードなどはありますか。

小野 アフレコは、毎回ではないですが、僕と直也役の島﨑信長くん、そして黒木兄弟の櫻井孝宏さん(タクヤ役)、小野賢章くん(ユウヤ役)の4人で録っていたんですよ。そしてスタジオの構成上、どうしても ”3対1” に分かれるんです。大きいスタジオに3人、隣にある小さいブースに1人で、最大4人で一緒に収録する。コロナ禍の影響でそうせざるを得なかったのですが、その時、僕が ”1” の側になることが多かったんです。セリフのカブりなど、録りやすさの関係で。で、僕以外の3人が収録の合間に、向こうのスタジオでめちゃめちゃ楽しそうにしゃべっているんです。それが悔しくて(笑)。ヘッドホンから3人の談笑とか聞こえてきて、「楽しそうだな……」みたいな。

ーー孤独を感じていたわけですね(笑)。

小野 だから、時々「どうした、直也……」とか言ってみるんですけど、向こうには聞こえていなかったらしくて無反応で。

同席のスタッフ 島﨑さんと賢章さん、聞こえていたみたいですよ。

小野 聞こえていたの!?

同席のスタッフ お二人で「小野さんは、合間にセリフの練習をしていました」「とても真面目な方です」って、インタビューに答えていました(笑)。

小野 ……練習していたんじゃない、ボケていたんです! かまってほしかったんですよ(笑)!

ーーお兄さんは辛いですね(笑)。では最後に、放送中のストーリーはまもなく終盤に突入しますが、ここまでを振り返っての印象を教えてください。

小野 最初に思っていた以上に、TVドラマ版から変わらない普遍のテーマを観る側に届けようとしているなと思いました。黒木兄弟に代表されるように登場するキャラクターや近未来の世界の設定は、かつての『NIGHT HEAD』とは違います。でも、伝えようとしている想いは変わらないんですよね。双海翔子とか御厨恭二朗など、TVドラマ版のキーパーソンも登場させつつ、今の時代に即した形で、普遍的なテーマを描こうとしている。そこが素晴らしいなと思います。やはり『NIGHT HEAD』は『NIGHT HEAD』なんです。兄弟に代表されるような人と人の絆を描いているし、その先にある人間の可能性をどこまでも追い求めている作品だなと感じています。
小野大輔
おの・だいすけ/5月4日生まれ/高知県出身/フリー/『バクテン!!』(七ヶ浜政宗役)、『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』(古代進役)ほか

(C)飯田譲治/NIGHT HEAD 2041 製作委員会