全世界が注目するアニメーション監督・山田尚子監督、待望の完全オリジナル長編最新作である『きみの色』が、2024年8月30日(金)に全国の東宝系で公開される。7月3日(水)には都内でジャパンプレミアが行われ、山田尚子監督をはじめメインキャストの3名、日暮トツ子役の鈴川紗由、作永きみ役の髙石あかり、影平ルイ役の木戸大聖に加え、トツ子のルームメイトである百道さく役のやす子、八鹿スミカ役の寿美菜子が揃って舞台挨拶に登壇したが、同日に山田尚子監督と寿美菜子さんにインタビューした模様をお届けする。
子どもの頃から人が “色” で見えるが自分自身の “色” だけは見えない女子高校生・日暮トツ子は、同じ学校に通っていたが中退してしまった、きれいな “色” を持つ作永きみと、彼女がアルバイトをしている古本屋で再会する。そこに居合わせ、2人に話しかけたのが音楽好きの男の子・影平ルイ。不思議な巡り合わせでバンドを組むことになった3人は、ルイが住む離島で使う人がいなくなった古い教会を練習場所として、徐々にお互いのことを知りながら、それぞれが自分自身の悩みに向き合っていくこととなる。
ある意味ではどこにでもある思春期の少年少女たちの青春群像が、『きみの色』ではまるで絵画のような鮮やかな色彩描写と、日常の一瞬一瞬の背景など細部にまで透徹された細やかな演出で彩られ、観客は思わず息を呑むような映像体験をすることになるだろう。そんな『きみの色』について、主人公・トツ子のルームメイト “森の三姉妹” の1人であるスミカを演じた寿美菜子さんと、寿さんとは『けいおん!』から15年来の関係がある山田尚子監督にお話を聞いた。インタビュー後半ではお互いの、そして自分自身の “色” についても語っていただいた。
>>>取材時の撮り下ろし写真や作品場面カットを見る(写真19点)
◆「山田監督からしか得られない成分がある」(寿美菜子)◆
――寿さんは完成した映画をご覧になって、どういった感想を持たれましたか?
寿 本当に観たのはリアルに1カ月くらい前で、家で観たっていうのが悔しいくらい、本当に劇場でもう1回観たいなと思わせてくれる作品でした。
トツ子と私が演じさせていただいたスミカが関わるシーン以外の他の方のお芝居は全く知らない状態で、その分スッと作品にも入っていけました。『きみの色』のキャラクターたちの仲間になったような気分で観て、終わった後に温かい感じと優しさをすごく受け取りました。
「スッキリした」っていう作品もあれば「めっちゃ泣いた」っていう作品もあるように、いろいろな作品の終わり方や余韻のようなものがあると思うんですが、『きみの色』を観たあとのこの多幸感って何だろうって。もう何か山田監督からしか得られない成分があるなっていう。初めての境地に連れて行ってもらった気がしました。
――山田監督がスミカ役に寿さんをキャスティングしたのはどのような経緯だったんですか?
山田 結構最初の段階で音響監督の木村絵理子さんから「寿さん」っていう指名がありまして。「いいんですか!?」っていう気持ちで。もうこっちからしたら「やったー」っていう感じで、自分から言わなくても木村さんから指名してくださって、すごくシンパシーを感じて嬉しかったですね。
――スミカに合いそうだと思ったポイントはどういうところだったんですか?
山田 スミカは一見今風というかギャルっぽい感じの軽いノリを持っている子なのかなと思いきや、実はすごく責任感が強いしっかりした子だっていうのがあったので、シンプルにピッタリだというイメージです。
――寿さんはスミカをどう演じようと考えましたか?
寿 “森の三姉妹” のキャストがやす子さんと悠木碧ちゃんと3人っていうのを見たときに、これは大丈夫だという安心感と、楽しさと微笑ましさとを感じて。収録は一緒じゃなかったので碧ちゃんと後日お話したんですが、やっぱりこの作品の中で求められる私達の役割はみんなをつないでいくポジションというか。
その上で、アフレコのときに監督からは「ギャルで一見ちょっと怖いとか今風って思っても、めっちゃ根は熱い人っているじゃないですか」って言われて、「わかるわかる」って。ギャル感は他のみんなとの差別化として出たらいいなと思いつつも、でもすごく「アタシ、ギャルやってまぁ~す」みたいな感じではなくて、ナチュラルにちょっと憧れはあるけれど地元で育ってきたいい子で、だからこそこの子たちは友達なんだろうなっていうのを大切にしながら演じたいと思いました。
(C) 2024「きみの色」製作委員会
◆「寿さんは太陽のような方なのでひまわりの色のイメージ」(山田尚子監督)◆
――主人公であるトツ子は人の “色” が見えるという設定ですが、お二人はお互いの色が何色だと思いますか?
