第一作目となる『宇宙戦艦ヤマト 2199』から始まったリメイクシリーズの最新作となる『ヤマトよ永遠に REBEL3199』。その第2作『第二章 赤日の出撃』が11月22日(金)より全国の劇場で絶賛上映中。
地球を制圧したデザリアムの謎に迫るため、ついにヤマトが発進する。戦いの中で古代と引き離されることになった雪の運命は!? 今回は負傷した雪を救ったデザリアムの情報将校・アルフォン役の古川慎と、新たに総監督へと就任した福井晴敏が、本作の見どころやアルフォンの魅力などついて語ってくれた。

――第二章ですが、どのようなお話しになっていますか?
福井 ファンの皆さんならご存じの通り、原作となった『ヤマトよ永遠に』は後半に大きなどんでん返しがありまして、衝撃的な仕掛けが物語の大きな鍵となっています。そんな原作におけるクライマックスの種明かし部分を、今回の『ヤマトよ永遠に REBEL3199』では序盤であるこの第二章にあえて持ってくるといった構成にしてみました。だって、どこにあるかバレバレな落とし穴へ誘導するようなお話しを作ってもしょうがないじゃないですか(笑)。そんなこともあって原作のストーリーをなぞった感じの第一章とはガラリと様相を変えて、この第二章は私たちが知っている『ヤマトよ永遠に』とは異なるルートへの分岐点といえるものになりました。ぜひとも皆さんには「ここから未知の荒野に一緒に旅立っていこう」という作り手側の仕掛けに満ちた驚きの展開を楽しんでもらえたらと思います。

古川 そうなんですよ、観ていくうちにどんどん「話が違うぞ!」となってビックリしました(笑)。物語の核となるポイントは多分原作と一緒になると思いますが、そこにたどり着くための道筋がとんでもない迷路になっている雰囲気があるんですよ。「いままでの『ヤマト』シリーズをなぞるだけではない」という強い意志が感じられるストーリー展開が印象的でした。それに加えて民族対立とか異文化間の衝突とか、権力者による民衆への情報操作といった現在の社会が抱えている難しい問題が物語にかなり色濃く反映されているのも気になってしまって。そこもまた『ヤマト』シリーズの作品性だと思いました。


福井 僕の中では一作目のTVシリーズの『ヤマト』は、すごく時代性を持っていた印象があるんですよ。オイルショックがあって、公害問題があって、『日本沈没』みたいなディストピアのSF作品がガンガン作られてヒットするような、そんな激動の時代に生まれた『ヤマト』という作品だからこそ、あの「真っ赤な地球」がリアルタイムで観ていた多くの人たちの心に強く刺さったと思うんです。そうした原作シリーズ第一作の『ヤマト』が持ち合わせていた精神性、社会性を受け継ぎ、シリーズ通して維持しようという想いのもと、このリメイクシリーズは作ってきました。第一章のティザーポスターにも載せましたが、地球が直面している「果てなき災厄の時代」は、1000年に一度の災害が毎年起こっている、いまの日本と重なる部分も多いと思うんです。そんな繰り返される不幸を乗り越えて未来を信じて戦う主人公・古代進の姿は、現代に生きる日本人の鏡像として皆さんに捉えてもらえるんじゃないかと期待しています。

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殺伐としていた雪(桑島法子)との掛け合い

――古川さんはアルフォンについて、どんな印象がありますか?
古川 『3199』という物語の中で、地球側の中心人物が古代だとするなら、アルフォンは彼と対をなすデザリアム側の中心人物として描かれているキャラクターですね。物語が進むにつれて森雪という女性を巡って、ふたりの関係性は変化していくことになりますが、アルフォンの選択に古代がどういう答えを出していくかが、見どころになると思います。

福井 原作の『ヤマトよ永遠に』では、アルフォンと古代が最後まで顔を合わせることなく終わってしまうのですが、僕はそれをすごく残念だと思っていました。デスラーやズォーダーといった国家指導者レベルの強大な敵ばかりを相手に戦ってきた古代に、初めて敵として現れた対等のライバルがアルフォンだったりするんですよ。さらに雪と関わることで次第にアルフォンは変わっていくのですが、その姿を通じてデザリアムが持っている欺瞞性がしだいに浮かび上がるような仕組みになっています。正統的なライバルキャラとしてどのように古代と相対していくことになるか、そこは楽しみにしてほしいところですね。

――アルフォンと雪との関係については、どのように思いますか?
古川 古代役の小野大輔さんにも「間男」呼ばわりされていましたけど、第二章の段階でアルフォンはまだ間男じゃないです(笑)。
福井さんからも「同じ屋根の下で生活してれば間男では?」と言われましたが……、まだ違います。でも隙あらばという雰囲気がちょっとあるように見えるのは否めないかも(笑)

福井 (笑)

古川 この『3199』はデザリアムと地球の関係が原作の『ヤマトよ永遠に』と異なっているように、アルフォンと雪の関係も微妙に変化しているんです。なので一度まっさらな状態にした上で彼のことを見てほしいですね。

