第1回は、なぜ今年の劇場アニメ作品が良作ぞろいだったか、その理由と各作品の魅力に迫った。

編集長 2021年のアニメシーンを振り返るにあたり、藤津さんからいくつかキーワードを戴いています。まず「長編の豊作」。これは劇場アニメということですか。
藤津 はい、もうその言葉に尽きちゃう感じですね。
編集長 確かにバラエティに富んだ力作が連続して公開された印象がありますよね。
藤津 ちょっと大きな話をすると、2012年が劇場アニメの大きな分水嶺だったと思うんです。なぜかというと、その年の劇場興行成績がスタジオジブリ作品なしで400億円超えを達成したということ。この年って『ONE PIECE FILM Z』と『おおかみこどもの雨と雪』の公開年で、要はジブリ以外でも50億円とかを超えるヒットが出たということ。続いて2016年の『君の名は。』のヒットがあって、こういう経緯の積み重ねでアニメ映画の興行成績のレベルが一段上がったような気がします。
さらに辿っていくと、2012年のヒットに繋がる萌芽が2009年に確認できるんですね。まず『サマーウォーズ』で細田守というクリエイターへの注目が高まった。そして『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』の大ヒット。これは定番化していたシリーズを原作から導線を引き直したことで新たな路線を確立しまして、『