山田 やっぱり元々の作品の繋がりで、ピンクって言いたくなる。紬ちゃん(『けいおん!』琴吹紬)のイメージカラーがピンクだから。でもそれは違うか(笑)。やっぱり寿さんが持ってらっしゃる雰囲気って夏のイメージで本当に太陽みたいな方なので、爽やかなビタミンカラーっていうか、ひまわりの色。
寿 嬉しい! 私は2色どちらかで悩んでいて。先日お会いしたとき緑の服をお召しになっていたからかもしれないんですが、緑のイメージが最近はあるんですよ。アフレコでお会いするときって、どうしても「決めるぞ」って気合が入ってしまう私に、監督が「大丈夫だよ」ってしてくれるところもあって癒されますし。
でも、監督の作品の主人公たちとご本人とは、いつも何かリンクする部分があるなと私は思っているんです。『けいおん!』のときでも、唯ちゃん(平沢唯)と監督って私の中では重なっていて。監督は唯ちゃんを「ヒーロー」だっておっしゃっていたんですけれど、イメージカラーは赤色なので、私の中では監督にも赤色のイメージがありました。だからなのか、監督と一緒にプールに行った夢を見たことがあるんですけど、そのときは赤い水着を着ていらっしゃって。
山田 真っ赤なビキニで。
寿 そう、真っ赤なビキニを着てウォータースライダーを降りてくるっていう監督を夢で見たんです(笑)。だから赤と緑。
――それでは、自分の色が見えるとしたら何色だと思いますか?
寿 自分のイメージカラーとしては紫なので、皆さんライブなどでは紫色のライトを振ってくださるんです。トツ子と同じように、ちょっと色が見えるみたいな感覚を持っている友達からは、オレンジか緑を行ったり来たりしているように見えるって言われたりもして。ちょうどスミカがオレンジだったから、そのときはすごく感動しました。なのでオレンジ系なのかなと。
山田 一致ですね。私もオレンジだと思っているので。
私自身は、こういった質問にはいつも答えられなくて、本当にごめんなさいっていう感じなんですが、自分の世界に自分がいないのでわからないんです。自分がどんな形をしてどんな空気を放っているのかっていうのが想像つかないので。無理くり言うと深い紫でしょうか(笑)。でもやっぱりわからないです。
――最後に『きみの色』をどういった方に観てほしいか、また、こういうところを観てほしいというメッセージをお願いします。
寿 「好きを好きでいい」って肯定してくれる作品なので、自分は「これでいいのかな」って思っている方に観てほしいですね。
山田 この作品を作るときにずっと強く思っていたのは、人ってやっぱり他人が気になったり、自分を何か形にはめないといけないっていう不安があったり、「私はこれじゃない」って自分のことを嫌いになったりすることがあると思うんです。見た目や性格でカテゴライズされることも多いですし。そういったところに少し不安を感じていたり、当てはまらなかったらどうしようと思っている方たちに、リラックスして観ていただけるといいなと思います。
――ありがとうございました!
