10月1日(日)19時からのBS12トゥエルビ〈日曜アニメ劇場〉で放送される『ルパン三世 風魔一族の陰謀』は、メインキャストを一新して制作された「ルパンシリーズ最大の問題作」として広く知られている。今回の放送は、改めて作品そのものの真価に触れる絶好の機会となりそうだ。


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1987年に発表された本作『ルパン三世 風魔一族の陰謀』は、ルパンシリーズ初のOVA作品として制作されたが、1988年のソフト発売に先駆けて1987年12月に劇場公開されていることから、劇場作品としてカウントしているファンもいるのではないだろうか。

物語は、五ェ門の結婚式という驚きの展開から幕を開ける。
結婚相手はカラクリ細工に長けた墨縄家の跡取り娘にして18歳の美少女・紫。式にはルパン、次元、不二子も列席していた。ところが、そこに覆面装束を纏った謎の集団・風魔一族が乱入し、紫が誘拐されてしまった。
風魔一族の目的は、墨縄家に伝わる秘伝の壺を手に入れること。
その壺には地底深くに眠る財宝の在処の手掛かりが隠されており、風魔一族は400年にわたり財宝を狙っていたのだ。
紫の身柄と交換で壺を渡せと迫る風魔一族。紫を諦めようとする墨縄家から壺を盗み出したルパンたちは、風魔一族との取引の場に向かうのだが……。本作では、TV第2シリーズからのレギュラーキャスト陣(ルパン三世=山田康雄、次元大介=小林清志、石川五ェ門=井上真樹夫、峰不二子増山江威子、銭形警部=納谷悟朗)を一新したことが大きな話題となった。
本作のメインキャストは、ルパン三世=古川登志夫、次元大介=銀河万丈、石川五ェ門=塩沢兼人、峰不二子=小山茉美、銭形警部=加藤精三。しかし、突然の交代劇は当時のファンの間で大きな波紋を巻き起こすこととなり、次作にあたるTVSP『バイバイ・リバティー・危機一髪!』(1989年)から、また元のレギュラー陣に戻ることとなった。


それ故、本作はシリーズの中で「問題作」として語られる機会が多い1作となっている。しかし時が経ち、メインキャストがすべて代替わりした現在ならば、この ”幻のルパン一味+銭形” の真価もあらためて感じることができるはずだ。
軽妙で若々しい古川のルパンをはじめとした、この作品でしか味わえないキャストの空気感は独自の魅力を放っている。

原作:モンキー・パンチ(C)東宝・TMS

本作を特徴づけるもうひとつのポイントは、TV第1シリーズや宮﨑駿監督『ルパン三世 カリオストロの城』で作画監督を務めた大塚康生が、監修として参加していること。
大塚によれば本作は「『旧ルパン三世』の感じでやってほしいということだったんですよ。エンターティメントに徹して ”全編追っかけ” というのをやってほしい」(アニメージュ1987年7月号/以下、大塚のコメントは同号より)というプランでスタートしており、その言葉どおりに緑色のジャケットを着たルパンが登場し、全編にわたって小気味よいアクションを楽しむことができる1作としてまとめられている。


ルパンの名場面といえば、『カリオストロの城』冒頭のカーチェイスを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。本作もまた、その原画を手掛けたアニメーター・友永和秀が本作の作画監督を務めていることもあってか、序盤から凝りに凝ったカーチェイスが展開される。
「ルパンたち銭形警部の追っかけは、今までのどの映画よりも徹底的にやってある」と大塚も太鼓判を捺す、本作のルパン一味と銭形のカーチェイスは、舞台を日本に移したこともあり、アイデアもボリュームもさらに膨らませて展開する名シーンとなっている。

もちろん、ルパンたちが乗っているのは『カリオストロの城』と同じくフィアット500。そして、チェイスの途中ですれ違う対向車がクラリスの乗っていたシトロエン2CVという嬉しいファンサービスもある。一瞬で通り過ぎてしまうので、ぜひ見逃さないでほしい。


そのほかにもシチュエーション、動き、レイアウトなどに『カリオストロの城』を想起させるポイントがあるが、大塚自身も「スタッフに『カリオストロ』をやった人が多いので、その影響を多く受けていますね」と、その傾向を当時から認めている。
シリーズの中で『カリオストロの城』にオマージュを捧げている作品は他にもいくつか存在するが、本作は大塚や友永、また美術監督の小林七郎などを筆頭とした『カリオストロの城』に関わったスタッフが「再演」してくれた、という意味でも特別な作品になっていると言えるだろう。

時を経て、『ルパン三世』の世界も様々な形でより広く、より深く楽しまれるようになっている。『風魔一族の陰謀』の本当の面白さは、今だからこそストレートに感じることができるのかもしれない。

原作:モンキー・パンチ(C)東宝・TMS