――雪役の桑島さんとの掛け合いの感想はいかがでしたか?
古川 この第二章からヤマトシリーズに参加させてもらいましたが、毎回「リメイクシリーズ、メチャメチャ面白いな!」と思いながら収録をさせてもらっています。ただ桑島さん(森雪役)との掛け合いは、それはそれは殺伐とした雰囲気で(笑)

福井 (笑)

古川 古代の元にすぐにでも帰りたいという雪との会話ですからね、そうなるのも当たり前ですよ。でも雪との接触ってアルフォンにとっては未知との遭遇なんですよね。僕としてはアルフォンは雪との会話によって感情を学習していくようなそんな印象があって。掛け合い自体は殺伐としているんですが、アルフォン自身はすごく実りのあるものと感じているような気がします。ふたりの関係が深まって、アルフォンが自分の中に育った感情に気づいたときに、どう動くかが注目のポイントになると思います。

古川大絶賛のオススメは「発進!」のシーン?!

――原作の『ヤマトよ永遠に』では野沢那智さんがアルフォンを演じられていました。その役を継ぐことにプレッシャーはありましたか?

古川 プレッシャーでした(笑)

福井 (笑)

古川 昔の『ヤマトよ永遠に』の映像を見た上でアフレコに望みましたが、野沢さんの演技が参考になると思ったら、いい意味で参考にならず。ただただ「いい声だな」「いい芝居だな」と感心しただけでした(笑)。
その演技の深みや威厳、落ち着いた語り口みたいなものは参考にしようと思ったりもしたんです。野沢さん演じるアルフォンが好きなファンたちを裏切りたくないという想いもあったので。ただ、原作となる『ヤマトよ永遠に』のアルフォンと『3199』のアルフォンは僕から見たら全然違うキャラクターなんですよ。そのまま真似てもダメだろうということで、いろいろ考えた結果として、僕なりに解釈したアルフォンを演じていくことにしました。

福井 野沢さんと古川さんの声は、憂いを帯びているところは似ているんですが、決定的に違うところがあると思っているんです。例えば土砂降りの雨の中で立っているアルフォンをイメージしたときに、僕の中にある野沢さんの演じるアルフォンは目を開いて相手を見つめているんですよ。そして自分からあえて話しかけ、その言葉に対する相手の表情をすくい取って冷静に対応していく。そんな出で立ちが思い浮かぶのですが、古川さん演じるアルフォンは目を閉じているイメージがあるんですね。ひたすら雨の冷たさに打たれながら、自分の中にあるものを純粋に言葉として紡いでいく。それを相手がどういう風にとらえるのか、相手から声が返ってくるまでは理解する余裕がなくて、言葉を返された瞬間ハッて目を開けたり、より深くうなだれたりと、素の表情を浮かべてしまう。その違いがそのまんま原作の『ヤマトよ永遠に』と『3199』のアルフォンの違いにもなっていると思っていて。『3199』のアルフォンにはそんな古川さんの声の存在感が必要だったんだと僕は思っています。


古川 メッチャ腑に落ちました。ありがとうございます。

――最後に第二章のオススメシーンについて教えてください。
古川 やっぱりオススメは「発進!」のシーンですよね。

福井 (笑)

古川 ヤマトをはじめとしたメカの数々がとにかく格好いいんですよ。「やっぱ男のロマンだよなー」と思ったし、発進からの戦闘シーンは驚きの連続で燃えますよね。オススメです! 今回の第二章も全編通して原作からの古参ファンも、リメイクからの新規ファンも、どちらも楽しめるお話しになっていますので、たくさんの方々に劇場まで足を運んで観ていただけたら嬉しいです。

福井 『3199』の「発進!」シーンは、監督のヤマト(ナオミチ)さんも、ひとつの見せ場として丹精込めて作ったところです。ヤマトがどう発進するかは、毎回見せ場にもなっていることもあって、このシーンは力を傾けたところではありました。第二章では他にもさきほどお話ししたデザリアムの謎に迫るどんでん返しの部分をはじめ、いままで『ヤマトよ永遠に』を見たことがある人なら、「え? 今回の『3199』だとこうなっているの?」という驚きのシーンが目白押しとなっています。まだまだこれからも第七章までそんな衝撃の展開は続いていきますので、ぜひご期待ください。

【PROFILE】
古川慎(ふるかわまこと)
9月29日生まれ。
トイズファクトリー所属。主な出演作はTVアニメ『変人のサラダボウル』(鏑矢惣助)、『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』(志々雄真実)、『吸血鬼すぐ死ぬ』(ロナルド)、『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』(白銀御行)、『憂国のモリアーティ』(シャーロック・ホームズ)、『ワンパンマン』(サイタマ)ほか。

福井晴敏(ふくいはるとし)
11月15日生まれ。小説家。アニメの脚本やシリーズ構成としても活躍。主な代表作は『機動戦士ガンダムUC』、『戦国自衛隊1549』、『終戦のローレライ』、『ターンエーガンダム』、『亡国のイージス』。参加アニメ作品『機動戦士ガンダムUC』、『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』、『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』ほか。
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