●プロフィール
山田尚子/2009年テレビアニメ『けいおん!』で監督デビュー。数々の社会現象を巻き起こす大ヒットを記録し、2011 年『映画けいおん!』にて長編映画初監督を務める。『たまこまーけっと』『映画 聲の形』などの話題作で躍進を続け、2022年TVシリーズ『平家物語』、2024年リリース予定のショートフィルム『Garden of Remembrance』を監督。完全オリジナル劇場長篇最新作『きみの色』では、第26回上海国際映画祭金爵賞アニメーション最優秀作品賞を受賞。何気ない日常描写を瑞々しく描く映像センスと、繊細な映像演出で、現在のアニメーション界で最も高く評価されている監督のひとり。
寿美菜子/『きみの色』では主人公トツ子のルームメイトである “森の三姉妹” のひとり、友達思いのギャルでモノマネが上手い八鹿スミカを演じる。
(C) 2024「きみの色」製作委員会
子どもの頃から人が “色” で見えるが自分自身の “色” だけは見えない女子高校生・日暮トツ子は、同じ学校に通っていたが中退してしまった、きれいな “色” を持つ作永きみと、彼女がアルバイトをしている古本屋で再会する。そこに居合わせ、2人に話しかけたのが音楽好きの男の子・影平ルイ。不思議な巡り合わせでバンドを組むことになった3人は、ルイが住む離島で使う人がいなくなった古い教会を練習場所として、徐々にお互いのことを知りながら、それぞれが自分自身の悩みに向き合っていくこととなる。
ある意味ではどこにでもある思春期の少年少女たちの青春群像が、『きみの色』ではまるで絵画のような鮮やかな色彩描写と、日常の一瞬一瞬の背景など細部にまで透徹された細やかな演出で彩られ、観客は思わず息を呑むような映像体験をすることになるだろう。そんな『きみの色』について、主人公・トツ子のルームメイト “森の三姉妹” の1人であるスミカを演じた寿美菜子さんと、寿さんとは『けいおん!』から15年来の関係がある山田尚子監督にお話を聞いた。インタビュー後半ではお互いの、そして自分自身の “色” についても語っていただいた。
>>>取材時の撮り下ろし写真や作品場面カットを見る(写真19点)
◆「山田監督からしか得られない成分がある」(寿美菜子)◆
――寿さんは完成した映画をご覧になって、どういった感想を持たれましたか?
寿 本当に観たのはリアルに1カ月くらい前で、家で観たっていうのが悔しいくらい、本当に劇場でもう1回観たいなと思わせてくれる作品でした。
トツ子と私が演じさせていただいたスミカが関わるシーン以外の他の方のお芝居は全く知らない状態で、その分スッと作品にも入っていけました。『きみの色』のキャラクターたちの仲間になったような気分で観て、終わった後に温かい感じと優しさをすごく受け取りました。
「スッキリした」っていう作品もあれば「めっちゃ泣いた」っていう作品もあるように、いろいろな作品の終わり方や余韻のようなものがあると思うんですが、『きみの色』を観たあとのこの多幸感って何だろうって。もう何か山田監督からしか得られない成分があるなっていう。初めての境地に連れて行ってもらった気がしました。
――山田監督がスミカ役に寿さんをキャスティングしたのはどのような経緯だったんですか?
山田 結構最初の段階で音響監督の木村絵理子さんから「寿さん」っていう指名がありまして。「いいんですか!?」っていう気持ちで。もうこっちからしたら「やったー」っていう感じで、自分から言わなくても木村さんから指名してくださって、すごくシンパシーを感じて嬉しかったですね。
――スミカに合いそうだと思ったポイントはどういうところだったんですか?
山田 スミカは一見今風というかギャルっぽい感じの軽いノリを持っている子なのかなと思いきや、実はすごく責任感が強いしっかりした子だっていうのがあったので、シンプルにピッタリだというイメージです。
――寿さんはスミカをどう演じようと考えましたか?
寿 “森の三姉妹” のキャストがやす子さんと悠木碧ちゃんと3人っていうのを見たときに、これは大丈夫だという安心感と、楽しさと微笑ましさとを感じて。収録は一緒じゃなかったので碧ちゃんと後日お話したんですが、やっぱりこの作品の中で求められる私達の役割はみんなをつないでいくポジションというか。
その上で、アフレコのときに監督からは「ギャルで一見ちょっと怖いとか今風って思っても、めっちゃ根は熱い人っているじゃないですか」って言われて、「わかるわかる」って。ギャル感は他のみんなとの差別化として出たらいいなと思いつつも、でもすごく「アタシ、ギャルやってまぁ~す」みたいな感じではなくて、ナチュラルにちょっと憧れはあるけれど地元で育ってきたいい子で、だからこそこの子たちは友達なんだろうなっていうのを大切にしながら演じたいと思いました。
(C) 2024「きみの色」製作委員会
◆「寿さんは太陽のような方なのでひまわりの色のイメージ」(山田尚子監督)◆
――主人公であるトツ子は人の “色” が見えるという設定ですが、お二人はお互いの色が何色だと思いますか?
山田 やっぱり元々の作品の繋がりで、ピンクって言いたくなる。紬ちゃん(『けいおん!』琴吹紬)のイメージカラーがピンクだから。でもそれは違うか(笑)。やっぱり寿さんが持ってらっしゃる雰囲気って夏のイメージで本当に太陽みたいな方なので、爽やかなビタミンカラーっていうか、ひまわりの色。
黄色というか、しっかり太陽を浴びたオレンジ色というか。そういうイメージがあります。
寿 嬉しい! 私は2色どちらかで悩んでいて。先日お会いしたとき緑の服をお召しになっていたからかもしれないんですが、緑のイメージが最近はあるんですよ。アフレコでお会いするときって、どうしても「決めるぞ」って気合が入ってしまう私に、監督が「大丈夫だよ」ってしてくれるところもあって癒されますし。
でも、監督の作品の主人公たちとご本人とは、いつも何かリンクする部分があるなと私は思っているんです。『けいおん!』のときでも、唯ちゃん(平沢唯)と監督って私の中では重なっていて。監督は唯ちゃんを「ヒーロー」だっておっしゃっていたんですけれど、イメージカラーは赤色なので、私の中では監督にも赤色のイメージがありました。だからなのか、監督と一緒にプールに行った夢を見たことがあるんですけど、そのときは赤い水着を着ていらっしゃって。
山田 真っ赤なビキニで。
寿 そう、真っ赤なビキニを着てウォータースライダーを降りてくるっていう監督を夢で見たんです(笑)。だから赤と緑。
――それでは、自分の色が見えるとしたら何色だと思いますか?
寿 自分のイメージカラーとしては紫なので、皆さんライブなどでは紫色のライトを振ってくださるんです。トツ子と同じように、ちょっと色が見えるみたいな感覚を持っている友達からは、オレンジか緑を行ったり来たりしているように見えるって言われたりもして。ちょうどスミカがオレンジだったから、そのときはすごく感動しました。なのでオレンジ系なのかなと。
山田 一致ですね。私もオレンジだと思っているので。
私自身は、こういった質問にはいつも答えられなくて、本当にごめんなさいっていう感じなんですが、自分の世界に自分がいないのでわからないんです。自分がどんな形をしてどんな空気を放っているのかっていうのが想像つかないので。無理くり言うと深い紫でしょうか(笑)。でもやっぱりわからないです。
――最後に『きみの色』をどういった方に観てほしいか、また、こういうところを観てほしいというメッセージをお願いします。
寿 「好きを好きでいい」って肯定してくれる作品なので、自分は「これでいいのかな」って思っている方に観てほしいですね。
当然ですけど自分と他人とは感覚って違うじゃないですか。みんな十人十色ある中で、自分の感覚が何か大多数の人とはちょっと違うなって後ろめたくなったりする人もいるかもしれないですけど、それでもいいんだよって言ってくれるのがこの作品だと思います。優しく背中を押してもらって外の世界に飛び出したくなるような、そんな感覚になってもらえるんじゃないかなと思いますので、ぜひ劇場でお楽しみください。
山田 この作品を作るときにずっと強く思っていたのは、人ってやっぱり他人が気になったり、自分を何か形にはめないといけないっていう不安があったり、「私はこれじゃない」って自分のことを嫌いになったりすることがあると思うんです。見た目や性格でカテゴライズされることも多いですし。そういったところに少し不安を感じていたり、当てはまらなかったらどうしようと思っている方たちに、リラックスして観ていただけるといいなと思います。
――ありがとうございました!
●プロフィール
山田尚子/2009年テレビアニメ『けいおん!』で監督デビュー。数々の社会現象を巻き起こす大ヒットを記録し、2011 年『映画けいおん!』にて長編映画初監督を務める。『たまこまーけっと』『映画 聲の形』などの話題作で躍進を続け、2022年TVシリーズ『平家物語』、2024年リリース予定のショートフィルム『Garden of Remembrance』を監督。完全オリジナル劇場長篇最新作『きみの色』では、第26回上海国際映画祭金爵賞アニメーション最優秀作品賞を受賞。何気ない日常描写を瑞々しく描く映像センスと、繊細な映像演出で、現在のアニメーション界で最も高く評価されている監督のひとり。
寿美菜子/『きみの色』では主人公トツ子のルームメイトである “森の三姉妹” のひとり、友達思いのギャルでモノマネが上手い八鹿スミカを演じる。
『けいおん!』の琴吹紬役や、『響け!ユーフォニアム』(2015年)の田中あすか役など、山田尚子監督作品とは縁が深い。声優としては多数の話題作に出演する一方、2009年に同じミュージックレイン所属の高垣彩陽、戸松遥、豊崎愛生とともに結成した声優ユニット「スフィア」のほか、ソロアーティストとしても精力的に音楽活動を行っている。2020年から1年半のイギリス留学を経験し、帰国後の2023年7月には結婚を発表するなど、公私ともに充実する中で、より幅を広げた今後の活動に期待が集まる。
(C) 2024「きみの色」製作委員会
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